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ピンチ

 1~3話を少しだけ直しました、見なくても問題ない程度です。見た目の描写っていざ文に直そうとすると、少なくて伝わらないか、多すぎてくどくなるか、どれだけ文字をつぎ込んでも伝わらないかがほとんどだと思います。


 前回のあらすじ:神様にチートをもらい異世界にやってきた一義は、お供として1人の少女を連れ旅立ったのであった。

 夕日の沈み始める時間、30前後に見えるスーツ姿の女性、岡崎が、膨らんだビニール袋を右手にコンビニの自動ドアをくぐる。

赤く染まっていく世界に目を細め、駐車場に停めてある白い車に向かって歩き始めたとき、ポケットの中のケータイからメールの着信音が響いた。

 岡崎は、ビニール袋を右手から左手に持ち直した後、ケータイを取り出し受信ボックスを開く。そこには見慣れないアドレスが記されており、件名には『一応、決めました』とある。

「誰から?」

 岡崎は、そう呟きながらメールを開く、そしてそこに書いてある本文に、おっ、と小さく声を上げ微笑みながらケータイを閉じ、一言、ここに居ない青年に言葉を送った。

「まぁ、がんばれ」




「……それで、どうしようか?」

『どうするも何も、他のプレイヤーを探すんでしょ?』

 一義は、普段あまり訪れないような、人の多い駅の近くで、ケータイを片手に道の隅を歩いていた。駅の近くとは言っても今一義が居るのは、閉じられたシャッターの多い、あまり人通りのない通りなのだが。

「それは、そうなんだけど…」

 戦いに参加すると決めた日から2日、今二人はサーチで調べた結果、比較的近く、プレイヤーのマークも多い休日の午後の街でプレイヤーを探している、いるのだが。

『何でさっきから、微妙に逃げてるの?』

「うっ」

 サーチで地図を確認しては、他のプレイヤーから離れたり近づいたりを繰り返している一義に、マイの言葉が刺さる。

「いやその、心の準備と言うか…なんと言うか」

 ここまで来ても煮え切らない一義の態度に、ケータイの向こうから小さく息を吐く音が聞えた。

「わかってる、大丈夫、ちゃんと戦うから」

 マイの溜息に言葉を返しながら、それでも一義は、仕方ないじゃないか、と思う。

 そもそも、一義は本当は自分から相手に近づく気は無かった、しかし、それでは不確実な上にSPが少なくなれば戦闘にも支障が出る、と言うマイの説得により仕方なく街に繰り出しているのだ。

 一度きちんと決心したこととは言え、緊張はするのだから仕方ない。ただ、当然このまま何もせず帰るつもりは無い、そうしている間にも自分の寿命は減っていくのだから。一義はそこまで考え、先ほどから何度も確認しているケータイの画面をもう一度見直す。


『SP618』『残り431』


 正直に言えば、未だに一義はこんな数字が自分の命を示している実感は湧かなかった。しかし、物は試しでSPが尽きるまで待ってみたら結局死にましたー。なんてことには流石になりたくない。文字通り戦わなければ生き残れないのである。

「でも仮に戦ったとしても、本当に勝てるのかな?」

 一義は、これから戦いに赴くなど考えられないほど縁起でもない事を言う。

『大丈夫、SPはたくさんあるから』

 まるでスキルさえ使えれば勝てるとでも言いたげなマイの言葉に、一義は前回の猿との戦いを思い出しながら、胡散臭そうにケータイに話しかける。

「でも、この前も結構ギリギリだったんじゃ……最後はスキルでゴリ押しだった気がするし」

『だから、今回もそうすればいいの。自慢じゃないけど、私はあのスキルだけは強いよ』

 スキルだけ・・とはどう言う事なのか。しかも、あの・・などと言ったら、まだ見ぬ他のスキルも大したことがないように聞えてしまう。

「じゃあ他のスキルはどんなのなの?」

 一義は、ケータイの向こう側で少し答えに詰まったような雰囲気を感じた。

『えっと、……ナイフとか出せるよ』

「そっか、ナイフとか……え?」

 一義の口から出た言葉に、マイは少々慌てたように付け足す。

『ナイフって言っても唯のナイフじゃないよ?魂を切れるナイフ』

「そっか、普通の刃物じゃ駄目なんだ?」

 一義の疑問にマイは頷いて、説明を始める。

『普通に使ってる刃物とかは、向こうじゃ物は切れないよ。向こうは魂だけの世界だから、魂の無い服とか持ち物は一見きちんと機能してるように見えるけど、あくまで見えるだけ。本来の役割を果たすことは出来ないみたい』

