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天才剣士は異世界でも人見知り。  作者: 五輪 亮惟
第二章 第二節、五稜局編
57/81

57話 人見知り、絶対に勝ちたい(2)

絶対に勝つと決意してから、僕は食堂に向かった。今の時刻は9時半前。まだアラトレア先輩はいないだろう。と、思っていたのだが……………


「あぁシルフィードか。随分と早いんだな」


「あ、アラトレア先輩。お、おはよう………ございます」


「あぁ、おはよう」


僕がぎこちなく挨拶をするとちゃんと返してくれた。良い人なんだね……………


「それで、なんか食うか?」


そう言うので先輩の手元を見るとなんと揚げタコくんがあった。この人も知っているのか……!?


「………これか?これは購買に売ってる揚げタコくんと言ってな………知ってるのか?」


そう言われたのでコクっと頷いた。


「そうか、これ美味いよな。良ければ一個か二個やるよ。食うんだろ?」


「あ、ありがとうございます……………」


そう返事をして先輩の前の席に座った。そしてもう一つの爪楊枝を渡されたので一つに刺して口に運んだ。うん、相変わらず美味い。


それから僕はもう一つを食べ、先輩が残りを食べたことによりなくなった。ので、そろそろやることにした。


「それじゃ、そろそろやろうか」


揚げタコくんが入っていた紙包みを入り口付近のゴミ箱に入れ、付いてこいと言った。この人の後ろ姿は正しく"先輩"のソレだった。


そして今いるのは第四アリーナの端っこだ。今が土曜日の午前10時ということで人はあまりいない……………と思っていた。まぁいないにはいないが知り合いが沢山いた。蒲原淮里に高敷榧雅、アストリア・リルシャールが蒲原ハーレム?の人達。それとシルヴィア・インフォルトとクレア・ウォルクス、イヴ・ディスリートに柊木氷冴、そしてまさかの水浪綾桐がいた。あ、水浪さん制服似合ってる。


その水浪さんと目が合うと「負けんじゃないわよ」というような目をしてこちらを見ていた。


「それじゃ、始めるか」


「………はい、お願いします。アラトレア先輩」


先輩の方は準備が出来ているらしいので、昨日端末で調べた序列戦を申し込む際の語句を並べた。


「イネス・シルフィードはジークス・アラトレアに序列戦を申し込む」


「受諾する」


先輩が僕の挑戦を受諾すると、ポケットに入れた端末が振動し魔法音声が流れた。


『序列戦の同意を確認。全身に防御膜を展開。序列12位ジークス・アラトレア対序列外イネス・シルフィードの試合を開始する』


あ、やっぱり序列外だったんだね。


「…………仮にも序列12位の俺がが簡単に負けるわけにはいかない。全力で行くから全力で掛かってこいよ」


「もちろん、最初から全力ですよ」


そう言うと、アラトレア先輩は嬉しそうに息をふっと吐いた。


『10秒前』


もう先輩と話す時間ではない。僕は静かに忍冬を鞘から抜き、正眼の構えを取る。あ、正眼の構えっていうのは中段の構えのことね。それと、僕のスタイルは基本的に受け太刀、カウンターがメインなので相手が打ち込んでくれないと距離が取れない。


相手を見ると、先輩は野太刀を構えていた。僕は正眼の構えなのに対し先輩は上段の構えをとっていた。


『5秒前』


先輩の顔には笑顔が見える。羨ましいと思った。僕には戦闘中や戦闘前に笑えるほどの度胸や強さがない。それが欲しいのだ。


『4』


呼吸を落ち着かせ、思考を地面と先輩だけにする。僕の頭の中には、ギャラリーも他の人が打ち合う音も聞こえない。ここは僕と先輩だけの世界だ。


『3』


心臓がドキドキする。緊張しているわけではないと信じたい。心を落ち着かせ、冷静を心がける。作戦を決めるのは簡単だ。


『2』


正面に構える忍冬が僕の腕と一体になるような感覚になる。今だけは僕の腕となり、思うがままに動いてくれる。


『1』


心は落ち着いている。作戦は立てている。相手の観察もした。プランを沢山考えた。あとは…………………


『試合開始!』








勝つだけだ。


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