49話 赤い狐な少女
午後の授業もなんの問題もなく終わり、他の生徒が寮に戻ったり自主鍛練のためにアリーナや戦闘場、訓練室に向かったりしていた。だが僕たちに用があるのは戦闘関連じゃない。生徒会室だ。
静かに生徒会室の扉を開くと、中から入ってくださいと言う声が聞こえた。その声の通りに扉を開ける。中には例の生徒会長、アストリア・リルシャールがいた。
「よくお越し下さいましたね。ですが例の案内人はまだ来ていないので待っていてもらえますか?いつもの所に座ってもらって大丈夫ですよ」
どうやら会長さんは仕事中の様だ。やっぱ仕事ってたくさんあるのかな?大変ですね〜。
「あ、お茶を淹れましょうか」
会長さんがそう言った。
「い、いえいえいえ!全然気にしなくて良いですよ。それに例の人も来ますし…………」
シルヴィが遠慮した。確かにお茶を沸かしている時にその人が来たら申し訳ないだろう。
「あら、そんなことないですよ。恐らく案内する人もここで休憩するでしょうし」
「そ、そうなんですか?」
すると会長さんは優しく笑った。
「はい、大丈夫です。少し待っていて下さいね。すぐに紅茶を淹れますから」
と言って会長さんは扉の隣に歩いていった。ってあれ?この部屋キッチンとかあったっけ?
会長さんは台座の上にポットがあるもの?の前に行き、ポットに水が入っているのを確認するとその台座に右人差し指を触れさて魔力を流した。
っていうかなにあれ?凄い便利なんだけど?日本にいたころの小型コンロのもっと小型版みたい。そんなふうに考えているとポットの蓋がぶくぶくと音を立てて跳ねていた。水が沸いたのだろう。次に会長は棚からガラスでできたティーポットに袋の茶葉を放り、沸かしたお湯を入れた。
この生徒会室に会長さんの紅茶を淹れるための音以外が聞こえず、心地良い静かな時間を過ごしていると………………
バタンッ!
「ごめんアリア!遅れちゃた」
ノックもしないで入って来た人は、明るく元気な声でそう言った。ってか会長さんアリアって言われてるんだね。アストリアからアリアか………………
「あぁ、ようやく来ましたか」
と言った会長は、ティーカップに色の付いた紅茶を注ぎソーサーに乗せ、それを円形の木版に置いてこちらに運んで来た。
「お待たせしました皆さん。ダージリンのストレートです」
ダージリン?ストレート?なにそれ?変化球とか?いや、もしダージリンが変化球だとしたらストレートの意味が分からない。ストレート系の変化球ってことかな?ツーシームとかムービングファストみたいな?
「………イネス、ダージリンっていうのは紅茶の種類のことよ」
隣にいるクレアに言われた。なんだ品種のことか。ストレートっていうのはまぁ…………うん、そのままってことかな。
「え?それってボクの分も………」
「勿論貴女の分もありますよ。持ってきますから座ってくださいね」
「あ、うん分かった」
と言ってその少女は会長さんが座る席の反対側の席に座った。この人が例の人かな?
そう思っていると会長さんはその人の前にも紅茶を置き自分の席の前にも置いた。
「お味は如何ですか?」
「はい、とっても美味しいです」
「確かにこれは良いですね」
「………いい味がするわ」
「美味しいです」
と言っても紅茶なんて初めて飲んだんだが。こういう飲み物はコーヒーしか飲んだことない。
「相変わらず美味しいよね、アリアの紅茶って」
「ふふっ、それはありがとうございます」
微笑んでそう言った。
「さて、では全員揃ったということで自己紹介をしましょうかね。まずはシルフィードさんから」
おぉ…………僕からかぁ。
「えぇと、1年3組のイネス・シルフィードです。えっと………よろしくお願いします」
無難に自己紹介を終える。趣味とかは言わなくて良いよね?
「………1年3組のクレア・ウォルクス。よろしく」
まぁ相変わらずというかやっぱりって感じだよね。いつものことっていうか。
「1年3組のシルヴィア・インフォルトです。これからよろしくお願いします!」
シルヴィは相変わらず元気だ。
「同じ1年3組のイヴ・ディスリートです。よろしくお願いしますね」
これだ僕たち4人の紹介は終わった。次は会長かその女子生徒だろう。
「では私から。2年3組アストリア・リルシャールです。二つ名は細迅と言われています。序列は五位です。ご存知かと思いますがこの第五学園の生徒会長をしています。以後、お見知りおきを」
あ、先輩だったんだ。まぁ1年から生徒会長は無理か。っていうか二つ名なんてあるんだね。
「じゃあボクだね。1年5組の柊木氷冴です。二つ名は不本意ながら赤狐と呼ばれてるよ。序列は十位。よろしくね!」
その少女は赤い髪の毛を大きめなポニーテールにしておりその上赤い瞳、そしてクレアと同じ位の身長をしており、何より制服が巫女服のようだった。っていうか同級生なのにもう序列十位なんだね。だから二つ名があるのか。
「そしてこの柊木さんが例の案内役の人です。この人、第五局で部隊を組まずにソロでやってるので暇なんですよ。ねぇ氷冴?」
「いやぁ〜誰もやってくれないんだよね」
その場合は強すぎるか弱すぎるんだろう。まぁ多分この少女が強すぎるんだと思う。そう思っていると会長が短く溜息をつき言葉を続けた。
「兎に角この人達を五稜館に連れて行って差し上げて下さい。期待の新人ですから」
え?まだ入るとは言ってないんだけど?というかなんでそれを聞くと柊木さんはウキウキした様な顔になるの?
「もしかしてアリアが推薦したってこと?でもまだ入局の事誰にも聞いてないんだけど…………」
「あぁ、まだ決めてませんからね。なので今日五稜館を見学したいそうです。あ、その時ついでに入局申請書を持ってきて下さい。受付に私の名前を言えばくれるはずですから」
「入局申請書?分かった持ってくるね!」
え?これって帰ってからやっぱり入りませんっていったら凄い悪人になっちゃわない?




