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第33話

オーシュ王国の首都である王都アスレイ。モンスターの多いオーシュ王国では大都市はもちろん小さな村であっても周りを囲む外壁があるのが普通であるが、王都アスレイの外壁は国中でもトップクラスの堅牢さを誇る。王城を造る一品モノの魔鋼レンガをここでも丹念に積み上げた上で結合と固定化の魔法を重ね掛けし、防御力強化や各種属性耐性を備えている他、反撃の攻撃魔法まで刻まれているという具合だ。その堅牢さと、竜骨霊道の真上にあるという理由で竜の鱗のような彫刻が掘られていること、そして王城を中央に据える都市であることから、都市を囲む壁であるにも関わらず、その外壁は竜鱗城壁、あるいは略して城壁と呼ばれていた。

 そんな城壁の南門、通称、南竜眼城門、あるいは南城門は普段から王都にやってくる人々、巡回していた騎士で賑わっている場所ではある。しかし、今日はいつもとは違う異様な雰囲気に包まれていた。

 辺りを見回してみればいつもは護衛竜車がごった返す街道も今日はまばらで、他のルートから入っているようだ。その代わりとでもいうように、荷物を括り付けられた馬や比較的温厚なモンスターたち、雇われた地竜や飛竜が一所にまとめられ、手に武器を持ち、鎧を付けた者たちが列を作って並んでいた。そんな彼らを誘うように食べ物や薬を売る露店まで出ている。

 上空から見てみれば、様々な体格、武器を持っているにも関わらず、彼らが綺麗な長方形を作るように集まっているのが分かっただろう。そんな彼らが見つめている先には大きなステージが建てられていて、その壇上には護衛を引き連れて、王冠を乗せ、マントを羽織った大柄な男が登っていくところであった。


「皆の者、静粛にせよ!!」


 大剣を背負った護衛の騎士が声を上げると、ざわついていた面々は水を打ったように静かになった。それを見た騎士は、階段を登り終えた男に場所を譲った。


「・・・・・・・・」


 大柄な男の第一印象は「いかつい」の一言だろう。顔は整っているのだが、強面だ。そして、その強面には年季による皺が刻まれ始めてはいたが、目から感じられる活力にはまるで年波を感じさせず、銀髪の上に乗った王冠の重さなどまるで気にしていないようだ。さらに、その体は隣に並ぶ身の丈ほどの大剣を軽々と背負った騎士に負けないくらいの背丈とがっしりとした筋肉で覆われており、近づいてみれば凄まじい威圧感を感じることだろう。


「まずは諸君、この場に集ってくれたことに感謝する」


 外観通り、男の声は低く重いが、不思議とその場にいた者たちの耳によく響いた。


「今、この国が危機に瀕しているのは諸君らもよく理解してくれていると思う。我々には、その危機を払うための力が必要だ。 だが、力というのはそれにふさわしい者にこそ振るわれなければならない」


 男の演説は続き、それを聞く者たちは一言もしゃべらない。


「力そのものは私が与えることができるが、それを行える者として、その担い手を見極める義務がある。そして、そのための試練を諸君らに課す。 試練は過酷なものになるであろうが、諸君らの大切なモノを守るためにも、多くの者がそれを乗り越えることを、私は心から祈っている」


 男はそこで大きく息を吸い込んだ。


「これより、オーシュ王国19代国王、オズワルド・アシュト・オーシュの名において、第231回騎士選抜試験を開催する!!」


 銀髪を震わせた王の宣言がなされると、朝の城門に大きな拍手と歓声がこだました。




「ふぅ~、筆記試験は、まあ受かるよね」


 城門から少し離れた場所に設置された仮設テントにて筆記試験を終えた僕は伸びをしていた。

 国王の威厳溢れる演説の後すぐに行われた筆記試験は、終了後にすぐに現役騎士や文官たちに採点され、結果が発表された。やけに早いのはなんらかの魔道具を使っているからなのだろう。結果はもちろん合格で満点に近い点数だった。これなら魔装騎士のボーダーラインにも余裕で達しているはずだ。僕はあの厳格な父上から普通の子が学校に通い始める歳になる前から散々しごかれていたし、当然の結果と言える。というか、元々この筆記試験は最低限の教養を試すものだから周りにいる他の受験者もほとんど受かっているみたいだ。

