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手の届く範囲で世直し  作者: 慈架太子


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第8章: アズラ大陸の邪神


「私はアズラ大陸の使者、ジャマル。我が大陸では、神々が直接統治しています」

「神々?」リーザが眉をひそめる。

「はい。レベル100を超える存在が十二柱。彼らが大陸を支配し、人々を奴隷のように扱っています」

カインが鑑定魔法を試みる?だが、情報が取得できない。距離が遠すぎるのか。

「助けを求めに来たのか」

「はい。希望の光クランの噂は、海を越えて届きました。どうか...」

フィンが溜息をつく。「レベル100超えが十二体...今までで最強の敵じゃねえか」

カインは少し考えてから、頷いた。

「行くぞ。まだ、俺たちの戦いは終わっていない」


「準備が必要だ」カインが全員を集めた。

「レベル100超えを相手にするには、俺たちも成長しなければならない」

リーザが提案する。「新大陸に残っている魔物を狩り尽くすか?」

「それだけでは足りない」ルナが計算する。「レベル70から100まで上げるには、膨大な経験値が必要です」

マルコが報告書を開く。「各国の魔物間引きギルドが討伐した魔物は、すべてアイテムボックスに保管しています。数万体分」

「それを全て使って訓練する」カインが決断する。「希望の光1のメンバー全員、レベル100まで上げる」

「時間は?」

「三ヶ月。その間、シルヴィアたちに世界の運営を任せる」

過酷な特訓が、始まろうとしていた。


三ヶ月間の特訓が始まった。

未開の荒野に訓練場を設置。マルコが保管していた魔物を次々と解放する。

オーガ、トロール、ワイバーン、ドラゴン?数万体が一斉に襲いかかる。

カイン、リーザ、フィン、エリス、ルナ、セレナの六人だけで、全てと戦う。

「グラビティ!」「テレキネシス!」「アースクエイク!」

魔法を連発し、数百体ずつ倒していく。疲労が限界に達しても休まない。エリスが回復し、また戦う。

一ヶ月目、レベル80到達。

二ヶ月目、レベル90到達。

そして三ヶ月目?

カイン:レベル75→100

リーザ:レベル77→100

フィン:レベル69→95

エリス:レベル68→94

ルナ:レベル72→98

セレナ:レベル68→93

「レベル100...」カインが拳を握る。「これで、神々と対等に戦える」


「待て」カインがシステムを確認する。「レベル100で止まらない...上限がないのか?」

視界に新しい表示が現れた。

『レベル上限:なし』

『現在の成長速度:通常の10%』

「レベル100を超えると、成長が極端に遅くなる」ルナが分析する。「でも、上を目指せる」

「なら、続けるぞ」

さらに三ヶ月、訓練を継続した。より強力な魔物を召喚し、限界を超えた戦闘を繰り返す。

六ヶ月後?

