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[中学生]  作者: LEE
3/3

第三話『おしゃべり』

  「ねぇ。何してーんの?」


   菜々美はある一人の女子の後ろから、ひょいっと首を出した。


  「あ、菜々美ちゃん。同じクラスだったんだね!ヨロシク」


   ニッコリ笑いながら振り向いてくれたのは、去年隣のクラスだった


   春咲沙代子(はるさき さよこ)。細身で可愛らしい女の子だ。


  「うん。ヨロシクね☆」

  

   何とか輪の中に入ってこれた菜々美。

   沙代子の優しさが、菜々美はとてもうれしかった。


   菜々美はぐるりと、女子の輪を見回す。


   菜々美の知っているメンバーは・・・


    野々宮明美(ののみやあけみ) 

    石塚麻子(いしづかまこ)


     だった・・・。


   知らない子が一人。


    「ねぇ。名前、なんていうの?」

   菜々美はその子に声をかけた。


    「えぅううえ゛っ!!?」


    「!!?」


   何この子・・・!!?

   普通に声かけただけなのに・・・!?

   

    そう、菜々美は本当に普通〜〜〜に、声をかけただけなのだ。

    なのに・・彼女は普通ではない声を返した。


    「あ、えと・・・ごめんね・・!!あの、わたし・・イキナリ声かけられる

     とビックリしちゃうんだ・・!!」


    ああーーー・・なーる・・ほど・・


    ま、こーいう子も・・マレにいるよね・・たぶん。



    「で、名前は?」


    「・・・篠本愛理(ささもとあいり)・・よろしくね」


    愛理は少し照れくさそうに、微笑みながらそういった。


    「うん。ヨロシクね」


    菜々美も微笑み返した。

   

    「お。菜々美ちゃん。おひさ〜〜」

    

    明美が手をひらひら振った。

   

    明美と麻子とは、小学校が一緒。

    でもクラスは時々一緒になるだけで、あまり話したことがなかった。


    「お〜。菜々美ちゃん。」


    麻子が隣にきた。


    麻子は三年生に姉がいて、その姉はバレー部のレギュラー。

    

     

    髪が長く、まっすぐ。

    ストレートパーマをかけているのだろう。

    ギャル要素を持つ麻子は、近寄りがたくて菜々美はあまり関わりたくないタイプだった。



    「麻子ちゃんと明美ちゃんも同じクラスだったんだ・・よろしくね」


    少し、作った笑顔で・・・菜々美は微笑んだ。


    

      ―――ゴンッ


    え?



    何、今の。

    なんか麻子ちゃんのほうから聞こえたけど・・・?


    

    「いっっった〜〜〜〜〜ぁ!!!」


    「どした!!麻子ちゃん!!」


    みんな一斉に麻子を見た。


  

    「あっ!ワっリぃ。なんかブタみたいなのがつっ立ってるのかと思ってたぜ。人間だったのかよ〜〜」


    「・・・な、内藤!!!」



    ほうきを持って立っていたのは、切れ長の眼をしていた黒髪の男子。

    去年クラスが違った内藤健也(ないとうかつや)

    ケラケラと麻子を見て笑っている。


    「内藤!!あんたね、どーいうつもり!?」


    追いかけっこが始まった。

    だか・・・内藤は足がもの凄く速かった。

    そんな内藤に、麻子が追い付けるワケがない。


    「へっ!じゃーな!!」


    内藤は風を切り、去って行った・・・


    「こ、こんの野郎!!」


    麻子は地面を強く蹴ったのであった……



    





    「ああ〜〜〜〜、もう!!イラつく!!」


    ワシっと前髪を握る麻子。

    休み時間。さっきの内藤の態度について、菜々美、明美、沙代子、愛理は…廊下で話し合っていた。

    

    「ま、男子ってあんなもんでしょ。」

 

    冷静な明美は、そっけなく答えた。

 

    「だぁって〜〜〜〜ぇ」


    顔をゆがませる麻子。

    口をへの字にする。

  

    「明美はあーいう事されないからいいよね。」


    「あぁ、まあね」


    クールで美人な明美は・・・当然モテる。

    男子に嫌がらせなど、一度もされたことがなかった。

    そして・・・嫌がらせされない理由がもう一つ。


    「あんた、金持ちだし。」


    麻子は付け足した。


    そう、明美は世界的有名なブランド…【NONOMIYA】の社長令嬢なのだ。

    なぜ、そんな金持ちの明美がこんな…庶民的な学校に通っているのかというと、理由があるらしいのだが…その理由とは、明美も知らなかった。

    明美の父が、市に…いや、県に…莫大な資金を寄付している………



     




      と、いうようなことはなく―――



    普通に通っているのだが、明美の父を恐れ…学校は明美に従っている。

   

    「ほんといいよね〜〜〜。お嬢様は!!」

    

    ドンっと麻子は、明美の肩を叩いた。

    明美は何も言わなかった。


   

    「あ、あの………」


    愛理が口を開いた。


    「この学校ってさ、県の“モデル中学校”なんだよね」


    「あ、そうそう。」


    沙代子がうんうんと頷いた。


    「あー、それ知ってる。てか、校長が入学式ん時言ってたし。」


    菜々美も沙代このほうを向き、言った。

    

    “モデル中学校”とは、県で一番…理想的な中学校のことである。

    

    この、笠原中学校は県の代表モデル中学校。

    金持ちが通うような学校にする資金だって、たんまりあるのだが…

    モデルの質が落ちる。あくまでも庶民派でいこう!!というPTA会長や市長の方針で、この、庶民っぽい校舎、雰囲気になったワケである。

    

    県の代表として、この笠原中は日本でもトップクラスの名門校。

    金持ちたちにとって、この中学校を卒業することは素晴らしい“肩書き”になるわけである。



    イメージアップのため、庶民でも入学できる中学校になっている。

    

    が、その肩書きを狙った金持達も…数人いるようだ。

    

    「かったるいよね〜。うちら、偶然笠原市に生まれてこの学校に通うだけなのに。“モデル中学校にふさわしい行動をしろ”だって。ケッ!!」


    麻子はかったるーい、と言いながら、手で顔を煽いだ。



    「で、でも…すごいよね…日本でトップクラスの名門校だもん」

    

    「ま、そーなのかねぇ」


    

     この中学校で何が起きるのか………


       この時…それを知る者は……


         いなかった。   

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