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「ドナ、一体何があったの?」

「……(ぷいっ)」


 エマがアマンダとそんな話をしている一方で、騒ぎのもう一人の中心人物であるドナは自室でそんなやり取りをしている真っ最中であった。


「(参ったなぁ……)」


ドナと話をしているのは同じくここの職員であるが先ほどから全く口も利こうとしないドナの対応には手を焼かざるを得ない状態である。

 こうして冷静に見ると全くいう事を聞かないのはドナの方なのだが表面的に見てしまうと単に大人しいというカテゴリーに属するドナの方が「いい子」として扱われてしまうのだ。


 本人が何を考えているなどは本人しか分からないはずなのに周囲が想像でそれを補完してしまっている。


「お邪魔します」


 ドナがそんな沈黙を決め込む中、ドアのノックと共にエマが室内へと姿を現した。


「……!」


 室内へと入って来たエマの姿を見たドナの表情が一瞬固くなるのをエマは見逃がさなかった、ドナも先ほどのエマの一喝を見て印象が強く残っているのだ。


「ドナちゃん、少しいいかな?」

「…………」


 ドナは何も反応を見せない。


「少しお話をするだけだよ」


 エマが優しく言うがドナはなんの反応も見せずに黙ったままである。


「(やっぱりドナの方がいう事は聞かないって感じだね……)」


 自分の意思表示も見せないドナの様子を見てエマは内心でそう思うのであった。

 だが「話をするだけ」という言葉とエマのいつものような優し気な声を聞いて少しだけ信じる気になったのかドナはようやく頭を縦に振った。


「お話してくれるんだ、ありがとう」


 エマはそう言ったのちに言う。


「入ってきて」


 その言葉と共にドナの視線は入り口の方へと注がれる、そしてそこから現れたのは――。


「……お邪魔します」


 先ほどドナとひと悶着をおこしたアマンダ本人であった。


「……んっ!」


 その姿を見た途端、ドナの様子が急変する。

 明らかにアマンダの事を忌避したような雰囲気を体から出しまくり、顔もそちらへと一切向けようともしない。

 アマンダの事が嫌いという意思表示が全身から放たれている。


「やっぱり……」


 そんなドナの様子を見たアマンダはエマに向けて小さくそう言うと部屋を出て行こうとした。

 だがエマはそんなアマンダの手を掴んで耳元でそっと声を掛ける。


「大丈夫、さっき言ったとおりにやってごらん」

「……うん」


 そう言われたアマンダは意を決したかのように言った。


「ドナちゃん、私あなたの事がすき」

「ふぇ?」


 全く予想外の事を言われたドナは警戒していたような空気を緩ませて疑問たっぷりの表情でアマンダの方を見た。


「私とお友達になってください」

「なんで……?」


 混乱のさなか、ドナは自然とその言葉を漏らしていた。

 先ほどまでは絶対に話さないと言わんばかりにそっぽを向いていたのに今はもう顔を見て話せるようになっている。

 アマンダもドナもどちらかが歩み寄れっているのにそれを跳ね除けるような子ではないのだ。


「いっつも、意地悪するの、に……」

「意地悪するのはドナちゃんの方でしょ?」

「なん、で? 私何も……」

「私が声かけても無視してる」

「そ、それは……その、怖くて」

「私が怖いの?」

「だ、だって……背中の、それ……当たったら痛そう……」

「何もしないのに叩くわけないでしょ!」

「あぅ、ご、めんなさい」

「じゃあこれからはちゃんと話してくれる?」

「う、うん」


 仲直り成立である。


「(ふふ、良かった)」


 こうしてエマは初めて自分一人で子供たちのトラブルを解決することに成功したのであった。


 その一方でエマは子供たちの間では「優しい人」という認識だったのだが「優しいけど怒ると怖い人」という印象が新しく広まる事となったのだが。

 とはいえエマは子供たちの中で確実に威厳ある、信頼できる存在として定着し始めていたと言えるのであった。




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