カイン:レベル100→120

リーザ:レベル100→118

フィン:レベル95→110

エリス:レベル94→109

ルナ:レベル98→115

セレナ:レベル93→108

「レベル120...神々を超えた」


「邪神どもを狩りに行くぞ」

カインが剣を...いや、もう剣は持たない。両手だけで十分だ。

「レベル100超えの神を名乗る存在が、人を奴隷にしている。許せん」

リーザが頷く。「神だろうが何だろうが、テレキネシスで首を捻れば死ぬ」

六人がアズラ大陸へテレポート?座標が分からないため、空飛ぶ船で向かうことにした。

ジャマルが案内する。「十二柱の神々は、それぞれ都市を支配しています。最も強力なのは主神ラグナロク、レベル150と言われています」

「150か」カインが笑う。「俺たちが120。数で押せば勝てる」

船が大海を渡る。

数日後、巨大な大陸が見えてきた。上空には、神々しい光を放つ十二の塔が聳えている。

「到着だ。狩りを始めるぞ」


船が最も近い塔の上空に到着した。

「まずは一柱ずつ倒していく」

塔の頂上に、金色の鎧を纏った巨人が立っていた。

『雷神トール』

『レベル:105』

「下等な人間が、神の領域に踏み込むとは」トールが雷を纏った槍を構える。

カインが冷笑する。「神?ただのレベル105じゃないか」

「全員、グラビティ」

六人が同時に発動。トールが地面に押しつぶされる。

「な、何だこの重力...!」

リーザとルナがテレキネシスで両腕両足を同時に折る。ゴキリ、バキリ。

「ぎゃあああ!」

戦闘時間、十秒。

「神も、案外弱いな」フィンが呆れる。

「次だ」


二柱目、三柱目と次々に倒していく。

『戦神アレス』レベル110?グラビティで押さえ、テレキネシスで首を捻る。即死。

『海神ポセイドン』レベル115?サイコキネシスで岩をぶつけ、アースクエイクで沈める。

『死神ハデス』レベル118?六人総攻撃で瞬殺。

半日で八柱を討伐した。

残るは四柱。そして主神ラグナロク。

「神々が殺されている...!」大陸中が恐慌状態に陥る。

最後の塔、中央神殿にラグナロクが現れた。

『主神ラグナロク』

『レベル:150』

巨大な翼、六本の腕、三つの顔を持つ異形の姿。

「よくも我が眷属を...貴様ら、何者だ」

「希望の光クランだ」カインが答える。「お前たち邪神を、狩りに来た」


「邪神だと...?」ラグナロクが激怒する。「我は創造神!この世界を創った存在ぞ!」

「嘘をつくな」カインが冷静に言う。「お前はただの強い魔物だ。人を支配して神を名乗っているだけ」

「黙れ!」

ラグナロクが六本の腕から光線を放つ。六人がバリアで防ぐ。

「全員、グラビティ!」

六人の重力魔法が集中する。だが?ラグナロクは膝をつくだけで、完全には押さえられない。

「レベル差30...効きが弱い」リーザが舌打ちする。

「ならサイコキネシスだ!」

周囲の建造物を全て浮かべ、サイズで巨大化。数百個の岩塊が一斉にラグナロクに叩きつけられた。

『HP:800000→650000』

「効いているぞ!」


「アースクエイク!」

カイン、リーザ、ルナが同時発動。神殿全体が激しく揺れた。

ラグナロクが体勢を崩す。その隙に?

「テレキネシス!六本の腕を全て折る!」

六人が念動力を集中させる。ゴキリ、バキリ、メキメキ?

「ぐおおお!我が腕が...!」

六本全ての腕が不自然な角度に曲がった。

『HP:650000→400000』

「まだだ!翼を潰せ!」

サイコキネシスで巨大な岩を翼に叩きつける。翼が砕け、ラグナロクが飛行能力を失った。

「貴様ら...ただの人間が...神を...!」

「何度も言うが、お前は神じゃない」

カインが最大出力のグラビティを発動。

ラグナロクが地面に完全に押しつぶされた。


「トドメだ!全員、最大出力!」

六人が残る魔力を全て解放した。

グラビティが限界まで強化される。サイコキネシスで無数の岩塊が降り注ぐ。テレキネシスで三つの頭を同時に捻る?

「我は...不滅...我は...神...」

ゴキリ。

三つの首が全て折れた。

『主神ラグナロク 討伐完了』

巨体が光に分解されていく。

そして?

『レベルアップ!』

カイン:レベル120→135

リーザ:レベル118→133

フィン:レベル110→125

エリス:レベル109→124

ルナ:レベル115→130

セレナ:レベル108→123

「一気に15レベル...!」

神殿が崩壊していく。奴隷として囚われていた人々が、鎖から解放されていく。

「自由だ...神が倒された...!」

歓声が、大陸中に響き渡った。


「まず食事を取らせろ」

カインがアイテムボックスから大量の肉を取り出した。これまで狩った魔物の食用部位。

解放された数万人の人々に配っていく。

「食べ物...本物の食べ物だ...」痩せ細った人々が涙を流しながら食べ始める。

「神々は最低限の餌しかくれなかった...こんな美味しい肉、生まれて初めて...」

エリスが浄化魔法で水を作り、ルナが火を起こす。即席の炊き出しが始まった。

ジャマルも手伝っている。「これで、私の故郷も救われた...」

数時間後、全員が満腹になった。顔に血色が戻り、笑顔が見えるようになった。

「ありがとうございます...恩人様...」

「礼はいい。明日から、この大陸も変えていく」


翌日から、アズラ大陸の再建が始まった。

「希望の家を十カ所建設する。シルヴィア、人を派遣してくれ」

アルトハイムから指導者百人がテレポートで到着した。基礎学校、専門学校の設立を開始。

「魔法を教える。全員レベル20まで育てる」

解放された人々は飢えて学ぶ意欲に満ちていた。一ヶ月で基礎魔法を習得し、二ヶ月でレベル20に到達した。

神々が残した富を没収し、人々に分配。農地を開拓し、自給自足の体制を整える。

三ヶ月後?

