第7章: 新大陸の魔王
新大陸へ、出発。
空飛ぶ船が海を越えていく。
六人が交代で船をサイコキネシスで制御する。速度は時速百キロ。順調だ。
二日目、海上で巨大な海竜に遭遇した。
「レベル...45」カインが鑑定する。
リーザがテレキネシスで首を捻る。瞬殺。死体をアイテムボックスに回収。
「素材になるな」
三日目、嵐に巻き込まれた。だが、バリアで船を守り、グラビティで安定させる。
四日目の朝、水平線に陸地が見えた。
「あれが新大陸か」
巨大な大陸。森、山、砂漠?多様な地形が広がっている。
そして、大陸の中央から黒い柱が天に向かって伸びていた。
不吉な魔力が、海を越えて伝わってくる。
「あれが...魔王の拠点か」
船を海岸に着陸させた。
浜辺には、ぼろぼろの服を着た人々が倒れていた。飢えと疲労で瀕死の状態。
「エリス、回復を」
エリスが治癒魔法をかける。人々がゆっくりと目を開けた。
「あなたたちは...」老人が掠れた声で言う。「外の世界から...?」
「ああ。助けを求める手紙を受け取った」
「魔王ゼノスが...三ヶ月前に復活した」老人が震える。「街を次々と滅ぼし、人々を奴隷にしている。抵抗した者は...」
言葉が途切れる。
カインが鑑定魔法で黒い柱を解析する。
『魔王城:レベル推定60+の存在を検知』
「レベル60超えか。俺たちと同格だな」
リーザが剣を抜いた。「行くぞ。また世界を救う番だ」
その前に情報が必要だ」カインが老人に尋ねる。「魔王の戦力は?」
「魔物の軍勢が数万...魔王の配下に四天王がいる。それぞれレベル50を超えていると」
フィンが口笛を吹く。「四天王付きか。本格的だな」
「この大陸に、抵抗組織はないのか」リーザが聞く。
「ある。北の山岳地帯に、反乱軍が千人ほど」老人が指差す。「だが、武器も食料も不足している」
「まずそこへ行く」カインが決めた。「反乱軍に魔法を教え、レベルを上げる。それから魔王城を攻める」
「また育成から始めるのか...」ルナが苦笑する。
「組織戦の方が確実だ。六人だけで無双するのは、もう飽きた」
空飛ぶ船が、北の山岳地帯へ向かった。
山岳地帯の隠れ里に到着した。
粗末なテントが並び、やせ細った兵士たちが武器を手に警戒している。
「何者だ!」リーダーらしき女性が槍を構えた。
「希望の光クランだ。お前たちに力を貸しに来た」
「希望の光...?聞いたことがない」
カインが手を上げ、テレキネシスで周囲の岩を浮かべた。「魔法を教える。レベルを上げる。そして、魔王を倒す」
兵士たちがざわめく。
「証拠を見せろ」女性が疑う目を向ける。
リーザが遠くの巨岩を指差す。サイコキネシスで持ち上げ、空中で粉砕した。
沈黙。
「...本物だ」女性が膝をついた。「どうか、力を貸してください。私はこの反乱軍のリーダー、シルヴィアです」
「話はそれからだ。まず食え」
カインがアイテムボックスから大量の肉を取り出した。海竜、オーガ、ワイバーン?これまで狩った魔物の食用部位。
「こ、これは...!」シルヴィアが驚く。
「ゴードンが処理した最高級品だ。腹いっぱい食え」
千人の反乱軍に肉が配られた。飢えていた兵士たちが、涙を流しながら食べ始める。
「美味い...こんな肉、生まれて初めて...」
エリスが水を浄化し、ルナが火を起こす。即席の大宴会が始まった。
一時間後、全員が満腹になった。顔色が良くなり、目に力が戻っている。
「ありがとうございます...」シルヴィアが深く頭を下げた。
「礼はいい。明日から訓練を始める」
翌朝、訓練が始まった。
「まずテレキネシスを覚えろ」
千人全員に基礎魔法を教える。六人が手分けして指導する。
最初は誰も石ひとつ動かせなかった。だが、カインの丁寧な指導で、徐々にできるようになっていく。
一週間後、全員がテレキネシス、サイコキネシス、グラビティを習得した。
「次は実戦だ」
近くの森で魔物狩りを開始。魔王配下の魔物たちが無数にいる。
千人で連携して戦う。グラビティで敵を押さえ、サイコキネシスで攻撃する。
毎日、数百体の魔物を倒していく。
一ヶ月後?
