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第28話

「リーゼ、今日も頼むよ」

「キュルルル」


 そう言って、今日もデュオ様はあたしのところにやって来た。やはり昨日の予想は正しかったようで、たっぷりと睡眠をとっていたあたしは間髪入れずに返事をする。デュオ様から申し訳なく思う気持ちが伝わってくるけど、そんなに気を遣わないでいい、いや、むしろどんどん頼ってくれていいのに。


「明日から試験だけど、鬼人の森で確保したのは一昨日でしょ? 一応見ておこうと思って」


 デュオ様はそう言って、あたしがいる厩舎の戸を開ける。

 デュオ様はとってもマジメな方だ。きっと、大人しくするとか何とか言っても、体を動かすこと、体を鍛えることが止められないのだろう。他でもない、デュオ様の故郷を守るために。


「グォォォウ」


 ならば、従者たるあたしはその意志を貫く手助けをするのみ。デュオ様のお役に立つ以外、あたしが望むものはない。・・・・・いや、ちょっと、たまにでいいから労いの言葉だとかスキンシップがあればもう言うことはないのだけれど。


「そっか、ありがとう。 本当にできた竜だよ」


 思うそばから、デュオ様はそう口に出しながら、あたしの頭を撫でる。

 ああ、そんな簡単にご褒美をくれたらご褒美のありがたみが・・・・ちっとも薄れないし、心は今にもあたしと同じく翼を生やして飛んでいきそうなくらい喜びで満ちているが、同時に申し訳なくも思ってしまう。これは、この褒美に値する働きを見せねばなるまい。


「グゥオオオオオオ!!」


 気合を入れるため、あたしは吠えた。なんか周りの有象無象の竜どもがうろたえているが、知ったことではない。


「そんなに気張らなくても・・・いつも通りでいいんだよ」

「キュウ・・」


 デュオ様にそう言われては仕方ない。あたしは声を小さくした。


「それにしても、今日も今朝から元気だね。なにかいいことあった?」

「キュルル!!」

「そっか、いいことがあったのか。 僕も嬉しいよ」


 嬉しいこと、朝からデュオ様に会えたことに決まっているが、そこまでは言わない。やっぱり面と向かって言うのは少し恥ずかしいものがある。あたしにはデュオ様の思っていることが分かるが、あたしの言葉はデュオ様には伝わらない。そのはずだが、デュオ様はなんとなくあたしの仕草や声で微妙なニュアンスまで把握しているような時がある。とっても光栄なことだが、うかつなことは言えない。


「よし、それじゃあ鬼人の森の前に行ったところまでお願い」

「グォウ!」


 デュオ様とあたしは王都の水色の空に舞った。






 ゴウゴウと風の渦巻く音がする。


「後、もうちょっとかな」

「キュルル」


 今あたしたちが飛んでいるのは王都と鬼人の森の間にある草原の上だ。王都を出て一時間と少しくらい経っていた。空の上というのは地上に比べて気温が低い。一応風魔法で外気と遮断しているが、デュオ様は大丈夫だろうか。


「キュルルルル?」

「ん? ああ、大丈夫だよ。 リーゼが魔法でカバーしてくれてるし、それなりに厚着してるから」


 よかった、「声」からも伝わってくるが、どうやら本当に寒くはないらしい。もし寒いようならブレスを出そうかと思っていたのだが。


「そういえばさ、リーゼ」

「キュル?」


 そんなことを考えていたら、突然デュオ様が話し始めた。なんだか嬉しそうな感情も伝わってくる。


「昨日の夜、シルフィさんとまた会ったんだけ・・・・ちょっ、速い、速いって!!」

「グルアアアアアアア!!」


 まったく、デュオ様はまったく!!

 これからモンスターのはびこる森に行こうというのにそんな浮ついたことを考えるとは!!

