7話 人見知り、討伐する。
街の外れにある大きな草原、フェアル草原。
そこでヴェルウルフという魔物を討伐するクエストを受注した僕達は、それを達成させる為にこのだだっ広い草原に来ていた。
「ここがそのフェアル草原だよ、イネス」
「ここか…………随分と広いね」
ここが丘の様になっているというのもその理由のひとつなのだけど。
「あ、そういえばイネス………この草原ってさ、夜に見える星がとっても綺麗らしいよ」
「星?星か‥‥‥‥」
星など前世では微塵も興味無かった。両親が星を望遠鏡で見るのも趣味にしていた様だが、あまり両親と話さなかったのだそこまで知らないけど。
「それでねそれでね!そのこの丘に座って星を眺めながら手を繋ぐと、結ばれるっていうジンクスがあるらしいよ!」
そりゃそうだろう。10代の男女が小高い丘に座りながら手を繋ぎ、星を長時間眺めていたら結ばれるカップルも多いと思う。
「そっか、たしかに星は綺麗かもしれないね」
と、ここで例のものを見つけた。
「あ、あの狼みたいなのが………?」
「うん、あれが討伐対象だよ。正確には、倒したときにドロップする狼牙っていう素材を集めるのが任務なんだけどね」
たしかになんの証拠も無しに20体倒したと言ってとても信用できる話では無い。論より証拠とはよく言ったものだよね。
「目標は20体だから、手分けして半分ずつね」
と言ってシルヴィは腰に下げた剣を構えた。
「あ、あとさ。ドロップしたものは全て倒した人の物だから忘れずに拾ってよ?」
と言ってシルヴィはあの狼魔物に向かって行った。僕も後ろ腰に下げた刀を左腰に寄せる。
そして、鞘を左手で掴むと狼魔物に向かって急突進して行った。シルヴィはあの魔物をそこまで強くないと言っていたので、まずは戦ってみる。
「……………………ッ!!」
その魔物の横を通り過ぎる直前、抜刀術の要領で逆袈裟斬りし狼魔物の胴体を上下に両断した。感触からして、とても斬ったとは思えなかった。この刀の性能が化け物なんだろう。
グガァなどという断末魔を上げながら絶命した狼魔物は数秒の後、砂の様に溶けて消滅した。残ったのは目標の狼牙と紫色をした魔石だ。
「これが‥‥魔石か」
その魔石を太陽に翳すと綺麗な紫色の光が顔に降りかかる。美しいには美しいのだが、まだ仕事は残ってる。急いで先程シルヴィから貰った革袋に入れた。
そして刀を構えた状態で1番近くにいる狼魔物に全力のダッシュで近づく。そして目の前に立つとその狼魔物は僕を睨み上げ右腕を振りかざした。
「………………ふっ!!」
その腕が僕に当たる直前、右にステップしながら右腕を刎ね飛ばした。
「グ、グガァア!!?」
大きな狼魔物は、右腕がいきなり刎ね飛ばされたことに驚き、そしてあまりの痛さに声を上げる。まあ普通に考えて骨諸共綺麗に右腕が無くなれば誰でも痛がると思う。
そして狼魔物の首めがけて飛び上がり、それと同時に首を刎ねた。今度は断末魔を上げる事も無くドサッという音と共に首が地面に落下した。
「なんか…………………弱いの?」
まぁそう思うのも無理はない。熟練の冒険者や騎士にとっては狼魔物など取るに足らない。
だがイネスは自惚れることも無く、静かに素材を回収して行った。