 ちなみに、この国の教育は各領地に国が支援金を出して建てた学校にて行われる。ただし、近年では教育を行う側の人材については、王都と各々の領地の交通状況の悪化から自前で用意しなければならなくなっていて、我がシークラント領ではヘレナさんが主に教え、たまに父上が担当していたらしい。僕は教養については家庭教師と化した父上からしか教わらず、学校で教わったのはヘレナさんからの基礎薬学だけだったが、どちらの評判が良かったかについては推して知るべしだ。ともかく、この試験を受けている大多数はそのような学校で教育を受けた者だろう。


「さて、それじゃあ・・・・」


 リーゼロッテを待たせていることだし、時間も惜しいから早く行こう。

 そう思って、歩き出そうとしたしたときだ・・・・突然、何かが襲い掛かってくる空気の流れ、気配を感じた。


「!?」


 僕はとっさに魔力を体にみなぎらせ、勢いよく振り向く。

 ガキンという音がして、僕は持っていた盾で、後頭部目がけて伸ばされた拳を受け止めていた。


「くっ!?」


 何だ!? この拳、すごく重い。まるで鈍器だ。こんなのが当たってたら気絶程度では済まなかっただろう。試験開始早々このような蛮行をしでかしてくるとは、すぐに近くの騎士に通報してやる。いや、その前に文句の一つでも言ってやると思い、盾をどけようとすると・・・


「よう、デュオ!! 元気だったか!!」


 この蛮行の下手人は、思いっきり知っている人だった。というか、近衛騎士だった。


「えっ!?」


 そこにいたのは僕の盾の師匠、何度もぶっ飛ばされたりしてお世話になったレオル・バーンライトさんであった。


「レ、レオルさん!?」

「おう、レオルだぜ。 久しぶりだな!!」


 レオルさんは、僕の記憶の通り、屈託のない笑顔であいさつをしてきた。


「いきなり何するんですか!? 今の当たってたらただじゃすまなかったですよね?」

「ん、そうだな。もろに当たってたら頭が吹っ飛んでたかもな」

「そんな威力の攻撃を不意打ちでかまさないでくださいよ!!」


 上層部の人からの攻撃でダウンして辞退するとか絶対に嫌だ。


「いいじゃねぇか、ちゃんと防御できたんだから。 それよりお前ちょっと薄情なんじゃねぇの? さっきのおっさんのスピーチのときだって近くにいたし、そもそも王都に来てんならオレんとこ寄れよな。宿だってオレん家貸してやったのに」

「あ、それはごめんなさい・・・近衛騎士になったって聞いて忙しいんじゃないかと思って・・・というか、おっさんってまさか陛下のことですか!? いくらなんでも不敬ですよ!?」

「ったく、お前は相変わらずマジメだな、そんなん気にしなくても大丈夫だって。 オレ、いつもあの人のこと面と向かっておっさんって言ってるけど特になんも言われねぇぞ」

「それは陛下が寛大なだけだと思います・・・・」


 会って早々に死ぬかもしれない攻撃を打ち込んでくるわ、陛下をおっさん扱いするわ・・・・本当に破天荒な人だな。まあ、それでこそレオルさんらしいのだが。


「それで、四騎士に数えられる、近衛騎士、「灼鋼」のレオル殿が一体どんなご用事ですか?」

「おいおい、その痒い名前で呼ぶなって、わざとやってんだろ」

「まさかまさか、強さの異名としてつけられた名前なんだからむしろ光栄でしょう?」


 これはいきなり殴ってきたことへのささやかな復讐だ。レオルさんなら堅苦しい言葉遣いや二つ名なんてものはこそばゆいと思うだろう。


「お前、意外とねちっこいよな・・・・まあいいや、要件だったな。 もちろん弟子への激励と面接だよ、面接」

「へ? 面接? でもまだ討伐試験やってませんけど・・・」


 激励ってもしかしてさっきの攻撃か? いや、それよりも、面接?