反乱軍全員:レベル0→25
「強くなった...!」シルヴィアが自分の力に驚く。
「まだ足りない。レベル40まで上げる」
訓練は続いた。
さらに一ヶ月、魔物狩りを続けた。
反乱軍は組織的な戦い方を覚え、連携が洗練されていく。百人単位でグラビティを同時発動し、敵を完全に制圧する。
カインは上位魔法も教えた。アースクエイク、サイズ、バリア?全てを叩き込む。
二ヶ月後?
反乱軍全員:レベル25→40
シルヴィアのステータスを確認する。
シルヴィア
レベル:45
HP:2100
MP:1800
「リーダーだけあって、成長が早いな」
千人全員がレベル40。もはや精鋭部隊だ。
「これで、魔王軍と対等に戦える」リーザが満足げに頷く。
「では、魔王城へ攻め込むぞ」
千人の軍勢が魔王城へ向けて進軍した。
空飛ぶ船に分乗し、黒い柱が立つ魔王城へ一直線に向かう。
地上では魔物の大群が蠢いている。数万はいるだろう。
「あれを全て相手にするのか...」反乱軍の一人が不安そうに言う。
「いや」カインが否定する。「魔物は無視する。直接魔王城に降りて、四天王と魔王を倒すだけだ」
シルヴィアが頷く。「雑魚の相手は時間の無駄ですね」
城が近づいてくる。巨大な黒い城塞。周囲には禍々しい魔力が渦巻いている。
城門の前に、四人の人影が立っていた。
「四天王か」
カインが鑑定する。
レベル:52、54、56、58
「分担して倒す」
「配置を決める」カインが指示を出す。
「レベル52はシルヴィアと反乱軍二百人で」
「レベル54はフィンとエリスと反乱軍二百人」
「レベル56はルナとセレナと反乱軍二百人」
「レベル58は俺とリーザと反乱軍二百人」
「残り二百人は城内に突入し、魔王への道を確保しろ」
四天王が嘲笑う。「たかが人間風情が...」
「黙れ」
カインが号令をかける。「全軍、グラビティ!」
千人が同時に重力魔法を発動した。
四天王が地面に叩きつけられる。「な、何だこの重力...!」
「今だ!テレキネシス!」
それぞれの部隊が担当の四天王の腕と足を折りにかかる。
戦闘開始。
レベル52の四天王?剣士タイプ。
シルヴィアと二百人がグラビティで押さえつけ、テレキネシスで関節を攻撃する。
「ぐああ!腕が...!」
ゴキリ。両腕が折れた。
レベル54の四天王?魔法使いタイプ。
フィンとエリスの部隊がサイコキネシスで岩をぶつけ続ける。魔法を詠唱する前に叩き潰す。
「詠唱が...できない...!」
レベル56の四天王?巨体の戦士。
ルナとセレナの部隊がアースクエイクで足場を崩し、グラビティで動きを封じる。
「重い...動けん...!」
レベル58の四天王?暗黒騎士。
カインとリーザの部隊が最大出力のグラビティを発動。地面に完全に縫い付ける。
「この重力...レベル60超えか...!」
五分後、四天王全員が戦闘不能になった。
四天王を倒した瞬間、全軍が光に包まれた。
『レベルアップ!』
反乱軍全員:レベル40→45
シルヴィア:レベル45→50
カイン:レベル70→72
リーザ:レベル72→74
その他主要メンバー:+2レベル
「レベル50...」シルヴィアが自分の力に驚く。
「行くぞ、魔王の元へ」
千人が城内に突入した。廊下を駆け抜け、階段を上る。
魔物が襲ってくるが、グラビティとテレキネシスで瞬時に無力化する。
最上階の玉座の間に到着した。
巨大な玉座に、黒い鎧を纏った男が座っている。
『魔王ゼノス』
『レベル:68』
「よく来たな、人間ども」低く響く声。「だが、ここで終わりだ」
「全軍、グラビティ!」
千人が同時に重力魔法を発動。魔王の体が玉座ごと地面に沈み込む。
「ぐっ...千人分の重力だと...!」
魔王が黒い炎を放つ?だが、全員のバリアが防ぐ。
「サイコキネシス!」
周囲の石柱、瓦礫、全てを浮かべる。サイズで巨大化させ?
「全弾発射!」
千人が制御する数千個の岩塊が、魔王に叩きつけられた。
ドガァン!ドガァン!ドガァン!
