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条件と?

 そこは月の内側、とでも言った方が正しいだろうか?

 中心部を天として、地表の内側を大地にしているのだ。

 ワンの話では『シキ』か『アードの使用者(・・・・・・・)』しか入れない領域だという。

 そうでない者達の目には、ただの岩の塊らしい。

 つまり、秋良がアード化を解除すれば岩の中に閉じ込められる、という事だ。


「黒い空に白い大地、か。」


 そう呟いた秋良。

 足元にある小さな淡い光がなければ、まともに歩けないほど暗い、それでも白い大地が異様に目立つ世界。

 その光も密集してる訳でもなく、ひとつひとつ離れた場所にあり、光の色も同じものを見かけない。

 何より気になるのは黒い空だろうか。

 中心部が見えず、光や白い大地すら見通せないのだから。

 そして白い大地と同じように目立ち、黒い空へと続く塔の様にそびえる城のような場所を目指して、ワンの背に乗って秋良とリユとルフは月の内側の世界を見ていた。


 ちなみにワンは襲いに来た訳ではなく、道案内しに来たとかで待っていたようだ。

 声と喋り方がアレだったが、秋良の質問などにも丁寧に答えた。


「予めぇ、言っておかんとなぁ。

イアにぃメト、両名は既に待機しておるぅんん。」

「イア…聞いたことはあるけど、会った事無いな…」

「いやー、イアと戦ったけど、ジワジワ攻めるから怖かったよー。僕よく逃げられたと思うよ。」

「イアは分やるとして、オイラもここに入るとは思わなかったやー。」


 三者三様の感想。

 秋良としては何で待機してる?どうやって願いを叶える?と聞きたい所ではあったが、鍵に関わる全てを『然るべき場所』で話すとワンに言われ、出来るだけ共通の話題になりそうな事を言葉にしていた。


 ◆


 月の内側に見える城の上層階、鍵の間と呼ばれる場所。

 その扉前。


「い、い加減…んぐっ!この…アー…ド!離、すの!」


 壁を背にしたイアが両手に掴むのは、メトのアードである手投げ槍一本。

 イアの力では迫る槍に比べて弱いのか、ほんの僅かづつではあるが押されて胸に迫っていた。

 その為、自身のアードを展開したくとも、手投げ槍を押さえる為の集中を切る訳にはいかなかった。

 そして槍を放ったメトは、涼しい顔をしてイアから離れた場所で腕を組んでいた。


「我が好まぬと言った争いを始むたのはお前だ。

 このまま貫かれてむ、文句は言えまい?」

「ム、ムカつ…くの!」


 怒りを露わにするイアではあるが、音もなく現れた黒い柱…ワンの腕がメトの手投げ槍を押し潰した。

 メトの槍から解放されたイアは、気力が尽きたのかその場で突っ伏した。


「ようやく来たか、ワン。

 今のイアが不安定だからと我に押し付けむな。」

「すまんなぁ、たがぁ貴様にしかぁ出来んだろぅ?」


 僅かに、ニヤリと笑ってみせるワンと対照的にやれやれと首を振るメト。

 それを見てワンは巨大な扉に手をかけ、ゆっくりと開く。


「さあ、集いしシキよぉ間も無く時を迎えぇん。」


(俺はシキじゃねーけどな。)


 唯一の人間である秋良は心の中でツッコミを入れた。

 扉の向こう側で待っていたのは、部屋そのものが発光しているかのような明るい空間。

 そして眩しくもなく、薄暗い事もない。

 部屋の中心にあたる場所には、全ての色を飲み込もうとするかのような、蠢めく黒い球体。

 ワンはイアを手に乗せ、その球体に向かって進みだした。


「なあ、ワン。そろそろ教えてくれないか?

 どうやって願いを叶える?」


 ここが『然るべき場所』なのでは?と考えて秋良は質問するが、言葉を発したのはメトだった。


「秋良よ、今代の鍵の継承者争奪は『継承不可能』。

 故に願いを叶えむ事は『誰にも出来ない』。」

「は?なんだそれ?」


 願いが叶うかも知れないと、僅かなりでも期待していた秋良は発した声に怒気を含ませた。

 それによって怯むメトではないが、そのまま黙ってしまう。

 少しの沈黙のあと、球体へ辿り着いたワンが移動を動きを止めて今だにグッタリしているイアを降ろす。

 リユもルフも、ワンから降りて球体を取り囲むような配置につく。

 秋良もなんとなくワンから降りて、その様子を眺めている。


「我ら五色まで減らんとも、鍵の継承にぃ至らんものとなったぁ。」


 声を発したのはワン。

 ようやく気力が戻ったらしいイアがヨロヨロと立ち上がる。

 それを見たメトはそっと目を伏せる。


「秋良よ、金の鍵とぉ銀の鍵ぃ、そして叶わぬ願いについて話さん。」


 ワンは語った。

 鍵の継承者争奪の意味、金の鍵と銀の鍵を巡る理由、願いの叶え方、叶う願いと叶わない願いの差を。

 そして、今代では絶対に願いを叶えられない事を。

 ワンがそこまで語ると、


「な、なんだよソレ!」


 秋良は怒りを口にした。


「それじゃ、何か?!私が銀の鍵と同化したせいで、シキ達は無意味な争奪を繰り広げて脱落したっていうのかよ!」


 その言葉と共に纏っている板状の銀のアードが、秋良の中にいくつか入っていく。


「人間の私でも願いを叶えられるっていうから!」


 残る板状の銀のアードが秋良の中に入っていった。

 『変化』に気づいたのはリユ。


「秋良…?」

「なんだよ!?」


小さな変化はずっとあった。

気にしなければ気づかない程の、変化が。


 銀の鍵とは『自身の内面情報を増幅し、放出し、変質する攻撃的手段を確保』するアード。

 記憶の中にあれば、その全ての姿に『変身』出来てしまうのだが、『内面』とは秋良限定(・・・・)なのだろうか?

 そして、秋良自身の記憶にないアード化した姿は『誰』なのか?

 アード化すれば『変身』しないのか?


 秋良は地球を飛び立ち、月の内側にある鍵の間まで『アード化』という『変身(・・)』を解いていない。

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