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君の名は?

初投稿になります。

未熟ではありますが、少しでも面白くなるよう頑張ります。

ご意見、ご感想お待ちしています。

 買い物で夕食の材料を吟味する主婦たちが溢れる、いつもの賑わいを見せる商店街。

 主婦達に紛れるように、学校帰りに生徒たちがチラホラ。

 肉屋の惣菜コロッケをつまむ男子生徒、友達とおしゃべりするためにスナック菓子を物色する女子生徒、デート中か兄妹か悩むほど仲の良い男女の生徒が見て取れる。


 バチ!バチチッ!!


 その中の一人、どこで買い食いしようと悩んでいた高校生、神代 秋良(かみしろ あきら)は音のした方へ視線を向けるが、何もない。


(気のせい、か?)


 見渡せば周りにいる主婦や同じように学校帰りの生徒達も気づいた感じではない。


 バチン!!


 今度はハッキリ聞こえた、とばかりに秋良は音のした方向、何もないはずの空を見上げた。

 そこには赤い何かと、黄色い何か、が争っているように見えた。


(あれは…なんだろう?)


 視界がぼやけている様な感じがして、秋良は目を細める。


「!」


 キラッと光る何かに目が眩み、直後、壁にぶつかるような衝撃が秋良を襲った。

 いや、壁ではない。それは商店街の床タイル、だ。倒れていたと気づくのに誰かに抱き起こされるまで気づかなかったのだ。

 朦朧として意識を失いそうになる中、赤い何かがこちらを見ていたような気がした。



 ◆



 気づけば真っ白な部屋。

 ここが病院だと思い当たるのにたっぷり数分が経過。


(何が…あったんだっけ…?)


 思い出そうとして寝返りを打つと、


「うわぉ!」


 声を上げて秋良は飛び起きる。

 気絶する前に見た赤い何かが、秋良をのぞき込むように様子を伺っていたのだ。それも気を失う前よりもハッキリと。

 その何かは獣の姿で、何に似ているか、といえばキツネだろうか。

 真っ赤な長い髪を頭の後ろで束ね、同じく赤い毛の尻尾、キツネとは違う顔の横から伸びる垂れた耳、動きやすそうな服まで着ている。

 しかし、現代に生きる日本人なら、こう言いたくなるだろう。


 赤いキ〇ネ、と。


「やっぱり見えてるんだねぇ。」


 ウンウンとうなずくキツネ。


「ええっとぉ…?」

「あ、ごめんごめん、ちゃんと僕の事説明しないとね!」


 エッヘン、と両手(肉球?)を腰にあてて得意気に自己紹介を始めた。


「まず僕の事! 名前はリユで、シキっていう種族というか存在っていうか…総称?」

「リユ…シキ…?」


 なじみのない「シキ」という単語に疑問を漏らし、首を傾げる秋良。


「そそ、でね? 僕の用件は君が持ってった銀の鍵を返して欲しいんだ。」


 満面の笑み(表情が分からないが)で手(?)を差し出すリユに対し、今度は覚えのない物を返せと言われて秋良は困惑してしまう。


「えーーと? 鍵って言われても、持ってんのは家とチャリのカギくらいしかないけど?」


 持っていないものは隠す必要もないので、秋良は正直に述べた。

 その言葉を聞いたリユはサッと青ざめた…ように見えた。


「まさか!!!」


 言うが早いか、リユは秋良の額を叩くように手(肉球)を叩きつけるように当てた。

 直後、ガックリとうなだれるリユのその姿はあまりにも気の毒に見えた。


「何がどうなってるのか、説め…… 」


 どんよりとした顔(?)のリユが、秋良を恨めしそうに見つめながら説明を始めた。


「ハァァァ………、君が商店街で銀の鍵に触れた時、君の魂と同化して取り出せないっぽい… 」

「それってつまり…?」

「今、銀の鍵を取ろうとすれば… 」

「取ろうと…すれば?」


 嫌な予感がする、と秋良の頬に冷や汗が流れる。


「…どうなるんだろう?」


(おい…)


 悩むリユに顔を引きつらせる秋良であった。


「あ、でもね? しばらくは君の存在が安定しないかもだから、落ち着くまで一緒にいるよ。」

「存在が安定しない?」

「うん、銀の鍵は外部(・・)に影響を出すものだから、慣れないうちは色々姿が変わるかも? 例えばネコの姿になるとか?」


(変身できるってことか? それなら別に… )


「その後ネコの姿に引きずられるように心もネコになったり?」

「よくねぇ!」


 変身できても心まで変わったら大問題だ、と秋良がツッコミを入れる。


「だから、そうならないように、落ち着くまで僕が一緒にいるよー、って言ってるんだけど?」


 得体のしれない赤いキツ…もとい、リユは満面の笑み(?)を浮かべてそう言った。

 ここに至って、秋良は(もしかして取り憑かれるのか?)と不安に感じて考えてみる。



 バカの考え休むに似たり。



 こんな諺が浮かんで軽くへこむ秋良に対し、リユが何かを察したのか


「どんまい!」

「やかましい!」


 秋良が力一杯ツッコミを入れた。


「おっと、誰か来たようだ。」


 リユが露骨な話題変更しようとしたのを秋良がツッコもうとしたら、そっと誰かが病室に入ってくる。


「あれ? 起きてんじゃん。」


 入ってきたのは秋良と似た雰囲気を纏う女の子、つまり


「夏姉ちゃん!?」


 そう、秋良の一つ上の姉である夏希だ。神代家の次女で、名前に夏を冠するだけあって、ショートヘアに動きやすそうな服装が良く似合う少女だ。ややツリ目なのを本人は気にしている。


「秋がいきなり倒れて意識不明になったって聞いて、春ちゃん倒れたぞ… 」


 ため息を吐いて、夏希はベッド横の椅子に座るとジト目で秋良を睨んだ。

 秋良は笑ってごまかすと、「ごめん」と素直に謝った。

 「春姉ちゃん」とは言うまでもなく、秋良と夏希の姉だが、夏希とは双子の姉で、それでいて夏希とは真逆のタイプである。


「まぁ、この後の診察でなんでもなければ帰れるっていうから、謝るならそんとき謝りなよ。」


 そういって手を振って夏希は病室を出て行った。


「君のお姉ちゃんは、僕の事見えなかったみたいだねー。」

「は?」


 ずっと傍にいたリユを見ても動じない夏希をすごいな、と思っていた秋良は素っ頓狂な声を出した。

 秋良が当たり前のように見えていたので、当然夏希も見えていると思っていたのだ。


「たぶんだけどね? 君が銀の鍵取り込んだからだと思うよ?」


 リユの推測は半分当たっていた。

 実際、秋良はリユたちの気配を感じ、その影を見る事ができていた。 それが銀の鍵の影響で強くなったのだ。

 故に、その姿をハッキリ見て、会話をこなし、触れる事が出来るようになった。 良くも悪くも、だ。 ちなみに秋良もリユも、そのことには気づいていないのだが。


 その後の診察で問題なしと言われ、秋良は自宅へと戻った。

 帰ってきた秋良に、家族一同は心配し、秋良の姉、夏希の双子の姉でもある春香に泣きつかれた。


 色々落ち着いた後に夕飯を済ませ、風呂に入り、自室で漫画でも読もうとしていた時、ずっと僕のそばで黙っていたリユが話しかけてきた。


「でさぁ?」

「うん?」


 視線を向けるとリユは何かを考えていた。




「君の名前って、なんだっけ?」

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