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言わせないよ?

 バチンッ!!


 何かが弾けるような派手な音と共に白煙が舞い上がる。

 なにかが焦げ付いたような匂いのする煙を吸って、秋良とリユは咳き込んでしまう。

 しばらくして煙が晴れてくると…


「なんだこりゃーーー!!??」


 叫んだのは秋良ではなく、リユだ。

 ワナワナと震えているが、そこにいるのはリユではなく女の子だ。

 真っ赤な髪ではなく黒い髪で短いポニテになっている。ただ光に当たると赤く見えて綺麗だ。

 服装もリユが着ていたもので、尻尾にあたる部分はウエストポーチの尻尾アクセになっている。

 さっきまでリユが発動していたアードも待機状態なのか何なのか、その腕には何も無い。

 女の子は焦るものの、慣れているのかスッと冷静に集中を始める。

 すると女の子の手首にはリユがしていた腕輪が表れて、直後にリユへと元に戻った。


「おおお…」


 まだアードの発動はしていないが、元に戻れて安心するリユ。

 アードを待機させると、再び女の子の姿へと変じた。

 それを何度か繰り返し


「やったぁーーーーー!!わーーい!」


喜びの声を上げた。

 そして、そんなリユの眼の前で固まるモニュメントと一体化したかのような女の子。

 いや、ハッキリ言おう秋良である。

 しかし秋良である面影は全くなく、日本人顔ではあるものの違和感のない金色の長い髪と瞳をもっていた。

 目を引くのが、その身体であろう。

 三角や四角などの無数の銀の板が、左手を中心に身体を貫いていた。

 その中で何より目立つのが、左手の先にある細く二メートルに届きそうな円錐型の銀塊。

 武器ーランスーのようにも見えるが、今の秋良にそれがなんであるか推し量ることは出来ない。

 次にその身体だろう。

 目線は変わらないものの、きめ細やかで柔らかそうな白い肌、大きくもなく小さくもないその胸は、まごう事なき女性のもの。

 衣服もモノキニ水着のような際どい格好となり、革のような腰当からは前後に鮮やかな青い色の布が垂れている。

 それ以外に纏っているものはない。


「な…な…!」


 秋良はその手に触れる感触を確かめ、想像と全く違う事にワナワナと震えている。

 一方で、自分の状態に落ち着いたリユは、そんな秋良を見て


「おー!なんだか色々変だけどアード発動したねー。よかったよかった。」

「いい訳あるかぁぁぁぁぁっ!!」


 ツッコミによって自分を取り戻す秋良、さすがである。


「何が不満なのさー?アード発動してシキの姿になっただけじゃん」

「は?」


 たっぷり十秒、間が空いた。


「だから、シキの姿になっただけだよー?」


 リユが首を傾げた。

 キツネ姿ではあるものの、その仕草は小動物的な愛らしさを感じさせた。


「じゃあ、もしかして、これがアー」

「シュッシュッシュ、見つけたぬね、リユ!」


 秋良の声を遮るかのように、周囲から声が発せられる。

 その声にリユは表情を凍りつかせる。


「イヤなのに見つかったかー…」


 心底イヤそうに呟くリユを無視して、声の主は語り出した。


「シュシュシュ、分かっているようぬな!さあ、銀の鍵を渡して貰おうぬ!!」


 声の位置は変わらず特定できず、周囲をキョロキョロと見回しながらリユは警戒している。


「そっちこそ、いっつも見えないしズルいじゃん!だからタヌに銀の鍵は渡してやんなーい!!」

(タヌ…緑色で見た目がタヌキだったら、緑のタヌ)

「シュシュシュ、見つけられない、お前が悪いぬよ!」

(何故かさっきから被せてくるけど、まぁ、そうだろうなー。)

「むぐー!むー!むー!むー!!」

「シュッシュッシュ」


 地団駄を踏むリユの様子を嘲笑うタヌ。


(シキって精神年齢低いのか?)

「で、そっちの人間みたいなシキはお初ぬな?」

(誰だ?)


 秋良の事であるが、自分の事を把握しきれていない為に自分の事だと分かっていない。

 なんとも無しに辺りを見渡すと、目に映る景色が変貌しているのに気が付いた。


「な、何だ…これ?」


 空は白く、大地は真っ黒。

 木や草、建物に至っては、灰色。

 モノトーンの世界だった。

 思わず目を閉じ、手で頭を抱えようとする。

 秋良は気づいてないが、その際に槍のようなものが前腕を軸にしているのか、その頭を透過していく。

 ただ、周囲にあった木や草に干渉しているようで、頭を抱えようとして引っかかり微妙に届かなかったが、秋良自身には干渉しないようだ。

 怒りで興奮気味のリユはともかく、何気に無視されているタヌは秋良に対して不快感を抱いた。


「シカトは気に入らぬ!」


 タヌが怒りの感情を込めて怒鳴るが、秋良はそれすらも無視して色のあるものを探そうとして、何気なく上を見上げた。

 そこには色が、緑色があった。

 その緑色はシキである事を確かにさせる、アードが背にあった。

 その姿は、そう、正しく!


 緑のタガメ!!


「そこは…タヌキだろうがぁぁぁぁぁ!!!」


 秋良は緑の『タガメ』に心からのツッコミを力一杯言い放った。

 同時に、秋良の左手のランスがミサイルのように射出されるが、直線上にタガメのタヌはいない。

 が、射出された直後にカクンと方向転換すると、タヌに回避すらさせない速度でその身体に突き刺さった。


「おぉおぉ…」


 タヌが声を漏らす。


「あ、アードの力で保護されたワシを見つけるぬは…」


 まるで風船のようにタヌの身体が、徐々に徐々に膨らんでいるのが分かる。

 その様子に呆然とする秋良と、事態に気づきやや青ざめたリユ。


「イアでぬら、ワシを見つけら…れぬというぬ…にぃぃぃ…!」


 その言葉を発すると、膨らんだ身体が限界に近いのか、何かを喋っているようにも感じるが、何も聞こえない。


「〜〜〜!!」


 声ならぬ声を上げた後、風船が破裂するような音を鳴らして、ドサリ!と何かが落ちてくる。

 その何かは、信楽焼のタヌキ…にそっくりなタヌキ。

 色は緑色だ。


「ぐぐ…」


 声はタヌのようだ。


「おお〜」


 何かに感心するかのように、その姿を秋良は満足気な顔だ。


「これぞ、緑のタヌ」「覚えてぬれ!」


 秋良が言い切る前にタヌはその場から逃げ出した。


「あ!タヌ、シキのままだ!!」


 ハッと気付いたリユだが、その姿はもう見えなかった。


「最後まで言わせろぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

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