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悪役令嬢ってこんな感じですよね?


「あ〜ら随分と見窄らしい格好だこと」


長く伸びた白銀の髪で美しく巻いた両サイドドリルを弾ませながら声高らかに主人公へと歩み寄る。

今日はユグドリアス王国中央学院の入学式であり、我が麗しの主人公ことアイシャちゃんとの学園生活の始まりの日なのである。

自分の生活を守るため、愛しのアイリスちゃんを愛でるため、今日この日のためにそれはもうたくさんの問題を解決してきた。

まあ詳しくは割愛するけども。


「あなた、ここがどこだかお分かりかしら?ユグドリアス王国中央学院。貴族や類稀なる才能を持つ子供達が集まる場所ですことよ?それなのにあなたときたらその服装、学生服すら買えない…のはまあいいとして、いや、どうしてそこまでボロボロなのよ…」


これからの関係性をはっきりさせるため、一発かましてやろうと近いたはよかったのだけれども、アイシャちゃんの出立ちは、あまりにひどものだった。

美しい金色の髪は乱れており、庶民がよくきている地味目のワンピースのような服をあちらこちら破かせながら、裾は砂で汚してしまっている。よく見てみれば顔にも多少の擦り傷があり、どう見ても何かあったようだ。


「申し訳ございません、フランリーゼ様…。途中で子供が誘拐されそうになっているところを助けるため、奔走している間に汚してしまったみたいで…」


ゆ、ゆゆゆ誘拐!?そんなことが起きるなんてアニメにはなかったはずなのに…


「そ、そうなのね。その子供は助けられたのかしら」


「はい!町の憲兵さんの力も借りて無事保護することができました!しかし、フランリーゼ様にこんな姿を晒してしまうなんて…学院の入学の推薦までして頂いたというのに、こんな無様を晒してしまい、申し訳ございません」


歯を噛み締めながら眉を寄せ、これ以上ないほどの屈辱と言わんばかりに跪いている。

こ、こんな顔もするんだ…初めて見た。まあ元の素材が良すぎるので、そんな表情もとても絵になってしまっている。

可愛いってすごいな。


「…おほん。何をそこまで悔いているのかは知りませんが、あなたを推薦したのは私です。この私のメンツ、誇りのためにも貴女の優秀さを証明していただかなければなりません。なのにその姿では、笑いものにされる程度ならまだしも、式場から追い出されてしまう可能性すらあります。

ティア、彼女のサイズに合う制服を用意してちょうだい。ルミアは私の名前を出していいので学園の入浴施設を借りる許可を取ってきなさい」


流石にこのカッコのままで出席してもらうわけにはいかないので、後ろに控えている私のメイドたちに動いてもらおう。


「そんな!フランリーゼ様には数え切れないほどの恩がございますのに、私のためにそこまでしていただくわけにはいきません!」


意外と頑固だな…そこも可愛いけど。

そうだ!ちょうどいいし、悪役令嬢っぽいこと言ってみよう!


「…惨めで哀れなあなたにおしえてあげる。この私はフランリーゼ・ウィルベリー。ユグドリアス王国の侯爵家の娘であり、貴族の誇りを尊ぶもの。なれば誰よりも貴族の信念体現すべきですわ。そんな私にとってあなたに施すことなど、トーストを作るよりも簡単で、ジャムを塗ることより些細なことなのよ。わかったならその貧相な出立ちを改めることね!」


左のドリルを手で払いのけ、右手を口元へと当てるそして高らかに!


「おーほっほっほ!」


決まった。

ここまで完璧な高笑いができるなんて、これぞまさに悪役令嬢。今まで慣れない事を続けてきた甲斐があるというもの。

やっていることは全く悪役ではない気はするけれど、どうせ学園生活で嫌というほど虐めることになるわけだし、多少の施しはいいよね。ていうか、流石にあのまま放置するわけにもいかないし…大丈夫大丈夫。まだ全然軌道修正できる。はず。


「随分と賑やかだけれど、僕の婚約者様がまた何かしでかしたのかい?」


高らかにオホホ笑いをしていたら横から聞き馴染みのある声が聞こえてきた。


「あらアルトラン殿下、ご機嫌麗しゅう」


「ああ、おはよう。今日もフランリーゼはとても楽しそうだね。君の朗らかな声を聞いていると、僕まで元気が出てくるよ」


にこやかに爽やかスマイルを振り撒くお陰で周りにいたお嬢様方から黄色い声が聞こえてくる。

目をハートにしながら殿下に熱い視線を送るレディの多いこと多いこと。

まあ、気持ちはわかるけど。

輝く金色の髪に、しなやかな体、少し高めの声はその美しいお顔と相まって、中性的な妖しさを持っている。まごうことなき美少年。

乙女ならば誰もが恋をしてしまいそうではあるが、私からしてみると、私の将来を左右するお人であり、生死を握っているといっても過言ではないお方である。

できれば婚約者になんてなりたくはなかったけれど、なぜか殿下に名指しで指名されてしまい、甘んじて関係を受け入れざる終えなかった。

正直私の奇行を見れば勝手にさっていくだろうと思っていたのに、なぜか今日に至るまで婚約解消という話が流れてこない。相当な物好きなのか、何か狙いがあるのか。


「私の声で殿下を元気付けられたというのなら光栄ですわ。さあ、ここでこうしていても仕方ありませんし、アイリス、貴女は私のメイドについていきなさい。成績最優秀者のスピーチに遅刻したら許さなくてよ?」


「かしこまりました、フランリーゼ様。必ずあなた様の期待に応えて見せます。この命にかけて」


いや、命までかけてくれなくて構わないのだけれども。


「殿下は私と共に、講堂へと向かいましょう。みなさん、お待ちになられているはずですわ」


「殿下ではなく、アルと呼んで欲しいと言い続けているのに」


少し寂しそうな顔をした後、私に向き直り、王子は私に手を差し出す。


「エスコートをさせてもらえるかな?レディ」


本物の王子様がこういう事をやるとこうも絵になるのか…美しすぎて目が焼けそうだ。

流石に少し照れるが、この誘いを断れる乙女がいるのだろうか?いや、いない。


「え、ええ、もちろんですわ」


伸ばされた手をそっと取り、学園の講堂へと向かう。入学式にが行われるその場所へ。

この世界の“記録”を見てから今日この日まで、10年の間、緻密に計算し、計画を立て、実行に移してきた。

3年後、断罪されるその日が来るまで、悪役令嬢、全うさせていただきますわ!



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