 騎士試験では受験者を国の騎士として取り立てるのだから当然腕っぷしだけでなく中身も試される。そして、その中身を見極めるための騎士との面接も確かに行われる。ただし、いちいち一人一人面接をしていたらとんでもなく労力がかかりすぎるので、討伐試験を終えた後に合格者のみに絞って王城で行われるのだ。まあ、危険な討伐試験を終えて受かった者で面接に落ちた者はいないらしいけど。


「ん、まあ、お前なら普通にやってりゃ確実に受かるだろうからな。さっきのヤツだって、他の連中にやってたらもろに当たるヤツばっかだったろうし、鈍ってはいねえみたいだな?」

「そりゃあ、まあ・・・僕にとっては魔装騎士になるのは夢ですから」


 僕の返事に、レオルさんは「ククク」と嬉しそうに笑った。


「うん、やっぱお前いい意味で変わってねぇよ。 っと、そうそう面接だ面接・・・・・お前、王国に反逆する気とかある?」


 そして、いきなり爆弾を投げ込んできた。


「ありませんよ!? 何のっけからとんでもない質問してるんですか!?」

「いや、だって面接マニュアルにそんな感じのことがダラダラとまどろっこしく書いてあったからさぁ、ストレートに聞きゃあいいんじゃねって思って・・・それじゃあ、お前、前科とかは・・・・ないよな。 よし、終わり」

「終わりですか!? こう、もうちょっと僕について調べる気はないんですか!? いや、シークラントで犯罪なんかしたら父上と母さんに殺されますけど!!」


 シークラントでは父上の手腕なのか、元々そういう気質なのか、ほとんど犯罪が起こらない。酔っぱらったおっさんたちが夜中に騒ぐくらいはあるが、殺人やら強盗やらが起きたことはない。


「だって、オレお前のことはよく知ってるしら面接なんざやるまでもないし。 というか、お前のとこ来たのは、ぶっちゃけオレが面接するノルマ減らしたいからだし・・・」

「そんな職務怠慢な本音を晒さないでくださいよ・・・・」


 よくこの人が近衛騎士になれたな。いや、いい人なのだけれども。


「とりあえず、お前のことはちょっと堅物だけど善良な魔装騎士志望って報告しとくわ」

「堅物は余計です!! 僕は普通ですよ!!」


 というかレオルさんが型破りなだけだ。


「型破りで結構!! 没個性的な生き方なんざごめんだね!! んじゃ、そういうわけでオレの用事は終わりだ。さっきも言ったけど、お前ならまず大丈夫だからあんまり気張りすぎんなよ?」

「・・・・今までので十分力が抜けましたよ。でも、ありがとうございます」


 僕は持っていた盾を丁寧に床に置いてからレオルさんに頭を下げた。


「おう!! って、お前、その盾あのときのか? 前シークラントに行ったときも思ったけど、よく今まで持ってんなぁ」


 レオルさんは僕が置いた盾をしげしげと眺めた。この盾は初めて音魔法をまともに使えるようになった日の翌日、レオルさんからもらったモノだ。初めてのゴブリン討伐の時といい、リーゼロッテの時といい、父上からもらった剣よりも付き合いが長い相棒である。もらったときはただの鉄でできた盾だったが、今は魔鋼で表面を覆い補強してある。


「お前、その盾がダメになりそうだからって無茶するとかベタなことすんじゃねえぞ? 女からの贈り物ならともかく、野郎からもらった盾の盾になるとか笑えねぇからな?」

「いくらなんでもそんなことしませんよ・・・」


 この盾は大事なモノであるのは間違いないが、それでも盾は盾だ。ちゃんとした用途でしか使わないつもりである。しかし・・・


「昨日の宝珠は分かんないけど・・・」


 ピンチになったらためらわないとは思うが、それでも昨日シルフィさんからもらった宝珠は高性能故に使いどころに悩むかもしれない。レオルさんのいうように女のひとからの贈り物だし・・・まあ、使うような事態にならないのが一番だが。


「・・・・・・」

「ん? どうしました?」


 そんなことを考えていたら、レオルさんがじっと僕の顔を見ていた。なんだかとても真剣な表情で、思わず居住まいを正してしまう。


「デュオ、お前、所持品の検査はもうやったか?」

「いえ、まだですけど・・・」


 ちょうど、今から受付のところに行こうとしていたので、まだ見てもらっていない。ちなみに、騎獣の装備品などはこの会場に来たときに見てもらった。人間と違って、彼らの検査はすぐに終わるからだそうだ。


「そうか・・・・お前、今すぐここで持ってるもん全部だせ。 オレが代わりに検査してやる・・・」

「は、はい・・」


 なんだ? もしかして、僕の持っている宝珠に気づいたのか? いや、大丈夫だ。僕は何も悪いことはしていないのだから。それに、知らない騎士の人よりもレオルさんなら安心できるし、むしろ好都合だ。