 あたしは全速力を出して森を目指す。早くモンスターと戦って、その浮ついた思考を吹き飛ばさなければ!そう、あたしはデュオ様の従者だが、イエスマンになるつもりは毛頭ない。ダメなときはダメと言わなければ、どんな主も腐ってしまうだろう。


「ストップ、ホントストップ!! こんなんじゃ酔っちゃうよ!!」

「キュゥゥゥ」


 そう言われては仕方ない。あたしはスピードを落とした。

 さすがに、これからモンスターと戦うのに、デュオ様の健康を害するわけにはいかない。帰りだったら曲芸飛行も交えて完全にそんな浮ついたことは忘れさせたのだが。


「ふぅ、びっくりした・・・えっと、なんだったかな・・・そうそう、シルフィさんのことだ」

「・・・・チッ」


 デュオ様からはやはり嬉しそうな感情が伝わってくる。中々便利なデュオ様の体質だが、こんなときは恨めしい。あたしは口の中だけで小さく舌打ちする。

 まだ覚えていたのか、夜中に夢の中に出てくるという怪しげな雌のことを。仕方ない、非常に業腹だが、主の話に付き合うのも従者の務め、今日でてくるであろうモンスターに思いっきりこの苛立ちをぶつけてやろう。


「昨日はね、リーゼと会ったときのことを話したんだよ」

「キュ?」


 そんな風に苛立っていたところに、あたしの名前が出てきた。あたしとデュオ様が会った、あのときの話、あたしにとって一生涯忘れないだろう宝物。


「そしたらさ、シルフィさん、僕のことが羨ましいってさ。 まあさすがにリーゼは渡せないって言っておいたけどね」

「・・・・・・」

「うわっ!? ちょっと、落ちてる落ちてる!?」

「キュルルル」


 危ない危ない、嬉しすぎて思わず動きが止まってしまった。慌てて体勢を立て直す。

 うん、嬉しい。すごく嬉しい。嬉しいのだが、どうしよう、いきなりすぎて何も返せない。心の中が熱いなにかで満たされていく感覚がする。そして、同時に、そのシルフィとかいう雌に少し同情もした。なんとなく、シルフィの意図したこととデュオ様の言ってることの間に齟齬があるような気がする。


「それでね、シルフィさんが最後に面白いことを聞いてきたんだ。 リーゼが人間に化けないかって」

「!!!!?」

「うわわっ!? ちょっとどうしたの!? 調子悪いんなら今日は帰ろうか!?」

「キュルルルル!!」


 ちくしょう、中々鋭いじゃないか、シルフィとやら!! 危うく本当に落ちるところだった。


「・・・・とにかく、そんなことを言ってきてさ。 いやぁ、初めてシルフィさんに会ったときも思ったけど、少し妄想癖があるのかな・・・・ちょっと心配になってきたよ」

「・・・・・・」


 あたしもいろいろと心配だ。デュオ様にばれないか、とか、シルフィとかいう雌にうつつを抜かしてポカをやらかさないかとか。


「でも、リーゼが人間だったら、それもいいかもね。僕、君と人間の言葉で話してみたいよ。 それに、リーゼだったらかなり可愛いと思うし」


 デュオ様は笑いながらそう言った。最後の方は冗談のようだったが・・・


「・・・・キュル」


 ズキリと心が痛んだ。人間の言葉で話すのは話そうと思えばいくらでも話すことができる。人の姿になろうと思えば、一生その姿でいることもできる。実際、何度そうしてみようかと思ったか分からない。

 しかし、それはできないのだ。あたしは、竜だからこそ、今のようにデュオ様のお役に立てている。人の姿でもそんじょそこらのモンスター程度なら余裕であしらえるが、それではデュオ様を遠くに運ぶことはできないのだ。なにより・・・


