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プロローグ

あなたに聞きたいことがあった。

4LDKのマンションを購入したあの時、言った言葉を覚えてる?

私が部屋数多すぎるって言った時、何て言ったか。

今でも、同じことを考えてる?


ずっと聞きたかった。

そしてまだ、聞けずにいる。



去年の11月から住み始めたこの家にもとっくに慣れた6月の終わり、今日、漸くリビングにエアコンが設置された。

マンションに移り住む前から使用していたエアコンはLDKには小さすぎて、寝室に取り付けていたから。

窓を開けるわけにもいかない雨期にたて続いた夏日の暑さにぐったりする夫に、そろそろエアコン買おうよと言ったら予想外の言葉が返ってきた。


「何処から金出すの?」


今月からパートを始めたばかりの私にはそんな余裕は当然ない。

一瞬、言葉の意味が分からなかった。


仕事を辞めたこの1年、経済的に頼らなくてはならないのは申し訳ないと思っていた。

夫は最近旅行や遊びに使うお金を出し惜しむようになったし、家のローンもあって負担が大きいのかもしれない。

だからこそ自分にかかるお金くらいは自分で稼ぎたくてパートを始めたのだけど。


「うち、そんなにお金厳しい?」


「違う、うちじゃなくて俺の金が厳しい」


心配になって聞いた私に返ってきたのは、またも理解し難い言葉だった。

家電を買うのに、夫が考えたのは『自分の』金で買うのか『家の』金で買うのかということなのだ。

それはつまり、


「ーー家のお金で買えばいいじゃない」


共有財産を持ちたくないからでは、なんて……考えすぎだとは分かっていても、マイナス思考に浸食される。


ともあれリビングには無事にエアコンが設置されたーー共有財産として。

右隣の定位置で、暑さから解放された夫は幸せそうに寛いでいる。



ねえ、聞きたいことがあるの。

あの時の言葉を、あなたはまだ覚えている?


『だって3LDKじゃ、子供が3人出来た時に困るだろ』


今でも、そう思ってる?

じゃあ何でーー……



何で、私を抱かないの?


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