20話 人見知り、剣術を披露する。
翌日になった。昨日の筆記試験に続いて今日は実技試験だ。近接戦闘と魔法試験をする。
「次!59番クレア・ウォルクス!」
実技試験担当の試験官がクレアの名前を読んだ。それに返事をした彼女は、長い杖を取り出した。
「ん?杖か?魔法特化なら第三か第四に行くべきだったな。第五では近接戦闘も重要だぞ?」
「………………いえ、問題ないわ」
と言って杖を構えた。試験官も渋々西洋剣を両手に構え、二人は対峙した。
「はじめ!」
別の試験官がそう言うと、西洋剣を持った試験官がクレアに突撃した。もし彼女が本当に魔法特化ならばまず間違いなく負けるだろう。
「はぁぁぁあ!!」
気合いを飛ばしながらクレアに剣を振り降ろした。その剣をクレアはギリギリのところで弾き、逆側で横腹にぶつけた。
「ぐふっ!?」
その攻撃は試験官にかなり効いたらしく、痛みに耐える声を上げながら後ろに下がった。
「な、なかなかやるな……………」
「…………どうも。じゃあ次はこっちから」
クレアは杖をまるで槍の様に構えた。するとその杖に魔力を流し始めたのだ。近接戦闘の試験で魔法は禁止だった筈なのに……………魔法じゃないのかも。
「ちょ、おいおい君、魔法は禁止……だ……ぞ……」
試験官の語尾はだんだん弱くなっていった。それもそうだろう。木の枝が螺旋状に絡み付いて出来ている杖の先端から、まるで槍のの様な穂が出て来たのだ。
「な、なんだそれは…………まるで槍じゃないか」
試験官のその声に、クレアは少し口角を上げて攻撃を開始した。だがその槍は速すぎて捉えられないようだ。
「くっ…………降参だ。59番クレア・ウォルクス、
君を合格とする。次だ!」
…………どうもと短く言うクレアは、僕達にも短く声をかけた。
「……………シルヴィア、イネス。頑張って」
少し恥ずかしそうに言うクレアに、シルヴィはとっても嬉しくなりうんっと言った。僕も、ありがとうと言った。
「次だ!60番シルヴィア・インフォルト!」
「はいっ!」
シルヴィは元気よくそう言い試験官の前に立った。そして鞘から片手剣を抜き出した。
「はじめ!」
シルヴィの実技試験が始まった。お互いに一歩も引かない戦いを繰り広げ、制限時間いっぱいに、なり時間切れにより引き分けになった。
「次!61番、イネス・シルフィード!」
「は、はい…………!」
うぅ〜…………人前で名前を呼ばれると緊張するな……………でも、クレアとシルヴィは恐らくこの試験を通過出来るだろう。僕だけ落ちるのは困る。
「…………ん?なんだその刀は」
と、西洋剣の剣先で刀を差した。なんだ?と言われてもなんと答えれば良いか分からない。
「まぁ良いだろう。お前のようなヒョロヒョロ
の男なんぞ試験には合格出来ないだようよ」
なんかめっちゃ貶された。あ、もしかしてシルヴィとクレア、二人の超超美少女に話しかけられたのが羨ましいのかな?それかその二人に引き分けもしくは負けたのがそんなに悔しいのか…………いや普通に悔しいかそりゃ。イライラしてるんだねきっと。
「あ、えっと………………」
「はじめ!」
ちょっ!?まだ構えてないんだけど!?たが今頃普通に刀を抜いたら頭を叩き斬られて死ぬ。本当はこの技を使いたくないのだが…………仕方ない。
「くっ……………やぁあ!!」
鞘を左腰に近づけ腰を低くする。試験官の剣が僕の頭に到着するまで後0.3秒ってところ。なら全然間に合う。刀の柄に手を当て、そのまま逆袈裟斬りの様に撃ち込み剣の横腹に当てる。抜刀術を使ったのだ。
「ぬぉっ!?」
剣にかなりの力を込めていた様で、斜め下からの強い衝撃によって大きく体制を崩した。今攻め込んでも良いがこの状態だと急所に当たらない。一旦距離を取るのが得策だろう。
「ハァッ!」
ただ自分が下がるのは何か癪なので試験官の腹を蹴り飛ばして距離を"取らせた"。ぐぅぅ!と言う声を上げながら尻餅を付いた試験官は、こちらにかなり怖い顔をして言う。キレた様だ。
「き……き、貴様!!なんだ今の攻撃は!!剣を抜いてすらいない状態で攻撃だと!?イカサマだ!」
ん?あれ?おかしいな…………鞘から抜く時間すら与えられなかった記憶があるけどな。
「それになんだ今の蹴りは!!この俺を蹴り飛ばした上に尻餅を付かせるだと!?俺を誰だと思っている!?この学園の実技試験官長だぞ!貴様を今帰らせることだって出来るんだぞ!」
お、おう……………ごめんね?っていうかなんでキレてるの?なんか悪いことしたっけ?
