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6話「ターゲット~赤い衝撃へ~」

SCARLET6:ターゲット~赤い衝撃へ~


・1月20日。

木曜日。

俺は前例通り図書室へ行き、数時間を過ごす。

正直気は重い。

これから世界のほぼトップである司令のところへ行って

せっかく司令から頂いた指示に逆らうことになるからな。

学校を出ると校門前に昨日の車が止まっていてすぐにスタッフが来た。

「Mr甲斐、お待ちしていましたよ。」

スタッフの指示に従って車に乗る。

はたして帰り道というのがあるかどうか。

あせっているうちに司令の事務所まで来た。

「甲斐廉、失礼します。」

一礼して入室する。

「よく来てくれた。」

司令の指示通り椅子に座る。

「答えは決めてくれたかな?」

「はい。誠に恐縮ながら私はやはりいまの生活を愛しています。

依って司令のお誘いは拒ませていただきます。」

頭を下げる。

「・・・・・」

無言。

頭を上げるのが怖い。

恐る恐る頭を上げる。

意外にも司令の表情は変わっていない。

「ふむ。そうか。ならば仕方ない。

上司といえど神ではない。

甲斐君、私は君の意志を尊重しよう。」

「ありがとうございます。」

再び深々と頭を下げる。

その時だった。

杖を持っていた右手がつい反応して杖を持ったまま後ろに振るう。

「へえ、」

何かに当たった。

振り向けばそこには中学生程度の少年がいた。

「遠山!」

「司令、こいつは司令の指示に背きました。

私が罰を与えましょう。」

「遠山といったか?

自信を持つのは言いが過信はよくないぞ。」

「どういう意味だ?けが人が!」

遠山が殴りかかってくる。

「遅い!」

が、止まって見える。

遠山の懐に入り、突き出した腕を掴んで止めて

そのまま遠山を壁まで投げ飛ばす。

「うっ!」

「司令、これはどういうことですか?」

「すまない、甲斐君。

私の道場でいま最も勢いがあるのが彼なんだ。

今日君が来ると伝えたらぜひ手合わせ願いたいと言っていたのだ。」

なるほど。

だが最も勢いのある奴でこの程度か。

伏見道場も大したことはない。

「てめぇ・・・!」

「遠山君、

悪いが君程度の実力では今俺が育てている生徒にもかなわないだろう。

暗殺まがいのことなどやめて鍛え直した方がよいのではないのか?」

「黙れ!このけが人が!」

「遠山!いい加減にせんか!」

司令の一声で彼の動きが止まる。

「すまんな、甲斐君。」

「いえ。」

「・・・おい、そこの。」

「甲斐廉だ。」

「さっきお前が育てているやつより俺が弱いとかいったな?

そいつと勝負させな。」

遠山が言う。

ふむ。

交流試合前にはちょうどいいかもしれない。

だが果たして今の彼女に勝てるのか?

さっきはああ言ったが正直わからない。

「どうした?自分の生徒に自信がないのか?」

「いいだろう。

本来なら上司に対してそのような口を利く君には厳罰が下されるのだが

下す役目は彼女に任せよう。」

「彼女?女だってのか?はっ!ははははははは!!

女ごときが俺に勝てるって?

笑わせるぜ、ったくよ。」

どうやらこの男は武道家としては失格だな。

「どうせたいしたことない女だろう?

まあ、ストレス発散にはなるかってな。

あはははははははははははは!」

その言葉は引き金となった。

「・・・おい、小僧。」

気がつけば俺は遠山を殴り倒していた。

それだけでなく頭から血を流していた。

「言葉には気をつけろ。貴様は武人じゃない。ただのチンピラだ。」

「て、てめえ・・・!」

「まだそんな口が聞けるようだな。いいか?」

遠山を片手でつかみ上げる。

「彼女のことを何も知らない貴様が、」

そのまま真上に投げ飛ばす。

「武人としての礼儀も誇りもない貴様が、」

落下してきたこの男向けて正拳突きを繰り出す。

「彼女を悪く言うな。」

男の顔面にぶち込まれる正拳突き。

直上正拳突き。一切の手加減なく我ながら見事に入った。

感覚からして鼻の骨が砕け散るのは間違いない。

下手すると頭蓋骨が陥没するかもしれない。

そのはずだったのだが

「すまんな、甲斐君。」

正拳突きは司令によって止められていた。

「くっ!」

遠山が落下する。

「司令・・・、すみません。

ついとりみだしてしまい・・・。」

「いいのだ。部下のために啖呵を切る。

よい師のあかしだ。

比べて私の方はこのような下衆を・・・。」

司令が遠山をにらむ。

かなりの殺気だ・・・。

「司令、先ほどこの男が言ったように試合を行ってもよろしいでしょうか?」

「む?」

「この男の治療機関も含めて2週間。

2月5日の土曜日に試合を行ってもよろしいでしょうか?

