60話 人見知り、実感する。
あれから翌日の日曜日になった。今日は僕の暮らす部屋を引っ越す日である。アラトレア先輩との序列戦に勝利した僕は序列12位になり、色んな特典を貰える。その中の部屋のグレードアップを利用した訳だ。
「この部屋ともお別れですね」
イヴは僕たちの私物が殆どなくなり広くなった部屋を見て感慨深そうに言った。ただ実質この部屋を利用したのは2週間弱だ。
「それでは行きましょうか。忘れ物はありませんよね?」
「うん、3回くらい確認したからね」
実際忘れ物をしてしまうと面倒くさいから気を受けた。後から取りに来るのも嫌だからだ。
新しい例の部屋はこのアパート寮の最上階の突き当たりだった。寮は七階建てで、おんなじのが三棟あるんだよ。あぁ、それと隣の部屋の住人が……………
「ここがAランクの特別部屋だよ!」
「遅いわよイネス。シルヴィア達も待ってるわ」
氷冴と水浪綾桐の部屋だ。え?前の部屋といい今回といい何でなの?誰か狙ってるよね?
「ごめん綾桐。シルヴィとクレアも」
僕が謝ると、その三人のうちの一人であるシルヴィが全く気にしていない様に言った。
「うぅん全然。それより速く入ろう?」
そう言うので会長から預かったこの部屋の鍵を鍵穴に差し込みドアを開けた。
「おぉ…………!」
「………下とは違うわね」
「すごい豪華です………!」
三者三様の驚き方をした。そして僕も内心驚いていた。だって入り口からして全然違うんだもん。なんかカーペットも引いてあるし。
「一通り見て回ったら持ち物を整理しなよ?ちゃんと整えないと過ごしづらいからね」
氷冴がそう言ったので女子勢は部屋の探検を始めた。まぁシルヴィとイヴが主導でクレアは付き合わされている感じだが。
◆
女子勢はこの部屋の大きさにすっかりテンションが上がったのかずっと機嫌が良かった。そんな彼女を尻目に僕は黙々と作業を進める。もうそろそろ出来るころだ。
「この部屋って3LDKってやつなんだよね?」
「うん、この階の部屋は全部同じ間取りで3LDKだよ。かなり広いでしょ?」
シルヴィの疑問に氷冴が答えた。
この部屋の間取りは玄関を抜けると大きな部屋があり、そこにキッチンがある。その左に浴室やトイレ、洗面所がある。そして玄関から大きな部屋に入り正面を向くと洋室が三部屋ある。二部屋を寝室にし残りを作業室にした。
「クローゼットが4つあるのでみんな一個づつで良いですよね?」
「良いよ」
リビングでありダイニングである大きな部屋にはテーブルや椅子を起き、そこでご飯や勉強、会話をすることにした。そして三部屋がない方の壁角にガラステーブルを起きソファを置いた。え?誰のかって?アラトレア先輩がくれたんだよね。入らないかららしいけど。
っと、僕はお終い!クローゼットに制服や普段着を入れて忍冬を壁に掛けたくらいだけど。あとクローゼットの余った下のところに教科書やらノートやらをぶち込んだ。まぁどうせ勉強するのはリビングだしね。
僕の寝る寝室には2つのクローゼットがある。もう一つを使うのはシルヴィになった。そして肝心のベットはダブルサイズが2つギリギリで並んで入っていた。っていうかこれどうやって入れたの?
照明は天井の魔法照明と魔石松明だけだ。この魔石松明だが、光が明るい感じがして意外と好きだ。
「イネスありがとうね。この部屋にわたし達三人を住まわせてくれて」
「全然問題ないって。ていうかこの部屋に一人だけで住む方が寂しい気がするし、賑やかな方が楽しいんじゃないの?」
こんなバカでかい部屋を一人で暮らすなんて静か過ぎて嫌だ。何かを聞きながら寝たい。
「そう?じゃあ迷惑をかけないようにするね」
「いや、気にしなくていいよ。遠慮なく寛いでほしい。ここは君たちが暮らす家なんだよ?」
「…………そっか、分かったよイネス」
実際に言うと泊めさせたことにより距離が出るのが嫌なのだ。折角仲良くなったんだからもっと仲良くしたい。
「それじゃあイネス、氷冴と綾桐にも挨拶しよ?そこのリビングにいるからさ」
え?いたの?気づかなかった……………まぁ挨拶はするか。これから結構お世話になるかもだし。
「あ、イネスとシルヴィ。終わったの?」
「そうそう、ちょっと話し込んじゃってさ」
シルヴィがそう言った。
「そっか。あ、それはともかくA級おめでとうイネス。こんなに早くなるなんて想像したなかったよ」
ええ、僕も予想して無かったよ。っていうか氷冴は序列10位なのでそこまで嬉しくはないのだが…………まぁありがたく受け取っておこう。
「それでさイネス。ボクの弟子にならない?」