アズラ大陸にも平和が訪れた。

「これで世界中が...」リーザが満足げに言いかけた時?

空が裂けた。

巨大な裂け目から、黒い影が溢れ出してくる。


「何だ、あれは...!」

空間の裂け目が広がっていく。黒い影が無数に溢れ出し、形をとり始める。

カインが鑑定する?だが、エラーが表示される。

『ERROR:測定不能』

「レベルが測定できない...?」

影の中から、巨大な目が六人を見据えた。

「やっと...見つけた...」

低く、世界を震わせる声。

「この世界を...何度も...救った者たち...」

影が人型になる。全身が闇で構成された、身長百メートルの巨人。

「私は虚無の王。全ての世界を無に還す存在」

リーザが警戒する。「レベルは...?」

虚無の王が笑った。

「レベル?そんなものは意味がない。私は概念だ。破壊そのものだ」


「概念だろうが何だろうが」カインが手を上げた。「グラビティ」

六人が同時に重力魔法を発動?

だが、虚無の王は微動だにしない。

「無駄だ。物理法則は私には通じない」

「なら、これはどうだ!」

サイコキネシスで巨大な岩を投げつける。岩が虚無の王に触れた瞬間?消滅した。

「私に触れたものは、全て無に還る」

テレキネシスも、アースクエイクも、全ての魔法が効かない。

「どうやって倒す...」フィンが焦る。

虚無の王が手を伸ばした。触れられた地面が、音もなく消えていく。

「逃げろ!」

六人が飛行魔法で回避する。だが、虚無の王の手が追ってくる。

「このままでは...」


「待て...システム介入だ」

カインが両手を広げる。視界に世界のコードが展開される。

「お前が概念なら、このシステムに登録されているはずだ」

無数の文字列が流れる。世界の根源プログラム。その中に?

『虚無の王:破壊概念』

「見つけた」

カインが指で空中に文字を描く。削除コードを入力していく。

「貴様...まさか...!」虚無の王が初めて動揺した。

「消えろ」

最後の文字を入力する。

『削除実行:虚無の王』

虚無の王の体が光に包まれた。「あり得ない...概念を消すなど...貴様は何者だ...!」

「システムを書き換える者だ」

虚無の王が、完全に消滅した。


虚無の王が消えた瞬間、六人の体が強烈な光に包まれた。

『レベルアップ!』

カイン:レベル135→160

リーザ:レベル133→158

フィン:レベル125→150

エリス:レベル124→149

ルナ:レベル130→155

セレナ:レベル123→148

「一気に25レベル...!」

さらに、カインの視界に新しいメッセージが表示された。

『特殊権限取得:創造者権限』

『世界のシステムに完全アクセス可能』

「これは...」

カインが試しに手を動かす。空間に新しい星が生まれた。消すこともできる。

「世界を創造できる...神を超えた」

リーザが呆然と見ている。「お前、本当に何者なんだ...」


「俺も分からない」カインが手を見つめる。「ただの転移者だったのに...ここまで来た」

フィンが笑う。「神を超えちまったな」

エリスが心配そうに尋ねる。「その力で...何をするんですか?」

カインは少し考えてから、答えた。

「何も変えない。世界は人々の手で作られるべきだ。俺はもう、必要以上に介入しない」

創造者権限を封印する。システムアクセスを最小限に制限した。

「でも、もし世界が本当に危機に陥った時だけは...」

リーザが頷く。「最後の切り札として、残しておけ」

「ああ」

空の裂け目が閉じていく。平和が戻った。

「さて、アルトハイムに帰るか」


アルトハイムに戻ると、街は祭りのように賑わっていた。

虚無の王が消えた瞬間、世界中の人々が感じたらしい。何か巨大な脅威が去ったことを。

「おかえりなさい!」クランメンバーたちが出迎える。

シルヴィアが報告する。「世界は順調です。各国で民主的な政府が機能し、希望の家は五万人を超えました」

マルコが笑う。「経済も安定している。貧困率は限りなくゼロに近い」

ゴードンとグリムが新作を見せてくる。「暇だから、また作ってみた」

希望の光地区を歩く。学校で学ぶ子供たち、働く大人たち、笑い合う家族?

