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天才剣士は異世界でも人見知り。  作者: 五輪 亮惟
プロローグ
2/81

2話 人見知り、転生する。

「んん………………」


目が覚めると柔らか感触。なにやらベッドで寝ている様だ。


「あ、目が覚めたんですね」


女性の声が聞こえた顔を上げると入り口から女性が入って来た。


「どこか痛むところはありませんか?」


「…………ない……です」


ま、まずい……!!どうやら転生は成功したらしいがコミュ障はここでも発揮されている様だ。次の世界では楽しく会話がしたいのだが……………


「そうですか、なら良かったです」


だがその女性はそんなことを意に返す事も無く平然と話を続ける。対応からして医者…………もとい看護師ってところかな?


「でもビックリしましたよ。この病院の路地で倒れていたんですからね?」


「た、倒れて………?」


そんなことは覚えていない。覚えているのは転生したという事実のみだ。


「も、もしかして覚えていないのですか?」


「……えぇ、何も………知らない……です」


文字通り、なんにも知らない。この世界のことも自分のこともすべて。


「何もって………家とか、名前とかもですか?」


家?そんなものはない。なぜなら今転生されたばかりなのだから。


「……家はありません。名前………知らないです」


「え…?名前を………知らないんですか?」


知らないものは知らない。神様からもまだ名前を聞いていないのだから。


「そうですか………ですが、あなたの身体は特に問題ありません。なので退院して貰わないといけないんです………すいません」


「…………退院するんですか……?」


それ自体は良いのだが、した後は困ってしまう。行く家もなければお金も無いからだ。


「そうです………すいません」


「いえ…………………衣類は?」


今は患者服だ。これでは外に出られない。まぁ全裸で倒れていたのなら仕方が無いが………


「あ、ここにありますよ。えっと、下着とフリース、スボンと………コート?」


「……………ん」


窓の外を覗くと外は晴天……室内の気温は27度なのでまぁ春か秋だろう。あ、27度なのは感覚で分かっちゃうんんだ。前世でも得意だったなぁ。


「と言っても今は3月上旬、普通ですかね。私は外に出ますから着替えて―――あれ?」


服を籠から取ると紙がヒラヒラと落ちていった。服と服の間にでも挟まれていたのだろうか?


「な、なんでしょうこれ……………あなたにですか?」


「………知らない……です」


そうですか………と看護師は言って紙を開いた。読み終えたら僕の顔を伺っているようだ。


「その………あなたのことが書いてあります」


と言って紙を見せてきた。それを受け取って目を凝らす。そこには…………………


『これを読んでいるということは、転生は上手くいったようだな。それとまだお主の名前を教えておらんかったな。お主の名前はイネスじゃ。姓は儂から取ってシルフォール。それと、衣類や武器もお主の望み通りおいてあるぞ。もちろん感覚云々の方もじゃ。じゃから後はお主次第じゃな。新しい世界、楽しむと同時にコミュ力も磨けると良いな?』


………何というか…………お節介な神様だな。

まぁ、感謝しているのは間違いないのだが。


「その………勝手に見てすみません……!」


看護師は物凄い勢いで頭を下げて謝る。

別にそこまで気にしていないんだけど………


「いえ………刀はありましたか?」


「え?刀………あぁ!近くに刀があったので一緒に回収したと言っていましたね」


と言ってベッドの下に覗いてゴソゴソした。

と思ったら、その両手には無骨な刀。


「これのことですよね?」


「………そう……です」


そうと言っても今初めて見たんだけどね。


「下の籠に入れておきますから出る時に持って行って下さいね」


と言いながら看護師は部屋を出ていった。

着替えろってことなんだろう。


僕はその意図を何とか汲み取り実行する。

と言っても服を着るだけだけどね。


「………着やすいね」


この声は多分誰の耳にも届かないだろう。だが、この声は神様に言ったものだ。せめて神様の事を忘れない為にもコートの胸のポケットに神様からの手紙を折って入れた。


そしてその刀を腰の後ろに掛けた。左腰だと

座ったり移動するとき邪魔になるからだ。


「それにしても……………随分変わった刀だね。僕の理想はこれなんだなぁ…………」


その刀は通常の刀や日本刀とは明らかに逸しているのだ。まず鍔がない。鍔がある筈の部分には出っ張りがあるだけだ。それに重ね(刃の厚さ)が1cm弱もある。太刀より少し短いくらいの長さがあり、あまりにも無骨すぎる刀だった。反りもほんの少ししかなく、打刀より片手剣寄りかもしれない。打刀だけどね。


「あ、えっと………シルフォールさん。退院おめでとうございます。退院手続きは既に終わっているので……………その」


看護師は言葉を濁した。何か後ろめたさがあるといった感じだ。さっきの手紙の事かな。


「ありがとうございました」


もうこの病院に言う事はない。拾ってくれたことに感謝しそう言って病院を出た。

 

口下手だからしょうがない………のかな?



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