56話 人見知り、絶対に勝ちたい。
「ほぉ〜、イネス・シルフィードっていうのか。俺はジークス・アラトレアだ」
アラトレアさんが味噌カツを食べ終えると、僕に名前を聞いてきたので答えると、先輩も自己紹介をしてくれた。
「ん?お前…………………」
そう言って先輩は僕の目を覗き込んだ。
「よし、シルフィード。週末の序列戦相手いる?居ないんだったら俺とやらなぇか?」
なんと先輩は僕と序列戦がしたいんだそう。理由を聞くとなんでも、強い意思が宿ってる目をしてるからだって。
「ただ、ランクが俺より下のやつに挑むことは出来ないから、お前が挑戦するって形になるな」
なるほど…………まぁ丁度相手もいなかったところだし、願ってもないことかな。
「じゃあ、その…………よろしくお願いします」
「おう!じゃあ改めて自己紹介な。俺は2年2組で序列戦12位で、二つ名は『烈影』って呼ばれてる。お前は?」
わぁーお、序列12位の人なんだ。え?これもし僕がボコボコにされたら五稜局入れないんじゃね?それ困るよね。
「1年3組で………多分序列外です。二つ名はありません。よろしくお願いしますね」
多分っていうのはビルマイクと戦ってポイントが入ったと思うのだが確認をしていないからだ。
「お、おう?多分ってなんだよ…………まぁいいや。おいお前」
そう言って先輩は蒲原淮里を見た。
「お前よりこいつのほうが強い。こいつより強くなりたいなら、才能なんて言葉は使わないことだな」
「くっ…………はい」
蒲原はほんの少し顔を顰めたが、素直に返事をした。
「それじゃあシルフィード、土曜日の九時にここ集合な。その後どっかでやろうぜ」
「は、はい。よろしくお願いします……………」
僕がそういうと先輩は「おう」っといって満足げに食堂を出て行った。
「まったく、なんなんだよあいつ……………!」
隣で蒲原がイライラしているが、先程のアラトレア先輩の言っていることは間違っていない。それを理解出来ずにただイライラしているだけでは成長しないだろう。
◆
土曜日になった。今日はジークス・アラトレア先輩との序列戦をやる日だ。
「イネス殿、今日は頑張って下さいね」
いつも通り6時に起きたので図書室で借りた本を読んでいると、イヴ・ディスリートに話しかけられた。
「うん。負けたら五稜局に推薦してくださった会長さんに申し訳ないからね」
それに、僕はこの学園の序列上位者の実力が知りたいのだ。そのためにはすぐに負けるわけには行かない。
「そ、それもそうですけど……………私はイネス殿に憧れてるです。だから、その…………負けてほしくないんです」
その言葉にポカンとしてしまった。言っていることはめちゃくちゃだ。ただの押し付けに過ぎない。だが、その言葉に僕の心が動いた。
(そうだよね。これは僕イネス・シルフィードと序列12位のジークス・アラトレア先輩との戦いなんだ。絶対に勝つくらいじゃないとね)
実際には絶対に勝つなど思っていない。僕は出来ないことは言わない、もしくはやらない主義だ。そしてこの世の中に絶対はない。それは前世で嫌というほど知っている。
「そっか……………ありがとうイヴ。頑張るよ」
だが、この試合だけは…………………………絶対に勝つ。
イヴの為にも勝つってことです。