「平和だな」カインが呟く。

「ああ」リーザが微笑む。「ようやく、本当の平和が来た」


数日後、カインは執務室でシルヴィアと面談していた。

「正式に、世界の運営を任せる。俺たち六人は一線から退く」

「本当にいいんですか?」

「ああ。お前たちは十分に育った。レベル60、リーダーシップもある。世界を任せられる」

シルヴィアが深く頭を下げた。「必ず、この平和を守ります」

翌日、希望の光クランの総会が開かれた。五万人のメンバーが集まる。

「今日をもって、俺は引退する」カインが宣言した。「新クラン長はシルヴィアだ」

拍手が鳴り響く。

「俺たちは旅に出る。世界を見て回る。ただの冒険者として」

リーザ、フィン、エリス、ルナ、セレナが並ぶ。

「新しい人生を、始めよう」


六人は軽装で街を出た。

重い責任も、世界を背負う使命も、もう何もない。

「どこに行く?」フィンが尋ねる。

「決めてない」カインが笑う。「適当に歩こう」

森を抜け、山を越え、海を渡る。飛行魔法も使わず、徒歩で。

小さな村で一夜を過ごし、宿屋の主人と語らう。

「世界が平和になったのは、希望の光クランのおかげだって」

「そうらしいな」カインが笑う。自分たちのことだと気づかれていない。

朝、村を出る時、子供たちが手を振った。

「また来てね!」

「ああ、また来る」

道を歩きながら、リーザが呟く。

「これが...普通の人生か」

「悪くないだろう?」

六人は、笑いながら歩き続けた。


夕暮れ、丘の上で休憩していた時。

「リーザ」カインが突然、真剣な顔で呼びかけた。

「何だ?」

「お前と、これからも一緒にいたい。ただの仲間としてじゃなく」

リーザが目を見開く。

「俺と結婚してくれないか」

沈黙。

フィンたちが遠くで「おおっ!」と声を上げる。

リーザの頬が少し赤くなった。「...急だな」

「十年以上一緒に戦ってきた。急じゃないだろう」

「まあ、確かに」リーザが小さく笑う。「お前がいない人生なんて、もう考えられないしな」

顔を上げる。

「いいぞ。結婚してやる」

カインが笑顔になる。二人の手が、重なった。

遠くでフィンたちが拍手している。


「結婚式はどうする?」エリスが嬉しそうに尋ねる。

「盛大にやるか?」フィンが笑う。「世界中から人が集まるぞ」

「いや」カインが首を横に振る。「小さくていい。お前たち四人と、ゴードン、マルコ、グリム。それだけでいい」

リーザも頷く。「派手なのは苦手だ」

一週間後、希望の光地区の小さな教会で式が行われた。

エリスが司祭として祝福を与える。

「二人の未来に、光あれ」

カインとリーザが誓いのキスを交わす。

参列者は本当に七人だけ。だが、温かい祝福に満ちていた。

式の後、ささやかな宴会。

「幸せになれよ」ゴードンが肩を叩く。

「ああ」

新しい人生が、また始まった。


「お前らも誰かとくっつけや」カインが他の四人を見る。

フィンが慌てる。「え、俺?」

「そういえば、フィンとセレナはいつも一緒にいるな」リーザが指摘する。

セレナの顔が真っ赤になる。「そ、それは仕事で...」

「仕事だけじゃないだろ」フィンがニヤリと笑う。「俺もお前のこと、気になってたし」

「...本当に?」

「ああ。付き合おうぜ」

セレナが頷いた。「うん...」

次はルナとエリス。

「私たちは...」エリスが恥ずかしそうに言う。「実は、もう...」

「え?」

ルナが微笑む。「半年前から付き合ってます」

「隠してたのか!」フィンが驚く。

「言うタイミングがなくて」

全員が笑った。

六人全員、カップルになった。


「待て、ルナとエリスは女同士だぞ」カインが指摘する。

「それが何か?」ルナが堂々と答える。「愛に性別は関係ない」

エリスも頷く。「私たちは本当に愛し合っています」

