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13話「余熱の冷めぬうちに・・・」

SCARLET13:余熱の冷めぬうちに・・・


・彼女とともにいつもの道場にやってきた。

「いい戦いだった。」「ですが私は勝てませんでした。」

彼女の表情はいつも通りだ。だが声はやや震えている。

「まず今日の反省会だ。最初の白虎。

防がれはしたが遠山の手首は捻挫したらしい。

まあ半分成功したようなものだ。とはいえ一撃必殺を防がれた以上

正直言って1ラウンドで押し切られると思っていた。

あの最後の一撃さえなければ判定でも負けていただろう。」

「・・・偶然です。」

「かもしれないな。」

「偶然です。現に私の攻撃は数えるほどしかあたっていません。

いえ、当てるどころか攻撃するチャンスさえ

ほとんど与えてくれませんでした。」

「それでもわずかだが攻撃はできた。

そして君の数少ない攻撃はどれも奴に小さくないダメージを与えていた。

2ラウンド目だってあと30秒あれば遠山は

あのまま立ち上がれずにKOされていたかもしれない。

上出来すぎるほどいい試合だった。」

「ありがとうございます。」

「・・・傷は?」

「治療スタッフの手当てを受けたので騒ぐほどでは・・・・。」

「何回か顔面に蹴りを受けていたがそれに関してスタッフは?」

見れば額に湿布が張られている。

「明日、正確な検査をするそうです。

ただ私の体は改造を受けているので傷の治りは早い方です。」

「・・・・そうか。

・・・それで無事なら来月の試合に出そうと思っている。」

「来月の・・・・」

「初級の大会だ。普通は交流試合と呼んでいる。

交流と言っても本気の試合だ。

1ランク上の大会でも通用するほどの実力者が参加していることもある。

今の君なら優勝できてもおかしくはないが運が悪ければ

1戦目で負ける可能性もある。」

「・・・私は油断はしません。期待に応えられるよう全力を尽くします。」

「・・・・・ああ。

ところで、立ち入った話だが君が三船で受けた改造の内容とは?」

「・・・・。

まず、緊張したり冷静さを欠いたりしないように感情の抑制を受けました。

次にいつでも100%の運動を発揮できるように

筋肉の痛覚や疲労感覚を麻痺させています。

最後に傷の治りをやや早めにしています。」

「・・・マイナスの症状は?」

「その・・・・第二次性徴の阻害を・・・。

改造を受けたのが12歳の頃なので

それからあまり成長がしなく・・・・。」

「・・・・・。」

その割にはバストはなかなか。けど確かに下は・・・・。

「・・・・・変なことは考えないでください。」

「読心能力も持っているのか?」

「・・・・・女の勘です。

・・・・で、マイナスの症状ですが戦闘中は常に100%を発揮するために

そのあとの疲労が強めです。今も頭がくらくらしています。」

「そうか、すまない。なら、今日はもうこのくらいにして休むとするか。

明日、検査の結果をメールで教えてくれ。

で、あさってからは大会に向けた稽古を始める。」

「了解です。」その後、俺たちは分かれそれぞれの帰路に起った。

彼女の姿が見えなくなってから

「里桜!」

「・・・気付いてましたか。」

陰に隠れていた馬鹿弟子を呼ぶ。

「あの後どうなった?」

「はい。道場の連中はあの子のうわさを始めてますよ。

負けたとはいえあの遠山を相手にあそこまで善戦しましたからね。

その遠山の方はさっき先輩が言ったように手首をねん挫しています。

脳震盪の方はもう平気みたいです。」

「・・・・そうか。」

「けどいつの間に送熱なんて技教えてたんですか?びっくりしましたよ。」

「昨日だ。まあ昨日の今日だから相手に与えるダメージよりも

自分が受ける負担の方が大きい技になったがな。」

「それでも俺はまだ送熱できないっすからたまげたもんですよ。」

「お前、来月の交流試合には出るか?」

「いや、出ませんよ。

一応言っとくと俺遠山とほぼ互角っすよ?