「ちょ、ちょっと先生その辺りで……………」
もう一人の試験官の人が怒りを治めさせるが、試験官長の人は全く聞く耳を持たず罵倒を続ける。
「貴様を怪我させない様俺は手加減してやってたんだぞ!?まぐれの勝ちがそんなに嬉しいのか!?」
「え、えっと…………………」
「貴様の様なイカサマ野郎に来る場所はねぇん
だよ!!とっとと消えろ!今すぐ死んでしまえば良い!!何なら俺が直々に殺してやるよ!」
あれ?僕なんか殺されるみたいですよ?
「おら!!今すぐそこには跪け!そして土下座をして懇願しろ!許しくくれってな!!それなら半殺しで済ませてやるよ!!感謝しろ!!」
なんか凄いこと言い出したな。まぁ土下座すれば許してくれるみたいだし、従うしかない。この学園に入学出来ない方が困る。僕優し過ぎな。
「す、すいません……………でした」
僕は言われた通り土下座をして謝った。後ろからシルヴィの声が聞こえるが反応するわけにはいかない。これ以上機嫌が悪くなられたらホントに入学出来ない。
「あぁ!?なんだその土下座は!土下座ってのは頭を地面に付けんだよ!!こうやってな!」
僕が土下座をしたのをいい事におかしな事を言いだした。そして僕の頭を踏んで地面に押し付けたのだ。抵抗すると首の骨が痛むのでしない。その代償かは知らないが踏まれている後頭部はめっちゃ痛い。
「ご、ごめん…………なさい。イカサマをして
しまって、本当にごめんなさい………………」
「あぁ!全部貴様が悪いんだよ!貴様が余計なことをしなければ良かったんだからな!!」
と言って頭を踏んでる足をグリグリする。痛い痛いって!
「痛っ…………全部、僕のせいです…………………」
「当たり前だろうが!!貴様のせいで俺は恥をかいたんだよ!どうやって償うんだ!?」
恥をかいたって……………人の頭を踏んで凄いこと言ってるね。今の行動も恥だと思うけど………………
「そ、それは………………痛っ!?」
試験官長の人は踏む力を強めた。というか地面の砂利が額に刺さって痛いんだけど?多分結構血が出てるよ?まぁ死んだら意味ないかもだけど。
「決まってんだろうが!命で償うんだよ!!本来は貴様の薄汚れた命なんぞでは俺に対する不敬すら償えねぇんだぞ!?分かってるかのか!?」
あぁ……………貴様の薄汚れた命なんかでという台詞は前世でも結構言われたな………………嫌な記憶なもんだ。
「それと貴様にはこんな武器は似合わねぇ!木の棒きれでも振ってれば良いんだよ!」
と言って忍冬を取り上げた。そしてそれを逆手に持って僕の首筋に近づける。何で見てないのに分かるかって?気配でわかるんだぜ!スゲェだろ?
「こいつは俺が使ってやるよ!こいつの気持ちになって感謝しろ!!」
…………というか他の試験官は何で止めないの?いい加減額が痛いし、膝をついてる砂利も痛いんだけど?それにシルヴィも怒ってるし、クレアがそれを抑えてるし。
「そ、その刀だけは……………止めて下さい………!」
だけどこの刀だけは手放すことが出来ない。その刀とこの体は、僕を救ってくれた神様がくれたものだ。本当はこんな輩に持たせるのすら可愛そうな、言わば僕と神様との架け橋だ。
「なに?貴様今なんて言った!?この俺にそんな口を聞けるとでも思ったのか!?俺は貴様を家に帰らせることだって出来るんだぞ!!」
しまった……………刺激してしまったか。このままだと恐らく死刑とかの口実を付けて殺されるだろうな。だがこの世界に来て14日で死ぬのは御免だ。
「このクソガキが…………!!今この場でお前を不敬罪によって死刑とする!その行動、冥府で散々悔やむと良い!極悪人よ!!」
と言って忍冬を振り上げ……………………………




