合流
大広間へ続く通路を駆け抜けるルカたち。
ソジュンを背負ったオーランド。
その横を走るアクア、アリス、雪梅。
そして回復を受けたルカ。
先ほどまで消耗していたはずの足は、今は驚くほど軽かった。
「急ごう!」
ルカが叫ぶ。
遠くから聞こえる爆音。
壁を揺らす衝撃。
先発隊が今も戦い続けている証だった。
そして――
ついに大広間へ辿り着く。
その光景を見た瞬間。
全員の表情が凍り付いた。
「なっ……!」
巨大な鉄球が空中を唸りながら飛び回っている。
黒縄が生き物のように蠢き、あらゆる方向から襲い掛かっていた。
ビルは炎の大剣を振り回しながら回避し続けている。
レオの死霊軍団は半数以上が破壊されていた。
エディの森も無残に薙ぎ倒されている。
アルクの服は裂け、肩から血が流れていた。
セドリックも肩で息をしている。
誰もが満身創痍だった。
「みんな……!」
ルカが思わず叫ぶ。
その声にセドリックが振り返る。
「ルカ!?」
「無事だったか!」
安堵した表情を浮かべる。
しかし。
その瞬間。
玉座の前に立つゼノスがゆっくりと視線を向けた。
「ほう」
紫色の瞳が細くなる。
「長引かせたせいで応援が来たか」
ゼノスはルカを見る。
まるで獲物を見つけた猛獣のような目だった。
「夜魔法使いもこちらへ来たことだし……」
禍々しい魔力が溢れ出す。
空間そのものが悲鳴を上げた。
「そろそろ――」
巨大な魔法陣が展開される。
「とどめだ」
全員が息を呑む。
ゼノスは静かに宣言した。
「第四の地獄」
魔法陣が青く輝く。
「――叫喚」
ドゴォォォォォォン!!
大広間全体を巨大な青炎が包み込んだ。
「うわぁぁぁぁぁ!!」
「くっ!!」
轟音と共に炎の壁が立ち上がる。
それは普通の炎ではない。
魂そのものを焼くような異質な炎だった。
床も。
壁も。
空気さえも燃えている。
逃げ場はない。
セドリックは即座に杖を掲げた。
「水魔法!」
巨大な水流が発生する。
『アクア・テンペスト!!』
大量の水が青炎へ叩きつけられる。
だが。
ジュワァァァァァァッ!!
水は触れた瞬間に蒸発した。
「なっ!?」
セドリックが目を見開く。
蒸気だけが辺りに広がる。
全く鎮火できない。
ゼノスは不敵に笑った。
「無駄だ」
「地獄の炎はその程度では消えん」
青炎はさらに勢いを増す。
ビルが歯を食いしばる。
「まずいぞ!」
レオの闇障壁も徐々に焼かれ始めていた。
誰もが焦る中。
一歩前へ出た人物がいた。
アリスだった。
白銀の髪を揺らしながら冷静に炎を見つめる。
そして。
「セドリック」
「雪梅先生」
二人へ声をかけた。
セドリックが振り向く。
「どうした!?」
アリスは静かに言った。
「雪梅先生の光魔法と、セドリックの水魔法を合わせます」
「そして、合わせた水に私の氷魔法を加えてください」
雪梅が理解したように目を細める。
「なるほど……!」
アリスは頷いた。
「光魔法で水を聖水化する」
「その聖水を私の氷魔法で凍結」
「地獄の炎を封じ込めながら、溶け出した聖水で内側から浄化するんです」
セドリックが目を見開く。
「氷の中に聖水を閉じ込めるのか……!」
「そうです」
アリスの瞳が真っ直ぐ炎を見据える。
「一気に消火はできません」
「でも炎の勢いは確実に弱められます」
雪梅が微笑んだ。
「いい考えね」
杖を構える。
「やりましょう」
セドリックも頷く。
「全員!」
「アリスの援護だ!」
ルカたちも即座に動き出す。
ビルは炎を斬り払い。
レオは死霊を展開し。
エディは植物の壁を作り。
アルクは風で炎の流れを逸らす。
そして中央で。
アリス。
セドリック。
雪梅。
三人の魔法陣が重なった。
水。
光。
氷。
三つの属性が共鳴する。