 僕はもう一度テントの中に戻ると、鞄をひっくり返して机の上に持っているモノを出した。

 父上からもらった魔鋼製の剣に、皮鎧、レオルさんからもらった盾、トニルさんから買ったトラップにシルフィさんから頂いた宝珠・・・・その他、家出の前に持ち込んだモノもすべてだ。


「・・・・これで全部か?」

「えっと、はい・・・」

「本当にか? 嘘ついても探知の魔道具あるからな?」

「う、嘘なんてついてませんよ」


 なんだ、これ? 道具探知の魔道具まで出してくるなんて、まるで小説に出てくる取り調べの現場みたいじゃないか。いや、それくらい厳重にやるべきことなのだろうけども。


「・・・・・・・」


 レオルさんは僕が出したモノを食い入るような視線で見ていた。その視線は僕の武具からトニルさんのトラップに移り、シルフィさんの宝珠に移った・・・気づかれたか。


「これか・・・」

「あ、あの、レオルさん、それは・・・・」

「これだな?」

「いや、そうなんですけど、聞いてください」


 店で買ったモノではないが、断じて非合法な手段で手に入れたモノではない。それはきちんといわなくてはならない。


「・・・か?」

「へ? なんですか?」


 そう思っていたらレオルさんが何かつぶやいた。本当に小さな声の上に変にくぐもっていて聞こえなかった。


「・・・美人だったか?」

「は?」


 何言ってんだこの人。


「しらばっくれてんじゃねぇ!! テメェにプレゼントを渡した女のことだろうがぁああああ!!!」

「何言ってるんですか、アンタは!?」


 他に気にすることがあるだろう!? というか、気になっていたのはそこだったのか!?


「オラ、金と権力はあっても出会いのない近衛騎士様が聞いてんだろうが、美人なのか? 可愛い系なのか? それとも中身がいい子なのか? さっさと答えろよ」

「えっと、一応美人で・・中身も・・・・・って、そんなくだらないことに権力使わないでください!!」


 とんでもない気迫に押されてつい答えてしまった。


「くだらなくねぇよ!! オレにとっては死活問題なんだよ!! っていうか、美人の上に中身もよくて、こんな高級品贈れる女とかお前超勝ち組じゃん!! オレにもそのモテオーラ分けろよぉぉぉぉ!!」

「そんなオーラ持ってません!! 大体それを言うなら、24歳で近衛騎士のレオルさんの方がよっぽど勝ち組ですからね!? 給料だってたくさんもらえるんだし、女のひとには困らないでしょう!?」

「金で寄ってくる女なんぞ興味ねぇよ!! オレは中身重視なの!! オーラ分けんの無理なら誰か紹介してくれよぉぉぉ!!」

「だから、それだってレオルさんの方が向いてます・・・・っていうか、僕とシルフィさんはそんな仲じゃないですから!! それよりも、僕がそんな高級品の宝珠持ってるのおかしいと思わないんですか!?どこかから盗んだとか!!」

「シルフィ!? シルフィっていうのか!! 名前は可愛い系じゃねぇか!! それに、モテるやつは決まってそういうセリフを言うんだよ、爆発しろこの野郎!! 後、このところこんな質の良い魔道具の盗難なんざ起きてないし、お前が盗みやるわけないし、女からもらった以外ありえないだろうが!!・・・とにかく、どうやってその子落とした!? どうやってたらしこんだ!? 教えてくださいお願いします!!」

「知りませんよ、そんなの!? 後、近衛騎士が僕なんかに頭下げるのは止めてください!!」


 まったく、本当にどうしてこうなった。

 周りを見てみれば当然と言うべきかギャラリーが集まってきている。本当にどうすりゃいいんだ、コレ。


「何をやっているんだ、馬鹿者」

「ンゴッ!?」

「え!?」


 僕が軽く途方に暮れていると、突然、何者かがレオルさんの頭をはたいた。見かけによらず凄まじい威力の張り手を受けたレオルさんの体がお辞儀の体勢から地面に沈んで・・・いや、沈む寸前で耐えて、逆に片足で蹴りを放ったが・・・・その足は頑丈そうな籠手でつかまれていた。

 

