61話 人見知り、弟子になる。
え?弟子?そんなものあるの?この世界って。
「………弟子?」
「うん。前の序列戦で最後にアラトレア先輩を斬った抜刀術があったよね?その時に先輩の動きが一瞬だけ止まったんだ」
あぁ、あれのことか。あれはただ単に野太刀が振り下ろされる寸前に結界魔法を展開しただけだ。簡単な術式だったのですぐ割れてしまったが、僕にとってはその一瞬だけで十分だから。
「あの寸前の結界魔法。ボクは正直度肝を抜かれたんだよ。だから今よりももっと強くなったイネスを見てみたくなったの。だから弟子ってこと」
なるほど。特に下心は無さそうだね。僕としても僕より強い氷冴に剣を教えてもらうというのは願ってもない機会だ。
「………分かった、氷冴の弟子になるよ。これから色々よろしくね」
ここに一組、師弟の関係が出来た。氷冴は日本刀である太刀を使うのでお互いにているからだ。氷冴は自分の流派の技や技術を出来る限り教え、イネスは師匠から頂いた助言や指導を忘れないと心に誓った。
「ありがとう!よろしくねイネス!」
氷冴から差し出された手を握った。
◆
次の日。意外と新しい部屋でも寝れるということに驚いた。それとさシルヴィ、寝てる時に胸を押し付けるのやめてくれない?性欲ないけど襲わない保証はないんだよ?まぁ絶対に襲わないけどね。友達減るのは嫌だし。
「…………ん?」
僕はなんの気無しに端末を弄っていた。先日あった序列戦のログでも残ってないかなと思ったからだ。結論から言うと無かったが、それよりも凄いものを見つけた。それは、第五学園の電子新聞に書いてあるものだ。
『序列外の1年イネス・シルフィードが2年序列12位のジークス・アラトレアを序列戦にて撃破し序列12位に昇格へ!そしてそのカウンターや間合い取りの戦闘スタイルから二つ名は【影星】に決定!』
このイネス・シルフィードって誰?まさか僕と同姓同名がいるとはなぁ…………意外だわ。
「んん?どうしたのイネス……………ってえぇ!?」
ベットから降りながらそう言って寄ってきたシルヴィは、この文章を見て驚いたような声を上げた。
「凄いじゃん!二つ名【影星】だって!カッコいいよ!まさにイネスにピッタリって感じがするよっ!」
「そ、そうかなぁ?」
【影星】なんて厨二病っぽいけどね。いや、剣と魔法があってその専門機関で勉強しているなんてもはや厨二病の塊か。
「そうだよ!カッコいいじゃん【影星】って!わたしも二つ名欲しいなぁ……………」
僕がアラトレア先輩に勝って序列12位になったことでこの様な記事が書かれたのだから、シルヴィも強い人と戦って序列上位者になれば貰えると思う。
シルヴィが着替えたいということで僕は寝室を出た。僕はもう制服に着替えているから問題ない。
「………あっ、おはようイネス」
「おはようございます、イネス殿!」
「おはよう二人共」
リビング兼ダイニングにはクレアとイヴがいた。二人は机に向かっており週末の課題をやっている様だ。ん?今日は何曜日かって?月曜日だけど?
「………………」
「これで……………よしっ!」
二人は課題を終えたのか教科書とノートを畳んで重ねた。終わるの早いね。
「あ、そういえばイネス殿!あなたの二つ名見ましたよ!【影星】なんてイネス殿にピッタリですよ!」
「………そんなこと書いてあったわね。おめでとうイネス」
二人にもピッタリだって言われた。そんなにかなぁ?ってそういえば影って僕の前世の名字の一文字目じゃん……………ん?知りたい?影野久岐だよ。読み方?"かげのひさき"だけど?氷冴と被っててちょっとビックリしたんだよね。
コンコンコンッ
おろ?来客が来たようだ。イヴが立ち上がって玄関に向う。こんな時間に誰だろう?
そう思っていると声が聞こえてきた。この声は柊木氷冴のものだ。するとイヴが上がって下さいと言った。
「あ、おはようイネス」
今の声は綾桐だ。
「ん、おはよう」
奥から我が師である柊木氷冴と五稜館であった水浪綾桐が来た。今思ったんだけど僕の部屋って今凄い面子がいるよね。薄い紫色の髪の毛をした優しいシルヴィに悲しそうな目をした薄い青色の髪をしたクレア、金髪碧眼の親切なイヴ、赤髪のポニーテールをした氷冴、茶色をした強気な少女綾桐。それも全員めちゃくちゃ可愛い。まさに絶世の美少女だ。美女じゃないって?良いんだよ可愛ければ。
「師匠として弟子の様子を見に来たよイネス。朝の調子はどうかな?我が弟子よ?」
ニヤッと笑った顔をしてそう言った。っていうかこれって師匠相手だからやっぱり敬語の方が良いのかな?
「おはようございます、師匠」
「えぇ!?何時も通りで良いって!」
敬語で言うと氷冴はテンパった。まぁそう言うならばこれからは普通にしようかな。




