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冬の狼  作者: CANDY
欺瞞の章
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Act80 笛を吹く者

 ACT80


 樽の部屋を抜けると、狭い石の通路になった。


 空気の流れはあるのだが、相変わらずの闇だ。

 ワインの樽は殆どが壊れていた。

 中身が樽からこぼれていたり、残った物は饐えていた。

 レイバンテールは、ワインを取り扱っていたのだろう。

 そこここに、酒瓶が積まれている様子を見れば、大規模な物だった想像がつく。

 陶器の破片と腐った何かで溢れている様子から繁盛とはほど遠いようだが。


 何かがあってこうなったのか。

 何もなくとも、経営は破綻していたのか。

 私は暗闇の中で、物の隙間を警戒しつつ思う。




 馴染みの気配がする。



 魔の気配だ。


 これは頭上で行われている呪による気配なのだろうか?


 あの怪人の言う、理がここでも失せようとしているのか?


 人が人である事を唾棄する行為があると、告げているのだろうか?





 やがて通路が分岐した。


 右は静か、左は風が流れてくる。

 エリは、静かな方に踏み出した。

 石の通路は更に狭くなり、小さな扉にたどり着いた。


 鋼鉄の扉である。


 私が扉に手をかける前に、扉の小窓が横に引かれた。


 中からギョロギョロと眼が覗く。




 誰だい?だぁーれだい?

 ぼーくは、ねぇ、お腹が痛いんだよ

 だから、だぁれにもあわないのさ




 奇妙な発音の甲高い声音が扉の向こうからした。

 私が何か答える前に、小窓がピシャリと閉じた。


 エリは扉を叩いた。




 あーあ、うるさいうるさい。

 このままだと脳味噌がでてしまうよ。

 さっさと何処かへいけーってば




 エリは更に叩いた。




 しつこいなーしつこいぞ

 前の奴らとおーなじくかじってやるよ

 そうだそーだ、少しかじってやれば

 おとなしくなるさーあはははは




 奇妙な笑い声の後、軋んだ音をたてて扉が開いた。



 それは確かに青かった。

 私は隠していた小刀を抜いた。



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