「痛てぇな!? なにすんだよグラン!?」

「グ、グラン殿!?」


 レオルさんの反撃の蹴りをつかんでいたのは大剣を背負った偉丈夫、陛下の護衛にして僕にとっての命の恩人であるグラン殿だった。


「それはこっちのセリフだ」


 僕にとっては本日2度目の遭遇である。1度目は朝の陛下の演説の前で、ざわめく一同を静めるために声をあげていた。そのとき、僕は久方ぶりに恩人にして憧れの人を前にして、密かに感動していたのだが・・・・一方でレオルさんが「あ~、かったりい」と言いそうなくらい眠そうな顔をしていたので、せっかく沸き立った心は急速に冷めていった。表面上は取り繕っていたようだが、それなりに長い付き合いだった僕には分かってしまうのが辛いところである。


「っていうか、この姿勢きついから早く放せよ!!」

「・・・・放してやるからまずは落ち着け」


 グラン殿が手を放すと、逆さ釣りみたいになっていたレオルさんは素早く宙返りをして、僕の隣に立った。


「それで? 突然陛下の護衛から抜けたと思ったら、受験者相手に何をしているんだ、貴様は」

「いや、コイツ、俺の弟子でな? まず間違いなく騎士になれるだろうけど、一応励ましに行こうって思ってさ。っていうか、あのおっさん、俺らが守る必要もないくらい強いじゃん?」


 グラン殿に一喝されてレオルさんも落ち着いたようだ。というか、陛下ってそんなに強いのか・・


「それでも護衛するのが我々の存在意義だろうが。あまり私の面子を潰してくれるな、お前を取り立てた私まで妙な目で見られる・・・・・っと、同僚が失礼したな。私はグラン、グラン・ヘイラーだ。 なにかおかしな真似はされなかったか?」

「ぼ、僕、いえ、私はデュアルディオ・フォン・シークラントです!! 特に何もありませんでした!!」


 グラン殿が僕の目の前にいる・・・・なんだか緊張してうまく舌が回らない。

 ・・・あと、不意打ちやら言葉遣いやら、レオルさんについては、稽古のときにいろいろ今回よりもきわどいのがよくあったので本当に気にしてはいない。女性関係の話にまでなったのは今日が初めてだが・・・


「おいおい、オレを何だと思ってんだよ? それに、ソイツはオレの弟子だって言ってんだろ、これから試験に挑む弟子相手に本気で妙な真似はしねぇよ。 んで、生半可なことは、コイツなら屁でもねえ」

「衆人環視の中で頭を下げられるのはそれなりに堪えると思うのだがな・・・・それにしても、お前の弟子、そして、シークラントということは・・・・」

「ああ、前言ったろ? お前が10年前に助けたヤツだよ。 オレはデュオって呼んでるけどな」

「ふむ、そうだったか。 あの時スケルトンに襲われていた・・・・デュオ君、君はあれから強くなったのだな」

「そ、そんな・・・・僕が生きてるのはグラン殿のおかげですし、僕が強くなれたのはジョージさんやレオルさんのおかげですし・・・・」


 グラン殿が僕を見つつそう言ってくるが、正直いっぱいいっぱいだ。


「ずいぶん謙虚な子だな・・・・本当にお前の弟子か? いや、そのジョージという方が人格者なのか」

「どういう意味だよ、ソレ・・・後、ジョージの爺さんも結構ちゃらんぽらんな感じだぞ。 多分、コイツの親父さんのおかげじゃねぇの?」

「父親・・・シークラント伯か。なるほどな・・・・っと、ずいぶん時間を浪費している。陛下の護衛はイゾルデに任せてあるが、いつまでもここにいるわけには行くまい。 デュオ君もこの馬鹿のせいで時間を取らせたな、君が試験に合格することを期待している」

「うげ、あのまな板がいんのかよ、アイツいちいち突っかかってきて苦手なんだよな・・・・あ、そうだ、デュオ、オレも熱くなっちまって悪かったよ。 とりあえず、お前の所持品検査は問題なかったってことにしとくから、試験頑張れよ!!」

「は、はい!! 頑張ります!!」


 二人はそう言って手を振って去っていった。


「き、緊張したぁ・・・・」


 レオルさんとはこれまでもたくさん話ていたから特に気負うことはなかったが、まさかこんなところでグラン殿と話せるとは。


「と、とにかく頑張ろう・・・」


 グラン殿は社交辞令かもしれないけど、あんな風に言われてしまっては頑張らずにはいられない。それに、シルフィさんだけでなく、おこがましくも師匠と言ってもいいレオルさんだって応援してくれているのだ。


「よし、行こう!!」


 僕はまだチラチラとこちらを見てくる野次馬を務めて気にしないようにしつつ、荷物をまとめてテントの外に出るのだった。


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