30話 人見知り、決闘を挑まれる。
「ねぇ、君達」
また来たあの男だ。但し声をかけたのは僕にじゃなくてシルヴィとクレアにだと思う。
「な、なにかな……?」
「…………なに?」
二人は少し苛立った声で応えた。
「俺の名前はレーベル・ビルマイク。ビルマイク家の長男だ。君達は?」
ビルマイク?確かこの国のまぁまぁお偉い貴族家だったかな。そんな坊ちゃんが何の用だろ?いや、用があるのはシルヴィとクレアにか。
「わ、わたしはシルヴィア・インフォルト……」
「…………クレア・ウォルクス」
「シルヴィアさんとクレアさん………だね」
と言ってビルマイクは笑った。性格は知らないが顔は整っているのでイケメンスマイルってやつだと思う。と、ここでビルマイクが何かを思い付いた様な声を上げ、こう続けた。
「ウォルクス?インフォルトって名字は聞いたことないんだけど、ウォルクスは…………は!」
「…………なに?」
相変わらずクレアは悲しそうな目をしているが、少しだけ苛立っているだろう。口調からしてね?
「ウォルクス家って言うと、魔導士界の中でも名門中の名門じゃないか!」
へぇ〜そうなんだね。名門だったんだ………だから明月とかいうチート武器を持ってたのかな?
「そんな素晴らしい血を引いている君が…………」
そう言って僕を睨んだ。
「なんでこんな男といるんだか…………」
ヤレヤレと首を振っていた。でもそんな事言われてもねぇ………僕は人前て感情的になることは殆どないから怒らないけど、周りが聞いたら腹立つ人もいると思うよ?不快感とか?
「………私が誰と居ようが貴方には関係無い筈よ」
「いいや、そんなことはない」
クレアが反論したが、ビルマイクはキッパリと否定した。
「君は誇り高きウォルクス家の一員。故に、その様な軟弱者で出来損ないと過ごしたら魔法の実力が落ちてしまう。そんなことになったら家の人が悲しんでしまうだろう?」
…………ん?まぁ言いたいことは何とか理解出来る。要するに僕から離れなさいと言っているのだろう。
「………………」
だがクレアはビルマイクの話を聞くと、更に悲しそうな目に、もとい顔になった。まるで今すぐ泣き出してしまいそうだ。
「だからこそ、こんな男の風上にも置けない様な輩より俺達といる方が良いだろう?こんなやつよりも俺達と過ごすべきだ」
やっぱり土下座はやり過ぎたかなぁ………自分が貶されるのは構わないが、クレアやシルヴィが貶されるのは目覚め悪い。
「黙りなさい。貴方は私の学園生活を決める権利を持っていないわ。それに誰と居ようが私の勝手よ。貴方に口を出される筋合いは無いわ」
「まだそんなことを言うのか。君はこの男に騙されているんだ。弄ばれているんだよ。だから俺は君を救おうとしているんだ」
「騙されて………?」
クレアがそう言うと、してやったりといった顔になった。
「あぁ、その通りだ。そしてそれは君にも言えることなんだ、シルヴィアさん」
「えっ、わたし?」
いきなり名前を呼ばれてビックリするシルヴィ。まぁさっきのさっきまで眠そうにしてたからね。
「そう、君もだ。こいつは巧妙な手口で君達を誑かし、騙されているんだ。そのままでは君達の命が危ないんだ」
命!?それは大変だな。シルヴィはまだ死にたくないだろうし。
「………いい加減我慢の限界。貴方この人のことをなんにも知らないでしょ?」
「もちろんだ。そんな男のことなど知る必要すらない。さぁ、今すぐに君達を助けてあげ―――」
「わたし達はこの人に騙されてなんかないよ。わたし達は好きでこの人のそばにいるの」
と言ってシルヴィは僕の肩に触れた。すると何故か、ビルマイクはワナワナと震えて怒った。
「君達…………お前、こんな女の子を騙して……!そんなことをして何になる?楽しいのか!?」
今は長い放課だから教室にあまり人がいない。だからビルマイクが大きい声を出しても反応する人はあまりいなかった。
「あ、えっと…………?」
「なんだ図星か!?やっぱりお前は………!決闘だ!俺が勝ったらこの子達を解放しろ!」
ん?ん…………んん?
「け、決闘………………」
「あぁそうだ!決闘だ!僕が勝ったらこの子達の解放するんだ!わかったな!?」
解放って…………捕まえた覚えはないんだけど。というかシルヴィに関しての出会いは偶然だし。
「………なら貴方が負けたらどうするのかしら?」
クレアがそう聞いた。僕も知りたいなそれ。
「ふっ、面白いことを言うねクレアさん。俺がこの土下座男に負ける?そんなのあり得る訳がないだろう?」
相当な自信だ…………ここまで自信があるのだとすれば怠慢の可能性は低くなる。つまりかなりの強敵というわけだ。
「だがまぁ、規則があるからな………俺のポイントを全部やるってので良いだろう」
あの………独り言ですか?