連続する衝撃。玉座の間が崩壊していく。
『HP:450000→280000』
「まだだ!もう一度!」
再び岩の雨が降り注ぐ。
魔王の鎧が砕け、血が飛び散る。
「馬鹿な...この私が...数で押されるとは...!」
「アースクエイク!」
カイン、リーザ、ルナが同時に発動。玉座の間全体が激しく揺れた。
魔王が転倒する。その瞬間?
「テレキネシス!全員で!」
千人の念動力が魔王の四肢に集中した。
ゴキリ、バキリ、メキメキ?
両腕両足が全て折れた。
「ぎゃああああ!」
魔王が絶叫する。だが、まだ生きている。
『HP:280000→50000』
「トドメだ!グラビティ、最大出力!」
千人が限界まで魔力を注ぎ込む。重力が10000倍になる。
魔王の体が地面に完全に押しつぶされていく。
「我は...魔王...不滅の...」
声が途切れた。
『魔王ゼノス 討伐完了』
静寂が訪れた。
全員が光に包まれた。
『レベルアップ!』
反乱軍全員:レベル45→55
シルヴィア:レベル50→60
カイン:レベル72→75
リーザ:レベル74→77
フィン:レベル66→69
エリス:レベル65→68
ルナ:レベル69→72
セレナ:レベル65→68
城が崩壊を始めた。魔王の魔力が消え、建物を支えていた力が失われる。
「脱出だ!」
全員が飛行魔法で城から飛び出した。
背後で魔王城が轟音とともに崩れ落ちる。黒い柱が消え、空が明るくなった。
地上では、魔王の支配下にあった魔物たちが次々と消滅していく。
人々が隠れ家から出てきた。
「魔王が...倒された...?」
「自由だ...!」
歓声が大陸中に響き渡った。
一週間後、大陸の各地から人々が集まった。
「あなたたちが、私たちを救ってくれた恩人ですね」解放された街の代表者たちが頭を下げる。
「礼はいい。これからが大事だ」カインが言う。「この大陸にも希望の家を作る。困窮している者を受け入れ、教育し、力をつけさせる」
シルヴィアが進み出た。「私たち反乱軍が中心となって運営します」
「頼む。俺たちはアルトハイムに戻る」
リーザが地図を広げる。「この大陸と本土を定期的に行き来する航路を確立しよう。空飛ぶ船で」
一ヶ月後、新大陸に「希望の家」が十カ所設立された。反乱軍がそれぞれの拠点を管理する。
「これで世界中が繋がったな」フィンが満足げに言う。
カインは空を見上げた。「次は...何をするかな」
アルトハイムに戻ると、希望の光地区は大きく発展していた。
クランメンバーは世界中で三万人を超えている。各国の希望の家が自律的に運営され、毎月報告が届く。
「もう俺たちが直接動く必要はないな」カインがマルコの報告書を見る。
「教育システムが確立され、各地で人材が育っています」マルコが誇らしげに言う。
グリムが新作の武器を見せてくる。「暇だから、趣味で作ってみた」
ゴードンは料理研究に熱中している。「魔物の肉、まだ試してない調理法があるんだ」
エリスは孤児院で子供たちに読み聞かせをしている。フィンは街の若者たちに盗賊技術を教えている。
リーザがカインの隣に座った。「平和だな」
「ああ。ようやく、戦いのない日々だ」
「次は高等教育だ」
カインが世界地図を広げる。「基礎学校で読み書き計算は教えた。次は専門技術だ」
各国に大学と専門学校を設立する計画を立てた。
教師養成学校
官僚育成大学
料理専門学校
農業大学
土木・建築学校
木工職人学校
被服・紡織学校
「各分野の専門家を育てる。グリム、ゴードン、マルコが中心となって、カリキュラムを作れ」
三人が頷く。「任せろ」
半年かけて、世界中に百の専門学校が開校した。
元娼婦が被服の教師に、元奴隷が農業の専門家に、元盗賊が建築技術者に?
