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蛇足的な話、改変の未来!

前話「バッドエンド!」の続きとなります。

その日はいつもの週末、二人で小旅行を楽しむ日でもあった。


偶然だったのか、必然だったのか?

秋良達が目的地に到着してほどなく、美月が車の中にポーチを忘れた事に気付く。

秋良と共に駐車場まで戻ってきた所で、その変化はやって来た。


そう、文字通り。

透明ではあるが球体状に歪んだ何か。

その球体が2人、いや美月を目掛けて襲い掛かるように接近し、咄嗟に庇った秋良共々未知の世界へと招かれたのだ。


そこで待っていたのは、正に刹那的な出来事。


足元に魔法陣、周囲には召喚者であろう人達。

これがよくあるライトノベルであれば、少しでも状況が違えば、また違う展開も見えただろう。

しかし、秋良と美月を召喚した者達は、神々からの啓示により『邪神を打ち倒す術』か『封印又はヒント』を得るために『聖霊』を呼び出したつもりだと説明した。

人間を呼び出すつもりは無かった、と。


お互いが戸惑いの中で話し合い、召喚者達が秋良と美月を送り返そうとしたとき、それは突然起こった。

召喚者達が突然黒い球体に飲み込まれたのだ。

黒い球体はすぐに消えたが、召喚者達はひとつの球状の肉塊へと姿を変えた。


その後に現れた黒いコートの者は、悲鳴を上げた美月を見るなり連れ去ろうとするが、秋良はそれに抵抗し、最後黒い球体に飲み込まれ召喚者達と同じ運命を辿った。


それで秋良の運命は終わりを告げた。





はずだった。


「ぅああああああああっ!!! 」


叫び声を上げて飛び起きたのは、秋良だ。

そう、先ほどのはアードが見せた記憶である。

黒い球体に飲み込まれた彼は、右腕を犠牲にして難を逃れ、どういう訳か日本へと帰還を果たしていた。


そして、倒れている秋良を見つけたのは、


「秋良!落ち着いて!大丈夫、大丈夫だから! 」

「すぐにメトを呼んでくるから、リユ、任せたよ?」

「分かった、早くねルフ! 」


偶然にもリユとルフ、この2人だ。


「怪我の状態もかむり回復したようだな。」


やってきたメトが怪我の状態を診るのは何故か?と疑問に思うであろうが、答えはメトの持つアード『三本の手槍』。

その能力はそれぞれ『治癒活性剤』『麻痺毒』『精神汚染薬』の効果を持つ。

怪我をして右腕を失った秋良に施されたのは、『治癒活性剤』と麻酔代わりの『麻痺毒』である。

もっとも、失った腕を生やすような真似は出来ないが。


病院に運ぶべきでは?と思うかもしれないが、日本は…いや、世界はたった一人の脅威に晒されており、多くの施設は機能していなかった。


金の髪となびかせ、同じ金の瞳をたたえた銀の装具を持つ女性。

その姿は美月に…いや、昔秋良が銀の鍵をアード化させた姿と瓜二つであった。


アードと思われる物を持ちながら全ての人間の目に映るその女性は、空を駆け『槍』のようなものから放たれる光は街を破壊し、焼き払っているのだ。


世界中が抵抗した。


が、近代兵器の通用しない相手に何が出来るのだろうか?