「へぇ、そうなんだ」

 なんとなく自分の服を摘まんで広げながら話を聴いていた一義が、でも、と続ける。

「それじゃあ結局、向こうに行けば唯のナイフじゃない?」

 一義の無情な問いにマイは、

『最後の1つは私にもよく解んない。何か強力そうなんだけど……』

スルーで対応した。

 一義はそっか、と相槌を打つと話題を変えるべく、先ほどの言葉で気になったことを訊いてみることにする。

「それで、スキルじゃなくて、身体能力とかは強いの?」

『力はわりと強いよ。それ以外は、たぶん平均ちょっと下くらい」

「え」

 これは本当に諦めた方がいいかも知れないと思い始めた一義に、マイが続けて言う。

『私みたいな人型は大抵そんな感じ。でもその分言葉で意思の疎通が出来るから、そこまで不利じゃないよ。この前だって、私が話せなかったらスキルを使うことなんて思いつかなかったでしょ?』

「なるほど、確かに」

『……もういいでしょ、そろそろ戦いに行こう』

 確かにそれは一理ある、と唸る一義にマイは、解ったらさっさとプレイヤーを探せ、と言わんばかりに急かしてくる。

 一義が、実はこの前の消えてもいいと言ったのは、演技だったのではないか、と疑い始めた頃。

 耳に当てたままのケータイから、いっそ煩いほどの着信音が鳴った。いや、一義のケータイからだけではない、全く違う着信音が近くから小さく聞えてくる。

 まさかと思い、一義はその着信音の元を探す。今一義たちが居るのは、周囲と比べればさほど人は多くない、着信音の主1人見つけることは、さほど苦労はしない。

「……あ」

 目が、合った。こぼれ出た言葉は果たしてどちらのものだったのか。示し合わせたわけではない、ただなんとなく判った。

 一義より少し年上、20歳ほどに見えるラフな格好をした青年が、戸惑ったような困ったような表情で一義を見ている。そしてそれは、一義も同じだろう。

 幸か不幸か、今までマイと話しながら歩いていたために、地図の確認を怠りプレイヤーが近くに居ることに気が付かなかったようだ。そのマイは『じゃあ、今度はすぐ呼んでね』と言う言葉を残して、ケータイの向こうから気配を消した。

 青年は逃げるでも挑みかかってくるでもなく、どうしようかと言うように視線を彷徨わせ、立ったまま動かない。

「……あぁ」

 一義はその青年の様子に、安堵とも落胆とも取れない吐息を漏らす。同じなのだと。

 考えてみれば当たり前のことだった、参加人数は600人以上、残っているのは431組。戦って打ち負かすしか生き残る術が無いのなら、まだこれだけ残っていると言うことは、つい一週間前の一義のように、戦ったことすらない人も当然居るはずだ。

 青年の反応を見るに、戦ったことが無いと言うことは無いだろうが、それでも多くて1、2回程度なのだろう。

 自分と同じ、そう一義は思った。突然こんなことに巻き込まれて、戦わなければ死ぬと言われて、半信半疑で、戸惑いながら戦っているのだろうと。そう思うと、少しは声を掛けやすくなる気がする。少しは。