リーザが笑った。「そうだな。誰が誰を愛そうと自由だ」

フィンが肩をすくめる。「俺たちが世界中の差別をなくしてきたのに、今さら同性愛を否定するわけにいかないよな」

「そういうことだ」カインが二人に向かって言う。「幸せになれ」

「ありがとうございます」エリスとルナが手を繋ぐ。

六人は、それぞれの形で愛を見つけた。


一年後、六人はそれぞれ結婚式を挙げた。

カインとリーザの結婚から始まり、フィンとセレナ、そしてルナとエリスも。

希望の光地区に、三組の新居が並んだ。

「隣人として、これからもよろしく」カインが笑う。

世界は平和なまま。希望の家は世界中で十万人を超え、誰もが教育を受け、仕事があり、笑顔で暮らしている。

ある日、エリスが発表した。

「私...妊娠しました」

「え?」全員が驚く。

ルナが照れくさそうに言う。「回復魔法を応用して...二人の遺伝子から子供を...」

「そんなことができるのか!」

「魔法なら、何でもできますから」

やがて、リーザとセレナも妊娠を報告した。

新しい命が、生まれようとしていた。


「そういえば、ゴードン、マルコ、グリムはどうなんだ」カインが三人を呼んだ。

「俺たちは仕事が恋人だ」グリムが答える。

「そんなこと言うな。お前たちにも幸せになってほしい」

リーザが各地の希望の家に連絡を取った。「独身で優秀な女性を紹介してもらおう」

一週間後、三人の女性が訪れた。

獣人の女性戦士ゴードンと意気投合。「肉の話で盛り上がってる...」

元商人の才女マルコと商売談義。「利益率が...」

ダークエルフの鍛冶職人グリムと技術論争。「この合金の配合は...」

三ヶ月後、三組とも結婚を決めた。

「みんな幸せになったな」フィンが笑う。

九人全員、家族を持った。


「世界の問題は?」カインがシルヴィアに報告を求めた。

「ほぼありません」シルヴィアが答える。「貧困率0.1%以下、識字率99%、平均寿命は魔法医療で倍増しました」

「犯罪は?」

「激減しています。希望があれば、人は犯罪に走りません」

「環境は?」

「植林計画が順調。魔物も適正数を維持しています」

「経済は?」

「全世界でホープコインが流通。貿易は活発で、どの国も繁栄しています」

マルコが付け加える。「技術も進歩している。蒸気機関の改良型が実用化され、魔法に頼らないインフラも整ってきた」

「つまり...」

「問題らしい問題は、ありません」シルヴィアが笑顔で答えた。

理想の世界が、完成していた。


「次は娯楽だ。人々に旅行を推奨する」

カインがマルコとグリムに指示を出す。「世界を高速鉄道で結べ。誰もが気軽に旅行できるように」

「高速鉄道...」グリムが設計図を描き始める。「蒸気機関と魔法を組み合わせれば、時速三百キロは出せる」

マルコが計算する。「主要都市を全て結ぶ。総延長十万キロの路線網だ」

魔法を使った建設が始まった。サイコキネシスでレールを敷き、グラビティで地盤を固める。

一年で、世界高速鉄道網が完成した。

「アルトハイムから帝都まで、三時間!」

「新大陸への海底トンネルも開通!」

人々が各地を旅行し始める。異文化交流が活発になり、世界がさらに一つになった。


「各都市に特色を持たせる。特産品と特産料理を開発し、飲食店繁華街と旅館街を作れ」

マルコが各地の希望の家と連携した。

アルトハイムは魔物肉料理。ゴードンの弟子たちがワイバーンステーキ専門店を百軒開業。

帝都は海鮮料理。海竜の刺身、深海魚の天ぷら。旅館街には温泉も掘った。

西の王国はワインと乳製品。チーズ専門店が立ち並ぶ。

南の連邦は香辛料とカレー。エキゾチックな繁華街が人気に。

新大陸は熱帯フルーツと独自の発酵料理。

各都市に百軒規模の飲食店街と、五十軒の旅館街が建設された。