『天の裁き』だと誰かがポツリと呟いた。

その言葉は国と言葉の垣根をこえて、世界中に広まり、それを耳にした者は抵抗を諦めた。

これは、たった三日間で起こった出来事だ。


世界は『天の裁き』が早く終わる事を、ただただ祈るしかなかった。

その最中、秋良は日本への帰還をはたしたのだ。



さらに数日が過ぎて…



秋良達は月の城、鍵の間に訪れていた。

秋良の姿は金の髪と瞳を持つ少女の姿ではなく、年相応の秋良の姿だが、左手にあるソレは銀の鍵がアード化している事を証明していた。


「ワン…」


ワンの身体に残る無数の傷跡を見て、秋良が何と声を掛けるべきか迷う。

生きてはいるが、いつ死んでもおかしくないその姿が痛々しいが、ワンはゆっくりと腕を動かしその指先にある『金の鍵』を秋良に見せる。


「さ、最後のぉ、知識を…得た…。」


鍵の間ではなく、王の間にて最も古く最も新しい秋良専用のアードがある、とワンが語った。


「俺専用…?」

「我も詳細はぁ、知らんん…。

金の…鍵を手にぃ…、王の間へ行けぇい。」


ワンが得たのは知識だけだと語り、ここで問答する意味がないと感じた秋良は、リユ達とそれらしい部屋を探しながら城の上層へとやってきた。


「ここで最後、だな。」


そう言って扉を開けようとするが、まるでそこに何も存在しないかのように秋良の手が扉をすり抜け、姿勢を崩した秋良はそのまま部屋の中へと入って言った。


「「あ、秋良!?」」


呆然としたリユとルフは、秋良と同じように飛び込もうとするが、扉はすり抜ける事も開く事もなく、二人を拒んでいた。


王の間の中へと入った秋良を待っていたのは、見知らぬ少女。

朝焼けのようなオレンジの髪と、若草色の瞳を持ち、全裸なのに何処も隠そうとしない少女だ。


「特別な選択肢を上げよう。

伸るか、反るか、ポルカ、踊るか…じゃにゃーて。

ただ伸るか、反るかの選択よん?」


秋良にとって、どこか懐かしいノリ。

少女はニタリと笑うと言葉を紡ぎ、秋良に選択を迫った。



◆◆◆



地球、廃墟ばかりとなった東京の広場に秋良はただ一人降り立った。


「本当にデタラメなんだな、このアード…」


少女の選択に『伸る』と決めた秋良はあっけなくアードを渡された。

それは全てのアードを作る為に必要な触媒となるアードであるが、秋良の為にたった今『作られた』新しいアード。

秋良の失った右腕には銀色をベースにし、角度によって色が『虹色』に煌めく『右腕』、これが彼の為に作られた『虹色』のアードだ。

その力は少女曰く『理不尽』であり、金と銀の鍵ふたつを触媒として『一度だけ』使用可能とのこと。

身につけているからこそ分かる。

このアードがあれば、宇宙の消滅や新しい宇宙の誕生すら可能である事を。


(金と銀の鍵を使って…って所が、願いを叶えるシステムに似てるな…)


ふとそんな事を思う秋良。

実際にはそれ以上に強力である事に気付いていない。

このアードが必要な理由は、美月に似た少女の持つアードが全てのアードの頂点である『金』と『銀』のアードであり、その欠片から作られた『金の鍵』と『銀の鍵』では無力化されるからだという。

当然、他のアードも下位に当たる為に弱体化される。

対抗できるのは『同じ』か『それ以上』のアード。

そして『この時代の』金と銀のアードは砕かれ、封印され、一部が鍵として存在しているのみ。

秋良は少女が残した言葉を思い出す。


《こりはアタシが残した一番最初の仕掛け。

でも秋良にとっては最後の仕掛け。

どんな使い方すんにしたーて、秋良が変わらんままの秋良だったら…心配しとらんよ。》


なぜ自分の名前を知っているのか、全てを見越した周到さなど、色々疑問に思うのだが…

それ以上に、見た目も声も違うにも関わらず、誰かを思い出さずにはいられない喋り方とイントネーションに思わず笑いそうになるが、それは全てが終わってからと秋良は気を引き締める。


「俺がどうしたいか、なんてものはとうの昔に決まってるさ。」


美月のような少女が見える場所で、秋良は金の鍵を右手で握りしめる。

ずっと変わらない明日なんてものはいらない。

失った誰かを取り戻そうとも思わない。

過去をやり直す気もない。

望むのはひとつ。

そしてそれは、かつて願ったことだ。

今は王の間にいた少女を信じて、託された事をやるだけだ。



「『全てを無かった事に』!そして、出来る事なら…」



その言葉を紡いだ時、鍵は光の粒子となって消え失せ、それに合わせて虹色のアードは光り輝いて世界を包んだ。





『虹色のアード』は『願いの全て』を叶え、破壊された街などは全て元通り、死者もなく、美月と『同化』した金と銀のアードは消失、美月の年齢も元に戻り、『全てを踏まえた上で元通り』になった。

当然混乱は起きたものの、誰一人として突然元通りになった理由を証明できる者はいなかった。

右腕を掲げ、それをマジマジと見る秋良。


「『虹色』のアードはこのまま、金と銀の鍵は消失、か。」


彼の目には虹色に煌めく銀色の右腕に見えるが、リユ達には普通の腕に見えるようだ。

当然人間も普通の腕に見えるようなのだが、生身の腕として認識され、採血なども問題なく出来るようだ。

そういった意味でも『理不尽』なのかもしれない。


「あーきら、何してんの?」


自宅の庭で某世紀末覇王のごとく右腕を掲げる秋良を見つけ、興味に駆られたリユが話しかける。


「ん…ああ、リユか。

いや、この『虹色』のアードをどうしようかな、と。

それに二つの鍵が消えたけど、いいのか?」


自分専用に作られたとはいえ、返すべきなのか、このまま持っててもいいのか、確認していなかったのを少し悔やむ。

何より返せ、と言われたら不便でも返すしかない。

そして『虹色』のアードを使った為に消えた二つの鍵を気にしていた。


「アードは死ぬまで持ち主専用だし、気にしなくていいんじゃない?

鍵だって、この時代で使えないってだけだし、次の争奪戦までに復活するでしょ。」


秋良の悩みに対し、リユの答えはなんとも軽かった。


「そんなもんなのか?」

「うん、そんなもんだよー。」


その言葉を聞いて悩むだけ無駄、と分かった秋良はリユは相変わらずだな、と笑う。

そこでふと、少女が迫った選択肢を思い出した。



《選択はー?『全てを無かった事』にする。

伸るなら、未来へ。反るなら、過去へ。

さ、どーする?》



少女の言う通り『全てを無かった事』にした為に、こうして今を過ごせているが、それが正しかったのかは秋良は分からない。

もし反るを選んだら『過去に戻り、もう一度経験する未来』が待っていた可能性、と考えると良かったのかもしれない、と秋良は思い至る。


(まあ、俺がアレコレ考えても分からんし、これでいいか。)


そして考えるのをやめた秋良はリユを家に招き入れ、いつの間にかリユと共謀していた妻である早希に揶揄われるのであった。



「僕は秋良の愛人でぇー」

「人聞きの悪い事を言ってんじゃねぇぇ!!」


拙い作品をここまで読んで頂き、本当にありがとうございます。

秋良の物語はこれにて完結、実質的な最終話となります!

ヒロイン無しで子持ちの親になる主人公でありましたが、秋良とリユの関係が好きとコメントをくださる方もいて嬉しい限りです。


残す話は改変されなかった場合、となります。

後書きではネタばらし的な話をぶちまけようかな、と思いますのでお楽しみに(いるかな?いて欲しい)

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