「……あの」

 一義は、青年に歩み寄りながら小さく声を掛ける。

 何時ぞやの中年男性と同じ、挙動不審気味に青年に近づきながら、一義はあのときの男性の気持ちがなんとなく解った気がした。

「…あ、ああうん」

 後ずさるまでは行かなくとも、少し身を引きながら青年が答える。

「あの……」

 一義はどのように切り出そうか、向こうから切り出してくれないか、としばらく考えていたが。向こうから動く気配がないと判ると、やがてケータイを両手で持って突き出し、腰を折り、まるで卒業証書でも受け取るような姿勢で切り出す。

「……お願いします」

「…ああ」

 傍から見れば訳がわからないだろうが、青年にはきちんと意図が伝わったらしい。

 だが、それだけでどちらもそこから動こうとしない。一義は、自分から挑んだのだから、と小さく青年に確認を取る。

「え…っと、押しますね」

「ど、どうぞ」

 その言葉に、一義は腰を折った姿勢のままケータイを操作し、開いたままのメニューからバトルを押す。

 そして、またもあの感覚。吐き気すら伴うほど、頭が軽くなり重くなり、力が入らなくなり、物を考えられなくなる。


『GAME START』


 視界がはっきりした頃には、やはり世界はあの不気味な静寂に包まれていた。

 一義はその世界を目だけを動かして見回しながら、俯きがちにポケットからスマートフォンを取り出す青年に問い掛ける。

「あの……何か願いがあるんですか?」

 こんな訳の解らない戦いに参加する理由、一見何の変哲もないこの青年にも、もしかすると自分には無い、想像も付かない何かがあるのではないか。そんな期待と不安が入り混じった問い。

 青年は一義の問いに驚いたように顔を上げ、目を泳がせながら口を開く。

「え、いや、特には……」

 それも、同じ。また一義は自分でもよくわからない感情にとらわれる。青年が間違っているとは言えない、それを言えば一義も間違っていることになるのだから。しかし、それは何かいけないことのように一義には感じられた。

 だが、青年がスマートフォンを操作しているのを見て、今はそんなことを考えている場合ではないと、一義も手に持ったままのケータイに指を掛ける。


『CALL』


 どちらが早かったとは言えないが、ほぼ同時に二人の横に例のエンブレムが現れる。一義の横にあるエンブレムは言わずもがな山羊の頭蓋であり、青年の横に現れたのは、ギザギザした円のようなエンブレムだった。この前のサルのように、エンブレムからどんな相手が出てくるのか予想することは出来ない。

 いち早く穴の中から飛び出してきて、一義を庇う様な位置で相手を待ち構えるマイとは対照的に、相手のパートナーはゆっくりとその姿を見せ付けるように穴から姿を現す。

 その姿は一言で言えば銀色の大男である。金属なのか筋肉なのか、いまいち判別の付かない光沢のある2メートルほどの体躯に、腕や足など全身至る所に電動鋸の刃のような円盤が取り付けられたり、食い込んだりしている。首から上はフルフェイスのヘルメットのようなものに覆われており、その顔を窺うことはできない。近づけば荒い息遣いの1つでも聞えてきそうな雰囲気だ。

「なんか……強そうだね」

 前回の猿とは比べ物にならない凶悪そうな見た目に、一義はマイの後ろに隠れるように2、3歩ほど下がる。

 一義も、自分より小さい背中に庇われることが、悔しくも恥ずかしくもないとは言えない。しかし、これで変に出しゃばっても、彼女の邪魔にしかならないだろうことはわかっている。だから、せめてその背中から目を逸らさないように。

 一方相手のプレイヤーである青年は、一義の呼び出したマイを驚いたように見つめている。

「お、女の子って…」

 困ったように自分のパートナーとマイを見比べている対戦相手の様子に、一義はその理由を察する。向こうのパートナーのように、見るからに逞しい相手同士がぶつかり合うならまだしも、片方は角が生えているとはいえ顔は女の子である。一義でも同じ状況になれば戸惑うことは必至だろう。

 なるほど、これも人型の恩恵なのかも知れないと一義が考えていると、相手から視線を外さないマイから静かに声が掛けられる。

「行って来るから、スキルだけはいつでも使えるようにしておいて」

「う、うん。判った」

 そう言うとマイは一目散にあの銀色男目掛けて駆けてゆく。一義はその言葉に従うように、スキルを開き、以前と同じ『インパクト』にカーソルを合わせたまま、及び腰で2体のパートナーに目を向ける。