私の生徒にもいい教訓になります。」

「・・・いいだろう。悪いのは私の方だからな。

手配しよう。場所はこちらで指示する。」

「ありがとうございます。」

続いて遠山に向き直る。

「貴様に教えてやろう。

本当の武人の強さを。」

そう言って一礼して退室した。



・1月21日。

9時登校で図書室へ行くという生活も今日で最後だ。

連中は今日の夜ぐらいに帰ってくるだろう。

しかし俺は構っていられない。

今日も稽古だ。

あそこまで啖呵を切った以上

何としてでも彼女をあの男に勝たせないといけない。

とはいえ勝つというのはあくまでも結果の一つ。

勝つことがすべてではない。

あの男は知らないだろうが彼女は知っているだろう。


・午後16時45分。

俺は道場へやってくる。

まだ彼女はいない。

鍵を開けて一礼してから畳部屋に入る。

暖房をつけ、更衣室で道着に着替える。

「む?」

ギプスが引っ掛かってうまく着替えられないな。

しかもそこへ運悪く。

「あ」

彼女が入ってきてしまった。

今の俺の恰好はパンツ一丁。

まだ大事なところは見えていないはずだが

陰毛あたりは見えてしまっていたりする。

「・・・失礼しました。」

赤面したまま彼女は退室してしまった。

とりあえず俺は急いで道着を着て畳部屋に戻る。

「もういいぞ?」

声をかけるが畳部屋にはいない。

「外か?」

靴をはいて外へ出る。

1月中旬に道着で外へ出るのはなかなかきつく、

北風で凍りそうだ。

道場の周りを一周する。

ちょうど出入り口とは真逆。

サンドバッグが置いてある奥の間の裏。

そこに人の気配があった。

「どうした?もう更衣室使っていいぞ?」

そう言いながら角をまがったのが運のつきだった。

「・・っ!」

今度は彼女が着替え中だった。

二人して凝固。

彼女のあの真紅の道着、

およびアンダーシャツは上下一体化している。

つまり着るためには一度全裸にならなければいけないわけで・・・。

そのタイミングに運悪く出会ってしまった。

右手でアンダーシャツを、

左手でかわいらしいパンツを持っている状態。

「ひ・・・!」

まずい!今ここで悲鳴をあげられたら俺は変質者として警察に!

「よ、よせ!悲鳴は上げるなよ!?」

一瞬で彼女の背後に回り込んで口をふさぐ。

だがここでも迂闊だった。

背後に回ったら口を塞ぎそして逆の手で胸を打って気絶させるという癖。

それが今発動してしまった。

右手で彼女の口を塞げたのはいいんだが・・・。

左手が・・・なぁ?

「~!~!~!」

彼女が全力で抵抗をしているが少しきつくやりすぎたのか気絶してしまった。

「・・・あー、どうしよう。」

現在状況。

道場の裏で14歳の少女が道着に更衣。

全裸になっていたところに遭遇。

悲鳴をあげられたらいろいろ困るため口を塞ぐ。

だけどそのまま気絶。

よって今俺の手には気絶している全裸の少女。

まあ・・・なんだ。

左手がこの上ないほど幸運な体験をしているのだが・・・。

あの子のより大きいな・・・。

どうしよう・・・。

「・・・とりあえず・・・」

服を着させるか、道場へ入れるか。

少なくともこのくそ寒い中全裸はきつすぎる。

たしか窓があったはず・・・。

壁を回る。

あった。

シャワー室の窓。

えっと。

「先告するが不可抗力であると誓う。」

声に出して言っておく。

俺は彼女を腕に抱いて窓から中に入る。

すみません、

なんだかいろいろ見えました。見ました。

彼女をシャワー室の壁にもたれかかせる。

一方でシャワー室から更衣室へは別に鍵がいるため

そのまま更衣室へというのができない。

なので彼女の荷物や服などを持って入口に回り、

そこから更衣室へと来る。

シャワー室のカギを開け、電源をつける。

これでシャワー室にも暖房がかかり、シャワーが使えるようになる。

「入るぞ?」

シャワー室に入る。

彼女はまだ気絶している。

すみません、

なんだかいろいろと見えています。見ています。

「おい、大丈夫か?おい、」

彼女を揺さぶる。

「・・・ん、」

彼女が目を覚ます。

同時に

「っ!!」

勃起していたあそこに全力で蹴りを叩き込まれてしまった。

「・・・もう平気ですから。」

彼女の声がして荷物をシャワー室に入れてドアが閉まった。

「・・・早く出てください。」

「あ、ああ。」

俺は悶えながらも畳部屋まで来た。

数分後。

いつも通り真紅の道着姿の彼女が出てきた。

今日は道着だけでなく顔まで真紅だった。

「先告したが不可抗力だ。」

「・・・わかってます。

それに私の方が先に見てしまったのですからおあいこです。

な、なので互いに忘れましょう・・・。」

「・・・そ、そうだな。」

と言われてもなかなか、

いや多分ずっと記憶から消えることはないと思うがな。

「そういえば先ほどはつい蹴ってしまいましたが、そこは大丈夫ですか?」

「え?」

蹴られた場所・・・・。!

「き、気にするな。」

ああ、だめだな、今日は。

変に意識してしまって・・・。

と、とりあえず昨日のことを教えよう。


・「・・・試合ですね?」

「ああ。相手は腐っても実力者。

今の君では勝率は50%未満。

期限は2週間しかない。

気を引き締めていくぞ!」

「了解です。」

いつも通り短い返事をして稽古に取り掛かった。

その日はそれ以降目立ったことはなかった。

・・・ってか初めてまともな稽古をした日だったな。

まあ、最初の10分間くらいが犠牲になったが。

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