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9話「決断」

SCARLET9:決断


・彼女がシャワーを浴びている間

俺は里桜と話をしていた。

「どうするんすか?彼女の腕じゃまず無理っすよ。」

「わかっている。」

「ちなみに試合の日はいつっすか?」

「2月5日だ。」

「2週間切ってるじゃないっすか!?

しかもその日は試合と重なってるじゃないっすか!」

「ああ。だから非公式な試合となる。

・・・お前はあいているか?」

「まあ、空いてるっちゃあいてますがね、先輩。

俺こう見えても受験生なんすよ?」

「知っているさ。

だけどそんなこと気にする

師匠じゃないってことをお前も知ってるだろう?」

「・・・残念ながらね。」

「さて、一応大丈夫だとは思うがその日お前にも来てもらう。

もしも遠山が彼女に過剰な攻撃を加えた時は、」

「俺が止めればいいんすね?」

「ああ。安心しな。お前が倒されたら俺が倒すから。」

「・・・なら俺必要ないんじゃないすか?」

「おいおい怪我人に無理をさせるなよ?」

「その怪我でも今の俺より十分強いじゃないっすか。」

などと話していると彼女が上がってきた。

「上がりましたよ。」

「ああ。やはり君にかけようと思う。

今日は8時に解散だからそれまで里桜と組み手をしていてくれ。」

「わかりました。」

「ええっ!?一回だけじゃないんすか!?」

「諦めろ、里桜。今逃げたら俺と腕相撲だからな?」

「折れますよ、腕が!」

なんだかんだ言いながらもその後も何回か組み手を行った。

やった回数だけ彼女は実戦慣れしていく。

白虎一蹴はまだ完成自体はしていないが

だいぶうまくなってきていた。

交流試合程度ならこの技だけで行けそうだな。

だが果たして遠山に通用するかどうか。

3時間ほど組み手をさせ、着替えさせる。

「はあ、はあ、俺の方が疲れたっすよ。」

「里桜、かかってこい。」

「・・・・え?」

「最後に一度やるぞ。俺も実戦離れしてるとなまるんでな。」

「・・・・マジっすか?」

里桜を正面に畳に上がる。

「俺も死にたくないんで手加減できないっすよ!?」

「はっ、手加減と来たか。10年早いぜ!」

向かってくる里桜の拳をかわしていく。

さすが里桜。彼女とは別格だな。

けど、まだまだ。

「うおわっ!?」

足払い、転びはしなかったがバランスを崩した里桜を片手で持ち上げる。

「やば・・・・!」

「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

襟をつかんでぶんぶん振り回す。

そして天井まで投げ飛ばす。

空中でガメラみたいに回転してる里桜。

俺も回転をしてジャンプする。

「竜巻正拳突き・嵐ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!!」

空中で回転しながら両腕で里桜を殴りまくる。

「独学甲斐式スクリューパイルドライバー!」

そしてパイルドライバーにかけて里桜を畳にたたき落とした。

「な、何の音ですか・・・!?」

彼女が来る。

「お、着替え終わったか?」

畳に突き刺さる里桜から降りて彼女に話しかける。

「・・・戦ったんですか?」

「ああ。まあ、肩慣らしにな。といってももうダウンだがな。

着替え終わったらどこかに飯でも食いに行こう。」

「あ、はい。ありがとうございます。」

「里桜、お前は帰っていいぞ?」

「そ、そんな・・・!?」

食い物に反応して起き上がってきたか。

「里桜、俺たちも着替えるぞ。」

「ちぇっ、」

男二人で更衣室に入る。

そそくさと着替えて更衣室とシャワー室のかぎを閉める。

「さて、帰るか。」

荷物持ちを里桜に任せて彼女に言う。

「・・・ありがとうございます。」

「ん?」

「私のために貴重な休日を削っていただいて…。」

「いいさ。次の稽古は明日だ。

4日連続で稽古になったがいいか?」

「私は構いません。」