 いきなり近づいてきたマイを、銀色男は円盤の取り付けられた腕を振り上げ牽制する。あの円盤、今は回っていなくとも、あれで引っかかれれば相当痛いだろう。マイもそう思ったのか、一瞬だけブレーキを掛けその円盤をやり過ごす。

「ぁ…、シーゲル!スキルを使う前に出来るだけ消耗させてくれ!」

 つい今まで、マイを見ながら呆けていた青年が、流石に戦いが始まってまでそのままで居る訳にはいかないと思ったのか、銀色男に指示を出す。

 その指示が聞えているのかいないのか、銀色男は姿勢を低くして、無言でマイに向けなぎ払うように蹴りを放つ。見かけ以上に滑らかの身のこなしに、一義はハラハラとケータイを握り締めた。

 だがマイも、それをわざわざ受けるような真似はしない。姿勢を低くした時点でどんな攻撃が来るのか予想していたのかのように、地面を軽く蹴っただけで2メートル近く飛び上がり、空気を裂きながら迫る脚を、縄跳びの縄でも飛び越えるようにかわす。

 それを見ていると、一義はやはり彼女たちは普通ではないんだろうと思ってしまう。

 マイはただ避けるだけでは終わらず、そのまま空中で身を捻り、一義からすればどうやってやってるの、と言いたくなるような動きで、脚全体をしならせる様に蹴りを放つ。丁度、銀色男と同じような蹴りだ。

 銀色男は腕で庇うでもなく、避けるでもなく。マイの蹴りは、そのまま銀色男の側頭部に吸い込まれるようにヒットした。

 前回の猿の時は、不安定な姿勢から殴るだけでも相手は怯んでいた上、マイ本人から力に自信がある旨を伝えられている一義は、これだけ綺麗に決まれば少しくらいは余裕が出来るのではないかと考えていた。

「えっ」

 だが、銀色男はよろめくことも、ひるむことも無く、マイの脚を捕まえようと円盤の取り付けられた腕を伸ばす。

 マイがそのまま脚を掴まれ、銀色の大男に振り回され叩き付けられ、角や腕や色々なところが折れ曲がり血塗れになる、光景を想像して、一義は血の気が引き、何とかしなければと手の中にあるケータイのボタンを押そうとする。

「ふ…ぅっ!」

 だが、それよりも少し早く、マイが蹴った時の勢いそのままに脚に力をこめて、もう一度側頭部を蹴る様に反動を利用して、銀色男の魔の手から逃れた。

 地面に降り立ち、銀色男から数歩距離を置くマイに、一義は巻き込まれないように、さらに数歩後ずさりながら、疑問を投げかける。

「力には自信があるんじゃなかったの!?」

「あるよ!あるんだけど……」

 言葉の途中で身構えるマイに、一義もあの銀色男に視線を移す。

 銀色男はさほど足が速くないのか、いっそゆっくりと言っていいほどの速度で、マイに向かってくる。

「…向こうの方が頑丈みたい!」

 マイはその言葉を最後に、自らも角を揺らしながら銀色男に向かってゆく。見かけによらず好戦的なところのある少女のようだ。

「……もしかして」

 銀色の大男に向かっていく少女の背を見つめながら、一義は自身の顔の筋肉が引きつるのを感じた。


「結構ピンチってこと?」

 今回から、時々あとがきでスキルやパートナーの簡単な性能解説をしていきたいと思います。



 今回のパートナー:シーゲル


 体長2メートル超の銀色の大男。全身に電動鋸の刃がついている。

 動きは遅いが、力が強く、頑丈。

 スキルと肉弾戦を同時に駆使することで、真価を発揮する。

 モデルは、電動の円鋸。

 ジェイソンを思い浮かべながら書いたのは、ここだけの秘密。

 趣味はガーデニング。



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