「キュルルル・・・」

「? どうしたの? 本当にどこか体の調子が悪いの?」

「キュルル!!」


 デュオ様が心配そうに聞いてきたので、あたしははっきりと否定した。体の調子は悪くない。悪いのは、あたしの心の調子だ。

 あたしは、デュオ様に人の姿になれることを伝えてはならない。それは、きっとよくないことが起きる種になる。


「キュウ・・・・・」


 あたしは、人の姿になれる竜の頂点にある竜、魔竜なのだから。しかも、その魔竜の中でもあたしは変わり種だ。

 あたしは、あのときのことを思い出していた。






 デュオがリーゼロッテを連れて帰り、玄関先で緊急会議を行った日の夜のことだ。

 昼間はカズミがリーゼロッテを洗ったり、アインシュがデュオが使うための鞍を発注したり、ジョージとデュオでリーゼロッテが住むための小屋を建てたり、ヘレナがリーゼロッテの傷を診たりと忙しく過ごしていた。しかし、バーク夫妻は夜の闇の中、部屋で静かにそのときを待っていた。


「二人とも、用意はいいか?」

「へい、いつでも行けます」

「アタシも同じく」

「そうか」


 唐突に部屋の扉が開き、夫妻の主であるアインシュが姿を現した。

 アインシュは二人の恰好を見て、その言葉に偽りがないと判断し、背を向けて部屋を出た。夫妻もまた、己が主人の後に続く。夫妻は、二人とも普段は身に着けない物々しい装備を身に着けていた。ジョージは闇の中でもかすかに輝くマントを身に着け、ヘレナは治癒師が身に着けるような、他国の神官が着る法衣のような服を着ていた。これも、夜の中、はっきりわかるくらいの光を放っている。


「「「・・・・・・・」」」


 三人は、一言もしゃべらず庭に出た。今日は満月で、明かりがなくともまわりがよく見えた。ここで、アインシュは無言で風魔法を使った。3人の周りを緩やかに風が渦巻く。これで、音魔法による探査では発見できないだろう。3人が目指すのは、昼間に魔法を使って建てたリーゼロッテの小屋だ。すでに藁やエサ皿などの調達はデュオが済ませてあるようである。少し前まで、デュオがいたらしく、小屋の中には小さな足跡が残っていた。もっとも、そのデュオは母のカズミとともにもう夢の中にいることはアインシュが確認済みだ。


 3人が小屋の扉の前に到着すると、アインシュが代表するかのように扉を開け、中に入った。


「グルルルル・・・」

「こんばんは、リーゼロッテ殿」


 3人がいるのを察知していたのだろう。リーゼロッテは首をもたげて威嚇するかのように唸り声を上げた。

その威嚇をものともしないように、アインシュは挨拶する。バーク夫妻は無言だ。ここで、アインシュはヘレナの方に向き直った。


「さて、ヘレナ、お前の作ったものの内、2番目か3番目に上等なものを出してくれ」

「かしこまりました。ですが、1番質の良いものでなくて、よろしいのですか?」

「ふむ・・・まあ、構わんだろう。竜の回復力ならば、エリクサーは過剰だ。金が勿体ないし、真に使うべきときまで取っておきたい」


 アインシュがそう言うと、ヘレナは法衣の袖に手を入れた。手を抜くと、そこには何かの液体が入った瓶が収まっていた。


「リーゼロッテ殿、こんな夜更けに来た我々を疑う気持ちは分かる。 しかし、我々に貴方を殺すメリットは少ない。 それを踏まえて言うが、これを飲んではくれないか?」

「グルルルル」


 アインズがそう言うも、リーゼロッテは唸ったままだ。一応昼間にヘレナがポーションである程度傷を治したのだが、こちらの言うことを信じる気持ちはないようだった。


「はあ、やはりか」

「やはりって感じですねぇ。・・・・おい、婆さん、ちょっと頼むわ」

「あいあい、深くやりすぎんじゃないよ」


 ジョージはそんなやり取りの後、リーゼロッテの前に出た。不審そうにジョージを見るリーゼロッテの前で、ジョージはマント裏地に手を伸ばす。


「!?」


 リーゼロッテは目を見開く。

 次の瞬間、ジョージの手には一本の剣が握られていた。暗闇の中で透き通った黄色の光を放つ剣は、それが極めて純度の高い魔鋼で作られ、また、非常に強力な土属性強化の術式が刻まれた武具であることを物語っていた。


