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天才剣士は異世界でも人見知り。  作者: 五輪 亮惟
第二章 第一節、学園生活編
34/81

34話 人見知り、ホッとする。

『決闘決着!勝者、イネス・シルフィード!』


僕の使える最速の技、抜刀術が腹に決まりビルマイクを覆う第二防御膜を破壊した。つまり、僕の勝ちだ。


「…………完敗だ、シルフィード」


「…………そこまでじゃない」


そういうビルマイクは何故か親近感を覚えた。このような人をどこかで見たことがあったのだ。


「オレが間違っていた………のかも知れない。これほどの実力を持つものがそう簡単に女を誑かすことはないだろう」


そして………とビルマイクは続けた。


「もし本当に誑かしているのなら、その時は容赦しない。本気で殺しに行くからな。どんな手段を使ってもだ」


怒気が込められた声でそう言った。まぁ安心しなさい。僕はシルヴィとクレアを騙したつもりはないからさ。


「そっか……先に言っとくけど、騙してないから」


彼に真剣な眼差しでそう言った。それだけは事実だからだ。本当に騙してないし誑かしてもない。


「……………そう願うよ」


といってビルマイクは僕に背を向けて帰って行った。その背中はやはりどこかで見たことがある。


「あれは……………前世の前橋だ…………」


前橋則仁(まえばしのりひと)が本名なのだが、その男は背が高く、ひどく傲慢な人間だった。自分が当時通っていた道場の中で最強であり、誰にも負けることはない。と信じていた男だ。だが実際に彼は強く手強かった。言葉を交わしたことは少ないが、俗に言うライバルってやつだと思う。彼は女の子が好きでイケメンだったので良く囲まれていた。その時の顔と後ろ姿が、あまりにも酷似していたのだ。


(前橋則仁の場合は傲慢だが努力家だったかな。もしレーベル・ビルマイクもそうだとしたら………面倒な奴に目を付けられたかもね………)


そう頭の中で思う僕だが、顔は僅かに笑っているようだ。少し期待してるのかもね………………


「イネス!いい試合だったよ!」


「………でも立ち回りが雑だったかしら……?」


後ろからシルヴィとクレアに声をかけられた。シルヴィはいつも通りニコニコ顔で褒め、クレアは決闘のいけなかったところを指摘してきた。だがその顔には満足が浮かんでいるようだった。


「ありがとう、僕も勝ててよかったかな…………」


「そうだねぇ。でも最後の抜刀術さ、あのタイミングと間合いで使うのは反則気味てるよね……」


「それは言えるわね。体の構造上対応しにくい場所と間合いをとったんでしょ?」


それはもちろんのことだ。勝ってなんぼの決闘でわざわざ手加減する必要も特に無かったし。勝ちたかったのは事実だし。


「うん、まぁね。勝ちたかったから」


もし負けていたらシルヴィとクレアを解放(笑)をしなければいけなかった。ってか負けてたらどうしたんだろうなぁ……………ちょっと、ほんのちょっとだけ気になるな。


「た、確かにね……………」


「………解放だったかしら?」


まったく今となっては意味が分からないな。そもそも僕は二人を持っていない。持っているというのは人身売買とかのことで買った場合のことだ。


「ま、買ったならビルマイクもそんなに手を出さない筈だし、ポイントも貰ったから万々歳だよ」


「それもそうだね」


「そういえばポイントなんて言ってたわね………」


まぁ確かにポイントには興味ない。決闘の勝敗によってポイントが増減するシステムは興味深いが序列には興味がないからだ。まぁ申し込まれたら受けるって感じかな。


と、シルヴィがふと校舎の壁に書けられている時計を確認した。


「あ、そういえばもうこんな時間だ……………」


「………そろそろ帰りましょうか?」


「そうだね。何かと疲れたし」


何かとというか普通に疲れた。まず入学初日に決闘を挑まれるっていうのがおかしいじゃん?それに何か有名な貴族の長男に勝っちゃう僕ってもっとおかしいじゃん?ってな訳で疲れたのだ僕は。


「あ。あの人が……………」


誰かの声が僅かだが耳に入った。その明るい声はシルヴィとも違う、明らかに聞いたことがない声だった………………

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