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追い付けない変化?

 多くの願いがあった。

 叶う願いと叶わぬ願いと、歓喜と絶望を織り交ぜて。

 幾つもの願いと、悠久とも言える歳月を重ねて。


『人間になりたい』


 そう願ったシキがいた。

 たくさん、たくさん。

 人間になる事は出来た。

 でも、でも…


『愛しいあの人を生き返らせてくれ』


 鍵の継承者を勝ち取った人間もいた。

 愛しい人を側に、側に!

 想い人は息を吹き返さなかった。

 なぜ、なぜ…


『コレを誰の手にも届かない場所へ』


 ソレの恐ろしさを知り、縋るように願う者がいた。

 コレは世界の毒であると。

 そしてソレはシキもろとも誰の目にも、誰の手も触れる事は叶わない場所へと消えた。

 これで、これで…


『にゃは、ここに銀のニューハーフが来たったら、神代秋良(・・・・)の内面が変質せんよーにしとこ。』


 全てを知る者が願っていた。

 誰の目にも触れず、誰の手も届かない場所で。

 知らない声、知らない人、でもよく知っていて。

 そうだ、そうだ…


「俺はニューハーフじゃねえぇぇぇ!!」


 鍵の間で秋良の叫びが響き渡った。

 ハッと周囲を見渡せば、ケガをしたリユ達。

 特に酷いのはワンだろう。

 全員が自分と向き合っている事を考えれば、自覚がなくともケガをさせたのは自分だと分かる。


「あ…う…」

「元に戻ったー!」


 戸惑う秋良に対して、リユは無邪気に抱きついた。

 シキ達は更に戸惑う秋良を見て、ホッと警戒を解いた。

 それを見た秋良は


「その、ごめ」

「謝るのは違うよ。」

「そうやね。」


 謝ろうとして、リユとルフに止められた。

 視線をメト達に向けると、メトとワンは頷き、イアは「それなりに面白かったの」と横を向いた。

 それを見て「ありがとう」と微笑んだ。

 そして真面目な顔でワンを見据えると、


「ワン、教えて欲しい。

 願いを叶える為に必要な条件と、俺が願いを叶えられない理由をね。」

「よかろうぅ」


 秋良は『何者かの願い』によってアード化する前の神代秋良としての性質を取り戻し、穏やかなものとなっていた。

 そして、ワンの言葉に耳を傾けた。


 ◆


「つまり、二つの鍵はこの黒い球体の中にあるモノを取り出す為の、文字通り鍵な訳か。」

「そう。そして、今の鍵の状態もぉ完全ではないぃん。」

「完全じゃない?」


 どこからか金の鍵を取り出し、秋良は鍵と黒い球体を交互に見つめる。


「その状態はぁ、分かりやすく述べるならば『鍵束』であろうぅ。」

「鍵束…なるほど。」


 鍵束と聞いて、何故か樽に短剣を刺して黒ヒゲのオッサンが飛び出すゲームを連想した秋良。

 ワンの説明は更に続く。


 『鍵束』の状態である二つの鍵をバラバラにしないと鍵は使用できず、バラバラにする方法は金と銀の鍵を『アード化』させて互いに相殺しなければならない。

 現状でそんな事をすれば、銀の鍵と『同化』している秋良も『死にかねない』のだと。

 その為、願いが叶えられないと。


 最も、二つの鍵を含む全てのアードは『人間を傷付ける事が出来ない』為に、秋良を傷付ける事も鍵同士の相殺も不可能ではあるが、と付け足して秋良は疑問点に気づく。


「銀の鍵と同化した時っていっていいかわからないけど、その時物凄い衝撃があったぞ?」


 商店街にてリユが投げた銀の鍵に当たった時の事を思い出した。

 シキは当然として、人間の中にも『アードを扱う素質』が少なからず存在し、強力なアードを発現出来る者ほど適合の際に痛みと衝撃を伴うのだとか。

 秋良に関しては、強すぎるが故に適合の衝撃も大きかったのだ。

 ただし、ここまでバトルらしいバトルは無い。


「まあ、ある程度は分かったよ。

 なんで女の子の姿になるとか、気になる事もあるけど…」


 目線を下に向ければ、巨と言えるほど大きく豊かでは無いが確かな膨らみを主張する二つの乳房。

 下半身は直接確認してはいないが、明らかに『無い』と言える感覚。

 そして、この姿は『誰』なのか。


「それは分からんん、が、願いについてぇ、質問は終わりかぁん?」

「そうだね、今の所は無いかな。」


 女の子になるのが分からなければ、『誰』なのか聞いても同じだろうと秋良は質問を終える。


「願いが叶わないのは残念だ…けど…?」


『いらん。つまらん。叶えんな(・・・・)。』


 唐突に音子の言葉を思い出した。

 同時に疑問。


「ごめん、まだ聞きたい事があった。」


 ◆


 月面。

 イアはここの内側を拠点というか、住んでいるので月に残るらしい。

 メトとワンも自前で飛行出来るので、地球に戻るとか。

 見える人からしたら、メトは天使降臨、ワンは魔王降臨に見えそうだ、とは思っても言わないこと。

 秋良達は月に来る時と同じように、リユとルフが秋良に抱きつき、ドリルで地球に突っ込む。

 最初の加速はワンが投擲してくれるらしい。


「じゃあ、ワンよろしく頼むよ。

 イアもメトも、元気でな。」

「まったねー。」

「戦うのは嫌やけど。」

「あ、それは僕も同じ。」

「じゃあ今度挑みにいくの。」


 戦うのは嫌と言ったリユとルフに対して、イアがイタズラっぽく言った。

 目がマジだったりするのは気のせいだろう。


「ならば我は秋良と勝負だな。」

「乗るなよ…」


 シキ同士冗談を言い合えるのも、鍵の継承者争奪が終わったからこそだ。

 リユが以前言ったように、鍵の争奪でピリピリしていただけで、実際は同族同士なのでそれなりの交友関係もある。

 だからこそ、相手を殺すのではなく、別の生き物にして鍵の争奪を脱落させているのだ。


「ではぁ、準備はいいかぁ?」


 ワンが投げる姿勢に入る。

 秋良も月に来た時と同じように、いや、足に具足のような物を出現させた。

 地球から離れる時よりも、より洗練され収束した形だが、秋良は気づいていない。


(どれだけ時間が掛かったかわからないけど、まずは家に帰ろう。)


 洗練されたアードにより月に来た時よりもずっと早く地球に戻り、家に戻る道すがらに半日以上経過している事に驚きつつ、戸惑いつつ自宅の玄関のドアを開けると案の定怒られた。



 そして。



 渡良音子の訃報を知った。

主役のバトル無し&あまり暗い話にはしたくないのですが、避けられない話でしたのでアッサリバッサリとなりました。


誤字や脱字のご指摘、ご意見ご感想、なんでもお待ちしております。

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