「・・・・・」


 老人の出した剣を見て、いよいよ警戒レベルを跳ね上げたリーゼロッテは身を起こしていつでも灼熱のブレスを放てるように身構え・・・・


「ほっ!!」


 そこで、ジョージが剣で、自分の手首を切り落とした。小屋の中に鮮血が飛び散り、ベチャッと音を立て老人の手首が落ちる。


「キュ!?」


 リーゼロッテの目が再び驚きで見開かれた。


「婆さん、痛ぇから早く頼む」

「この馬鹿!! 何腕ごとやってんだい!! ああもう、スターリゼーション!!んで、イノスキュレート!!」


 ヘレナはジョージのように何もない空間から青く輝く杖を取り出した。そして、血だまりの中の手首を拾うと、素早く魔法をかけ、老人の傷口にぴったりとくっつけてからもう一度魔法を使う。すると、ジョージの出血が止まり、手首がつながった。


「おい、婆さん、これじゃ意味ないだろ!!」

「やかましい!! 完全には塞がなかったからそれで充分!! ・・・いいかい、リーゼ、よぉく見てるんだよ?」

「キュ、キュル・・・」


 場の空気にやや引いたようなリーゼロッテが、恐る恐るという感じでジョージの傷口に目を向けた。大体がヘレナによって塞がれたようだったが、まだ深い切り傷が残っていた。ヘレナはそこに、先ほどの瓶の中身を数滴たらした。


「ほらよ」

「んごぉ!? 染みる~!!」

「我慢おし、この馬鹿!!」


 瓶からこぼれた滴は青く輝き、ヘレナの杖と法衣も呼応するように輝く。

 ジョージがなにやら叫んでいるが、滴が落ちたところの傷が見る見るうちに塞がっていった。


「分かったかい? これはアタシが作ったポーションさ。 爺にちょっと使っちゃったけど、毒なんかじゃないよ」

「その通り、我々はあなたと話をするためにここに来た。そして、そのための信頼の証として、あなたの傷を治そうというわけだ」

「・・・・・」


 リーゼロッテはまだ疑わしそうな顔でじっとアインシュの顔を見つめていたが、やがて意を決したようにヘレナの方を向いた。


「ヘレナ」

「はい、旦那様。 んじゃ、ちょっと口を開けてくんな」

「・・・キュホっ!?」

「あ~、ほら飲み込んで」

「・・・・!?」


 ヘレナはリーゼロッテの口に目にもとまらぬスピードで手を突っ込むと、瓶の中身をぶちまけた。口の中に薬品の臭いが充満し、せき込みそうになるのをジョージが口を押さえつける。老人の細い腕にも関わらず、凄まじい力だった。


「さて、これで内臓の方はいいとして・・・後は外の傷だね。昼みたいに、坊ちゃんの前だとこの装備やら高級ポーションは使えないからね・・・アド・ヒール」


 ヘレナはそう言いながらリーゼロッテに杖を向けた。杖は青い輝きを放ち、ジョージの剣と同様に、非常に強い水属性の術式が込められているようだった。杖がひときわ強く輝くと、魔法、それも上級クラスの魔法が放たれ、リーゼロッテの傷が瞬く間に癒されていった。

 