交流試合なんて出ようとしただけで罵倒されますよ。」

「・・・お前そんなに強かったっけ?」

そんなこんなで初陣の日は終わった。


・2月20日。あの試合が終わった次の日の朝。

彼女は今日は検査をすると言っていた。

あの戦いの後だから少し心配だが大丈夫だろう。

そう思っていたらスタッフが来るまでやってきた。

「Mr.甲斐、道場までお願いできますか?」

「え?今からですか?」

「はい。大倉会長から招集がかけられました。」

「会長から?」

なら無下にはできないな。急いで着替え、スタッフの後を追う。

大倉道場。俺が通っていた道場だ。

今は里桜が通っている。

一応現在彼女・赤羽美咲の身柄もこの大倉道場にあるだろう。

「失礼します。」

道場へ来る。日曜日だからか人気は少ない。

「おお、来てくれたか。甲斐君。昨日はお疲れだったね。」

「いえ。自分は何も・・・。」

「君に預けた甲斐があったものだよ。

里桜君から話を聞いてね、彼女を来月の交流試合に出したいそうだね。」

「はい。今の彼女の実力なら問題ないと思います。」

「私もそう思うよ。

ただ今彼女の身柄は一応大倉道場のものだが正式ではない。

だから彼女には試合までに入門審査を受けてもらわないといけない。」

会長より資料を受け取る。

「これを受ければ彼女は正式に大倉道場生徒になるのですね?」

「うむ。」

「・・・・それは彼女に決めてもらいます。

過去はどうであれ彼女は三船道場の生徒でしたから・・・。」

「・・・・さすがだね。審査は一週間後に行う。

それまでに彼女に聞いてくれ。」

「はい。」

その時だった。

「へえ、あの子赤羽美咲っていうんだ。」

「!?」

突如少女の声が響く。

見れば俺と会長のすぐ横に一人の少女が立っていた。

「いつの間に・・・・!?」

「気付かなかった?死神もたいしたことないね。」

「君は確か、馬場の・・・・・。」

馬場・・・・・馬場家か。大倉道場きっての空手名家。

俺はそこの二男・馬場早龍寺にこの右足を・・・・。

「君は?」「私は馬場久遠寺。10歳。

小学5年生。オレンジ帯。何か質問ある?死神さん。」

「オレンジ帯で10歳?」

そんな奴の気配に俺は、いや会長ですら気づかなかったのか!?

「久遠寺君、何か用かね?」

「ごめんね会長。私今度の交流試合の出席届出すの忘れてた。」

「君、今度の試合に出るのか?」

「出るよ。私今度の試合が初めての試合だもん。はい、これ。」

彼女が出席届を提出し、わざとらしく音を立てて道場を去って行った。

「・・・・彼女は君の右足を砕いた馬場早龍寺の一番下の妹だ。」

「・・・やはり。」

「ただ、彼女は強い。今までに類を見ないほどの天才だ。

まだ入門して半年だが私が知る限り一度も敗北していない。」

「・・・・とんだライバルがいたものですね。」

おそらく彼女と戦うことになるだろう。

明らかに馬場久遠寺よりも遠山の方が格上のはずなのにどうしてだか、

馬場久遠寺には勝てない予感が俺を襲っていた。

「・・・・さて、赤羽美咲君の検査は昼前には終わるはずだ、

彼女に会うかね?」

「あ、はい。」

ともあれ、今は彼女の容体が気になるか。

俺はまたスタッフの車の世話になって

彼女が検査を受けている特別病院へと向かった。

途中里桜を見かけたので拾うことにした。

「なんで俺が!?」

「ついでだ。ところでお前馬場久遠寺って知ってるか?」

「馬場久遠寺?ああ、半年前に入ったばかりの子ですね。

何でも一度も負けたことがない見たいっすね。」

「彼女、そんなに強いのか?」

「俺も直接会ったわけでも直接戦いを見たわけでもないですけれど

あの子と戦った相手は皆

{久遠の時をさまよった}

とか言って気絶していたらしいですよ。」

「久遠の時?」

彼女は試合は初めてだと言った。

つまり彼女の戦いとは練習試合もしくは普通のスパーリングだろう。

それなのに相手を気絶させてしまえるとは。

いったい彼女には何があるんだ・・・・?

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