「観光業が経済を押し上げてる!」マルコが喜ぶ。

世界中から旅行者が集まり、文化が混ざり合った。


「高速鉄道で陸地は繋がった。次は大陸間だ。航路を作れ」

グリムが新しい船を設計した。「サイコキネシスで浮かせ、飛行魔法で推進する空飛ぶ大型客船だ。千人乗りで、時速五百キロ出る」

マルコが航路を計画する。「主要港を十カ所設置。定期便を毎日運航する」

半年で、十隻の空飛ぶ大型客船が完成した。

「アルトハイム新大陸、六時間!」

「帝都アズラ大陸、八時間!」

船内には宿泊施設、レストラン、娯楽施設も完備。旅そのものが楽しめる。

「空の旅、最高だな!」乗客たちが窓から景色を楽しむ。

これで世界中のどこへでも、一日以内に行けるようになった。


「経済と安全は整った。次は文化だ」

カインが各国の代表を集めた。「各国で独自の音楽と演劇を開発しろ。そして、世界で競争する」

アルトハイムは交響楽団を結成。魔法で楽器を強化し、壮大な音色を生み出した。

帝都は伝統楽器と舞踊劇。和の美学を追求する。

西の王国はオペラ。圧倒的な歌唱力と演出。

南の連邦は打楽器とリズム。情熱的なダンス。

新大陸は独自の弦楽器。幻想的な音楽。

アズラ大陸は宗教音楽と神話劇。

年に一度、「世界文化祭」が開催されるようになった。各国が技を競い、観客が投票する。

「今年はアルトハイムの交響曲が最高だった!」

「いや、帝都の舞踊劇だろ!」

文化が、花開いた。


「世界中にアンケートを取れ。まだ欲しいものはないか?」

セレナが情報網を使って、百万人規模の調査を実施した。

一ヶ月後、結果が届いた。

「第一位:スポーツ施設。競技場、体育館が足りないそうです」

「第二位:図書館と博物館。知識と文化に触れたい」

「第三位:公園と自然保護区。緑と動物と触れ合いたい」

「第四位:趣味の工房。陶芸、絵画、彫刻など創作活動がしたい」

「第五位:労働時間の短縮。もっと家族と過ごしたい」

カインが頷く。「分かった。全て実現する」

マルコが計算する。「予算は十分ある。一年で全都市に整備できます」

新たなプロジェクトが始動した。


一年後、世界中に新しい施設が完成した。

各都市に十万人収容の競技場。サッカー、陸上、格闘技様々なスポーツが盛んになった。

図書館には百万冊の蔵書。魔法で文字が浮かび上がる仕組みも導入。博物館には各国の歴史と文化を展示。

公園と自然保護区が整備され、家族連れで賑わう。魔物も保護区内で共存。

趣味の工房が無料開放。誰でも創作活動ができる。

そして労働時間は週三十時間に短縮。生産性は魔法で補う。

「家族と過ごす時間が増えた!」

「趣味に没頭できる!」

人々の満足度が、さらに上がった。


「後、足らん奴は?」カインがセレナに尋ねる。

「少数ですが...」セレナが報告書を見る。「生きがいが見つからない、という声があります」

「生きがい?」

「はい。衣食住が保証され、娯楽も仕事もある。でも、何か物足りないと」

エリスが考える。「平和すぎて、退屈なのかもしれません」

「冒険や挑戦がない」リーザが指摘する。「俺たちは戦いながら成長してきたが、今の若者にはそれがない」

フィンが笑う。「魔物を狩りに行けばいいじゃねえか」

「間引きギルドがあるから、一般人が狩る必要もない」

カインが頷いた。「なるほど。挑戦の場が必要か」


「世界中にアンケートを取れ。どんな挑戦の場が欲しいか」

セレナが再び大規模調査を実施した。

二週間後、結果が届く。

「第一位:冒険者ダンジョン。難易度別の迷宮を作って、探索したい」

「第二位:技術開発競争。発明や研究で競いたい」

「第三位:極限スポーツ。登山、空中レース、深海探索など」

「第四位:芸術コンテスト。絵画、彫刻、音楽で腕を競いたい」