「キュルルル・・・・」

「さて、これで我々のことは多少は信頼してくれたかと思う」

「・・・・・」


 傷があった場所をしげしげと眺めていたリーゼロッテにアインシュは話しかけた。リーゼロッテとアインズの目が合った。


「それを前提として言う。あなたの真の姿をみせてはくれないか? こちらの言葉は届いても、あなたの言葉が分からなくては会話にならないのでね」

「!!」


 その言葉を聞いたリーゼロッテは素早く体勢を整えると、アインシュの首目がけて牙をむきだして噛みつこうと・・・


「アイス・コフィン」

「!?」


 目もくらむような青い光がほとばしり、光が消え去った後には首から下を氷に閉じ込められたリーゼロッテがいた。しかし、リーゼロッテはそこで止まらなかった。


「グォォォォォウ!!」


 リーゼロッテが吠えると、その体が赤く輝き、ドロドロと氷の棺が解けていった。


「婆さん、鈍ったか?」

「うるさいね。あんたと違って普段は薬作りくらいしかしてないんだよ」

「グルオオオオオ!!」


 そんな緊張感のない会話をする夫妻を尻目に、もう一度アインシュに襲い掛かる。今度はやすやすと止められないよう、赤い魔力をまとい、突進する。


「はあ、しゃあねぇか・・・・」

「グウウウ!!?」


 次の瞬間、ジョージのマントが輝くと、一瞬ののち、マントが消えて代わりに黄土色に輝く鎧を纏っていた。そして、鎧を纏ったジョージは、アインシュの前に出ると、正面から竜の突撃を受け止める。


「おっと、こんなもんかい? んじゃ・・・重刃!!」

「キュアアア!?」


 竜の体ごとぶつかる体当たりを受けてもビクともしなかった老人は、魔力を込める。老人の鎧の各所に刻まれた術式がジョージの身体能力を上げ、術式どうしが共鳴しあうことでさらにその効果は上昇する。結果、凄まじく重量が増した剣を軽々と振って、剣の腹をリーゼロッテにぶち当てた。リーゼロッテの牛よりも大きな体が吹っ飛び、小屋の外に飛び出す。


「・・・・ジョージ、あまり派手にやるな。私が抑えてはいるが、デュオには気づかれるかもしれん。 なにより、使ったポーションを無駄にするな」

「っても、旦那様、向こうはまだやる気みたいですけどねぇ」

「グルルルルル」

「ふむ・・・」


 リーゼロッテは唸り声をあげて機会をうかがっている。どうやら戦う気しかないようだ。

 アインシュはそんなリーゼロッテに言葉を投げかける。


「リーゼロッテ殿、あなたの正体を知る者はここにいる3人だけだ。 心配せずとも言いふらすつもりはない。 魔竜をかくまっていると知られるなど、あまりにデメリットが多すぎる」

「・・・・・・・」


 リーゼロッテは唸るのを止め、アインシュの目を睨みつける。常人ならば失禁しそうなくらい迫力のある竜の眼光を、アインシュは真正面から見つめ返す。


「もう町人に、あなたの姿は見られてしまっている。怪我をしているとはいえ、老人と中年、子供しかいない屋敷で、町中を闊歩できるくらいの竜が急に死ぬのも不自然というもの。そして、あなたを消せない以上、魔竜だと知られるのは無用な混乱を招く害悪にしかならん。なにより、貴方が魔竜であると知ってなお傷を治す理由など、会話するくらいしかないだろう?」

「・・・・・・」


 リーゼロッテはアインシュから目を離し、バーク夫妻の方を向いた。


「俺が旦那様の命に逆らう理由はないですな。 なにより、アンタが死んだら坊ちゃんが悲しむ」

「アタシもそうさね。坊ちゃんが泣いたら、奥様も元気なくしそうだしねぇ」

「ま、アンタがあくまでやろうってのなら、そうするしかねぇがね」

「・・・・・・」


 夫妻はそろって武器を消してからそう言った。


「・・・・・キュウ」


 しばらくの間、リーゼロッテは黙っていたが、やがてため息をつくように小さく鳴いた。

 そして、その姿がだんだんとぼやけ始めて・・・・


「ほう、人の姿になれるとは聞いたが、ここまでとは思わなかったな」

「・・・・完全なヒトの姿になれるのはあたしだけ。 変身できるっていっても、魔竜だって竜人になるのが限界だよ」


 アインシュのつぶやきに、赤い髪の少女は不機嫌そうに答えた。


「で? あたしはこうやってアンタたちと話せるようになったけど、何が聞きたいのさ?」


 赤い髪の少女、リーゼロッテは苛立ちを隠さずそう口にした。





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