8話 人見知り、報酬を受け取る。
「シッ!!」
イネスが振った刀は、静かにヴェルウルフの首に吸い込まれる。余りの切れ味に、肉を断つ音すら聞こえない。それ程までに素晴らしい刀だった。
「あ。今ので……………最後だ」
今のできっちり10体目。これで取り敢えずはシルヴィから言われたらものは達成出来た。故に、やることがなくなってしまった。
「この刀って本当に凄いな」
何かというと如何せん切れ味が良過ぎるのだ。怖いくらいに良くて、自分の手が切れないか心配になるレベルで。それに鍔がないからもっと危ない。そして、気が付いてしまった。
「この刀って、まだ銘がないよね…………?」
それは結構大変な事だと思う。これから沢山の戦いを共に戦っていく相棒だ。出来る事なら銘をつけてやりたい。一人の剣士としてね?
「ん〜…………何が良いかな………………」
ここは自然に『鬼丸』や『斬刀』とかかな?それとも季節や天気、気象などの自然現象事か………はたまた月や太陽か。又は宝石や秘石か。もしくわ植物や生物か……………悩みまくった。
「討伐終わった?イネス」
「……………ん?あぁシルヴィ。終わったよ」
シルヴィはついさっき終わったらしい。しかし僕もシルヴィ相手になら普通に話せる様になってきたな…………しめしめ。っと、今は銘決めだった。
「イネス?何考え事してるの?」
おぉ、一発で当てて見せるか……………
「この刀の銘だよ」
「銘?あぁ私は付けてないなぁ」
まぁ付けるのは人それぞれだから別に良い。
だがどうしてもしっくりくるものがないのだ。
「どういうものが良いの?」
「どういうもの?なんというか………………」
どういうものか…………スッキリした感じ?スッキリか…………よし、天気か月、植物の3つから何か選ぶことにする!
「いいもの………………あ!」
来たぞぉ!思いついた!思いついたぞ!!
これはこれに決定だ!もう変更なし!
「え?なになに?何思いついたの?」
「ふふん、それはね………………忍冬!」
我ながら天才的なセンスと才能だ!今のこと状態でこのカッチョイイ単語を思いつくとは!!
「ス、スイカズラ?何それ?」
「スイカズラ科の植物でお花だよ。
冬場を耐え忍ぶ事から付いたんだ」
「そっか‥‥‥イネスが気に入ったなら
それが良いと思うよ」
勿論気に入った!もうこれ以外あり得ない!
それくらいのレベルでしっくり来た。そしてなにより花言葉が良いのだ。
「っと、そろそろ戻ろっか?」
「あ、うんそうだね」
そして街のクエストカウンターにて、僕達が討伐したヴェルウルフの牙‥狼牙を置く。
「1、2、3、4………10。丁度10個ですね!」
では、と言って受付の女性はカウンターに硬貨の2,000リル分を置いた。
「これにてクエストは完了になります!
お疲れ様でした、またお願いしますっ!」
女性受付は元気にお辞儀をした。
あ、そうそう忘れていた。忍冬の花言葉………………………それは、『愛の絆』