表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/20

何がキミの幸せ?

本日二話投稿です。

そして、一応の完結となります。



読んで頂いた方々には最後までこの拙い作品にお付き合い頂きまして、本当にありがとうございます。


今後については、願いの鍵のオマケ話を数話掲載予定と、短編読み切りを二本考えております。

ワンの語る願いが叶う基準。

それは、


『知っている事』


だそうだ。

例えば『病気を治したい』という願いは叶うが、『病気をなんとかしてくれ』という願いは叶わない。

この差は、『病気に対する治療法』を知っているかどうか、それに尽きる。

病に対して薬があれば、手術をすれば治ると『知って』いれば、例え不治の病であっても『治る』。

『なんとかしてくれ』等の曖昧な言い方では治らないのだ。


おそらく、医療技術が進んだ現代であれば『死者蘇生』も叶うかも知れないとのこと。


次に最も重要な『別の方法』で願いは叶えられるか?


結果だけ言うならば、『方法はある』とワンは言う。

その前に少し、秋良が知らないであろう本来の方法…鍵の継承争奪のルールを説明し始めた。


ひとつ、願いが叶えられるのは、百年に一度の七月の七日目。時間の間隔は人の世に準ずる。


ふたつ、金と銀の鍵をシキ達が残り五匹となるまで奪い合う。殺し合いは禁止。破れば即座に継承の資格を失う。


みっつ、人間にもアードを貸し与える事が出来るが、継承者の権利も人間に移ることになる。シキ達を殺せば同様に資格を失う。


よっつ、期限までに継承者が決まった時、全ての知識が継承者に引き継がれる。その後願いを言った時点で知識を失う。


いつつ、継承者が決まらなかった時は、全ての知識を五匹の中で最後に生まれたシキに託される。


むっつ、五匹のシキと継承者が然るべき時に然るべき場所へ現れなかった場合、願いを叶える事は出来ない。ただし継承者がいなくても、シキ達はそこに訪れなければならない。


ななつ、シキも人間も願いを二度叶える事は出来ない。


「そういえば、なし崩しで関わってたからルールとか条件とか知らなかったな…」

「やはり、か。」


ワンもなんとなく感じていた為、ルールを語ってみせた。

尚、秋良はシキでもなければ継承者でもないので、月の内側にある鍵の間まで問題なく入れた。

そしてワンの語る別の方法とは…


「最後に残ったシキ達を…殺す?!」

「うむ。」


そう、行うのは人間でもシキでも良い。残った五匹のシキを殺し、その命とアードを鍵の代用とする方法。

残った五匹のシキ、それは当然…


「できるわけ無いだろう!

リユもルフも、友達なんだ!」


即座に秋良が怒鳴った。

そこにリユとルフも含まれる事になるのだから。

人間になったせいで辛い現実に直面しても、決してめげず、不器用でもお互い知恵を出して助け合い、乗り越えた時は共に大きく喜び合う。

人間よりも人間らしい在り方と営みをするリユとルフの事を、時に知恵を貸しつつも秋良は間近で見てきたのだ。

そして躊躇わずにリユとルフを友達と言い切る彼に、ワンは内心笑みを浮かべる。

僅かに懸念していた、銀の鍵の影響を完全に受けていない、と。


「で、どうするの?」


それまで黙っていたイアが話を促す。

そう、ワンから聞いた事は驚く事ではあったが、結果としては『方法が無い』のと同じだ。

本来の方法でも、異なる方法でも、願いを叶える為に誰かが犠牲になる。


「音ねーちゃんは…」


異なる方法も知った上で『叶えんな』と言ったのではないか、秋良はそう続けようとして思いとどまる。

音子なら知っていそう、と感じたからだ。

そして、どの選択も間違いであるとこの半年で知った。

みんな、起きてしまった現実を受け入れ、乗り越えたのだから。

秋良はそのどれも近くで見たのだ。


「…やっぱり、俺は弱いなぁ。」


まだ叶うかもしれない、と希望に縋っている自分を嘲笑う。


「だがぁ、それが人というものであろうぅ?

貴様は多くのシキと戦いぃ、願いを叶えんが為にそれを乗り越えんとしたぁ。」

「悔しいけど、お前のチカラには勝てないの。

だから誇るといいの。」


フォローしてくれるワンとイアの言葉に「ありがとう」と感謝を述べて、秋良は立ち上がり空を仰ぐ。


「俺も何か、目指してみるかな。」


その瞳に映った月は、どこか温かみのある色をしているように感じた。


この瞬間、神代秋良の非日常は本当の意味で平穏を迎える事になる。



そして…



「はい、桂馬取り王手。」

「むぐっ!?まいった…」


将棋を指す秋良とメト。

そして相変わらずの謎ダメージ仕様。

その横ではイアがメトに早く変われと催促している。

イアと勝負すると、今度はハリセンで叩かれる仕様になるので、何とかしてくれと内心いつも思っている。

パチパチと将棋のコマを並べ終え、イアが勝負の宣言を上げる。


「デュエル!先攻は俺のターン、ドロー!!」

「これ将棋だから!てかドローって何?!」


秋良のツッコミを無視して、イアがパチリと歩を一マス進ませた。


「あれ?!意外と普通だった!」


拍子抜けした秋良はどう動かそうか考えると、再びイアが歩をパチパチと連続で動かしてきた。


「ちょ、イア?!」


慌てて止めようと顔を上げた秋良に


「ずっと俺のターン!!」


ドヤ顔で宣言された。

色々ツッコミたい秋良だったが、言うべきことはひとつだ。


「ルールを守れえええぇぇぇっ!!」


秋良のツッコミが神代家に響いた。

非日常に棲むシキ達に振り回されながらも、これからも変わりないだろうと感じながら秋良は平穏に過ごしていく。


それはずっと、ずっと。


変わらない毎日の中で過ごす幸せな日々なのだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