「そうか。里桜、お前は?」

「無理っす。」

「そうか。来てくれるか。」

「強制なら聞かないでくださいよ。」

こんな感じの会話をしながらレストランに行った。

そして本当に里桜は駐車場で荷物番をさせることとなった。

「・・・いいんですか?」

「ああ、いいんだ。

どのみち伏見司令から配給された資金は二人分しかないんだ。

俺たち二人でいただこう。」

「・・・分かりました。」

というわけで彼女と二人で夕食をとる。

そして別れた。

「里桜、俺の家まで運んでくれよ?」

「マジっすか!?」

「断ったら・・・」

「いや、従います!その先は聞きたくないっす!」

いい弟子を持ったものだ。

まあ、かわいそうに指導の仕方がわからなかった時代に教えたからな。

いろいろ実験的にぶち込んでたからトラウマなのだろう。

まあ、いい餌だ。

しかし、里桜の言うとおり後2週間を切っている。

そのわずかな期間で彼女が遠山を倒すというのは

ほぼ不可能に近い。

いくらなめきった遠山でも一撃で倒せなかったら勝ち目はないだろう。

その一撃も遠山とほぼ互角の実力の里桜には

初見で見切られている。

まあ、里桜はあらかじめあの技を

知っていたから対処できたってのもあるだろうが。

さて、どうなるか。


・朝か。

そういえば今日から学校だな。

だるい体を起して制服に着替えて登校する。

久しぶりの授業。

こんな足になってからは初めてだな。

斎藤とも会うのは久しぶりだな。

8時に家を出て15分して学校に着く。

教室に着くと足のことや修学旅行に行けなかったことを

周りの連中が話してくる。

まるで嫌味かと思うほどに。

まあ、本気の嫌味じゃないのはわかってるがな。

「よう、甲斐。大変らしいな。」

斎藤が話しかけてくる。

「まあ、な。とても長い一週間だったよ。」

金曜日に足を壊して土曜日に彼女と初めて会って

月曜日に初めて稽古をして、火曜日に伏見司令と話して、

水曜日は彼女と一番勝負をして、木曜日に遠山と出会い、

金曜日には・・・あんなイベントがあって、土曜日には合宿。

昨日は里桜と彼女の組み手。目白押しだったさ。

今日も彼女と稽古がある。

彼女にとっては4連日稽古で疲れるだろうが、

そうでもしないと、彼女は遠山に勝てない。

「斎藤、お前伏見道場の遠山を知っているか?」

「遠山?あのチャンピオンか。」

「ああ。彼女の対戦相手だ。」

「おいおい、遠山相手か。今の俺でも何とか勝てるかってレベルだぞ?」

「・・・わかってる。彼女じゃ勝ち目は極めて薄い。

だけど俺は彼女に、赤羽美咲に懸けることにしたんだよ。」

「…相変わらずな奴だな、お前は。」

確かに10人が10人は彼女に勝ち目はないと答えるだろうな。

それでも俺は懸けるさ、赤い零に。


・道場。学校が終わったのがいつもよりちょっと遅かった。

おかげで約束の時間より遅れてしまった。

道場の前に彼女がいた。

当然いつもの真紅の胴衣ではなく、なじみのある制服姿だった。

「済まない、遅くなった。」

「・・・・いえ、今日から学校と聞いてましたので。

・・・その、足は大丈夫ですか?」

「気にするな。さて、入るか。」

道場のドアを開けて二人同時に一礼をして道場に入る。

「先に着替えるか?」

「・・・はい。」

彼女が先に更衣室に行き、更衣をする。

その間に俺は暖房を入れる。

まだ1月だ。道場の中は冷蔵庫より寒い。

暖房が道場内を温かくした頃に彼女が

真紅の胴衣をまとってやってきた。

「終わりました。どうぞ。」

「ああ。」

俺は杖をつきながら更衣室に向かった。

壁に体重を預けながら制服を脱ぎ、胴衣に着替える。

服をまとめてロッカーに入れて畳部屋に戻る。

「さて、やろうか。」

「はい。」

俺にしてやれるのは彼女をあと12日間で

可能な限り強くしてやることだけだ。

そこから先は君自身の翼で羽ばたいてくれ、赤羽美咲。

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