「第五位:料理対決。世界一の料理人を決めたい」

「第六位:未開の地の探索。まだ見ぬ土地を発見したい」

カインが笑った。「面白い。全部作ってやろう」

人々が求めているのは、安全な挑戦の場だった。


「冒険者ダンジョンってないのか?」

セレナが首を横に振る。「ありません。魔物は森や荒野に自然発生するだけで、ダンジョンという構造化された場所はないんです」

「自然の洞窟ならあるが」リーザが付け加える。「魔物が巣にしている程度だ」

カインが考える。「つまり、RPG的な階層構造のダンジョンは、この世界には存在しないのか」

「そうです。だから人々がそれを求めているんです」

「なら、作るか」カインが創造者権限を思い出す。「システム介入で、人工ダンジョンを生成できる」

「レベル別に難易度を分けて」フィンが提案する。「初心者用から上級者用まで」

「報酬も設定する。クリアしたら宝箱が出る仕組みだ」

新しい挑戦の場が、生まれようとしていた。


「システム介入で、世界中にダンジョンを作る」

カインが創造者権限を発動。世界のコードに新しいプログラムを書き込んでいく。

『新規生成:冒険者ダンジョン×100』

『難易度:初級、中級、上級、超級、地獄級』

『特殊ルール:ダンジョン内死亡時、入口で復活』

『ペナルティ:レベル半減』

各大陸に二十カ所ずつ、巨大なダンジョンの入口が出現した。

「ダンジョン内に限り、死んでも生き返る。ただしレベルは半分になる」

リーザが驚く。「それなら安心して挑戦できるな」

「初心者は初級ダンジョンで経験を積み、成長したら上の難易度へ」

フィンが笑う。「これは面白い。俺も試してみたい」

翌日、世界中から冒険者志望者が集まった。

新しい時代が、始まった。


初級ダンジョンには、若者たちが列を作っていた。

「レベル20まで育てられた俺たちでも、実戦経験がなかったからな」

中に入ると、階層構造の迷宮が広がっている。魔物が出現ゴブリン、スライム、魔狼。

「グラビティ!」「テレキネシス!」

習った魔法を実戦で使う。緊張感がある。失敗すれば死ぬでも復活できる。

一人の青年が魔狼に殺された。光に包まれ、入口で復活する。

「レベルが25から12に...!」

「慎重に行かないとダメだな」

生と死のスリル、成長の喜び人々が求めていた挑戦がそこにあった。

「生きがいが見つかった!」

ダンジョンは大盛況だった。


数ヶ月後、他のリクエストも実現していった。

技術開発競争年に一度、発明コンテストを開催。最優秀作品には賞金と量産化の支援。

極限スポーツ魔法で安全装置を施した登山ルート、空中レース場、深海探索基地を建設。

芸術コンテスト各分野で世界大会。優勝者には美術館での個展開催権。

料理対決毎月開催。観客の投票で世界ランキングを決定。ゴードンの弟子たちが大活躍。

未開の地の探索テレポート禁止エリアを設定し、徒歩で探検する冒険家たちが出現。

「退屈だって言ってた奴ら、今は生き生きしてるな」フィンが笑う。

世界は平和でありながら、挑戦に満ちていた。


「次は酒だ。各地で新しい酒を開発しろ」

ゴードンの弟子たちと、農業大学の卒業生が協力した。

アルトハイムはワイバーンの肉を使った蒸留酒。強烈だが深い味わい。

帝都は米から作る日本酒風の酒。繊細な香り。

西の王国は葡萄ワイン。何十種類もの銘柄が誕生。

南の連邦は香辛料入りのラム酒。刺激的。

新大陸は熱帯フルーツの果実酒。甘くて飲みやすい。

各都市に酒場が百軒ずつ開業した。仕事終わりに仲間と語らう場所。

「この酒、うまいな!」

「次はあの店の新作を試そう」

夜の街が、さらに賑やかになった。




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