希望の家出身者たちが、次世代を育てる側に回った。
「教育こそが、世界を変える」
「料理専門学校を卒業した者たちに、飲食店を開業させる」
カインが希望の光地区に商業区画を設定した。百軒分の店舗を建設。
「開業資金は全額支援する。ただし、競争だ。客が来ない店は淘汰される」
ゴードンの弟子たちが肉料理店、魔物料理専門店、家庭料理店?様々な業態で開業した。
隣接地には旅館街も整備。各国から訪れる商人や冒険者のための宿泊施設を五十軒建設。
さらに繁華街も作った。商店、酒場、娯楽施設が並ぶ。
「街が活気づいてる...!」セレナが嬉しそうに歩く。
競争が始まった。美味しい店には行列ができ、サービスの良い旅館は予約でいっぱいになった。
経済が、回り始めた。
クランメンバーが三万人を超えた。だが、多くは元奴隷や孤児で、家族がいない」
カインがセレナに提案する。「結婚斡旋ギルドを作れ。出会いの場を提供する」
「マッチングサービスですね」セレナが頷く。
希望の光地区に「縁結びの館」が開設された。希望者が登録し、趣味や価値観が合う相手を紹介する。
月に一度、交流会も開催。料理を囲みながら、自然な出会いを促す。
半年後、百組以上のカップルが誕生した。
「結婚します!」元娼婦と元奴隷のカップルが報告に来る。
エリスが祝福の儀式を執り行い、クラン全体で祝った。
やがて、赤ん坊の泣き声が希望の光地区に響くようになった。
次世代が、育ち始めた。
「子供が生まれ、高齢者も増えてきた。次は福祉と医療だ」
カインが新たな教育機関の設立を指示する。
保育専門学校:孤児院出身者が中心となり、子育ての知識を学ぶ
医療大学:エリスの回復魔法を基礎に、治療技術を体系化
看護学校:患者のケアと魔法治療の補助を教える
介護専門学校:高齢者や障害者の支援技術を習得
各国に五十校ずつ開校。希望の家出身者が優先的に入学した。
「回復魔法があれば、ほとんどの怪我や病気は治せる」エリスが指導する。「だが、心のケアは魔法ではできない。それを学びなさい」
一年後、数千人の医療・福祉従事者が誕生した。
「これで、誰もが安心して生きられる世界になる」
「食糧生産を増やす。世界中の未開拓地を農地に変える」
カインは農業大学の卒業生千人を集めた。
「サイコキネシスで森を切り開き、グラビティで岩を除去しろ。サイズで農具を巨大化させれば、効率は百倍になる」
各国の未開拓地で開拓が始まった。
魔法を使った開墾は驚異的な速さだった。一日で百ヘクタールの森林が農地に変わる。
「灌漑設備も魔法で」リーザが指示する。「テレキネシスで水路を掘れ」
一年で、世界中の農地面積が倍増した。
「食糧が余るほど収穫できる...!」農民たちが喜ぶ。
飢餓が、世界から消えた。
「魔物の管理も必要だ」
カインが冒険者ギルドの幹部を集めた。
「魔物を放置すれば増えすぎて人里を襲う。かといって絶滅させれば、生態系が崩れる。定期的に間引いて、適正数を維持する」
「魔物間引きギルド」が世界各地に設立された。
月に一度、各地域の魔物の数を調査。増えすぎた種を選定し、討伐隊を派遣する。
討伐した魔物は全て素材として利用。肉はゴードンの弟子たちが加工し、皮や骨はグリムの工房で装備に変える。
「無駄がない」マルコが満足げに頷く。
間引きギルドのメンバーは全員レベル40以上。定期的な実戦で経験を積み、さらに成長していく。
「これで魔物の脅威も、資源として活用できる」
世界の安全が、さらに強化された。
「世界から戦争を無くす」
カインが各国の王と皇帝を集めた。
「貴族制度は廃止された。今度は軍隊だ。各国の騎士団と軍隊を解体しろ。防衛費を削減し、その金を教育と福祉に回せ」
「しかし、他国に侵略されたら...」ある王が不安を示す。
「侵略しようとする国は、希望の光クランが取り締まる」リーザが宣言した。「世界中に三万人のメンバーがいる。全員レベル40以上だ。どの国の軍隊より強い」
カインが続ける。「侵略戦争を起こした国は、即座に制裁する。リーダーを捕縛し、軍を解体する」
各国の王たちは顔を見合わせた。そして?
「分かった。軍を解体する」
世界中の軍隊が解散した。兵士たちは農業、建設、商業など平和的な職業に就いた。
防衛費が消え、世界経済がさらに活性化した。
「教団の残党は?」カインが尋ねる。
リーザが報告する。「三ヶ月前に発見した三十カ所のアジトは全て壊滅させた。それ以降、新たな活動は確認されていない」
「完全に消えたのか?」
「いや」セレナが首を振る。「小規模な集団が、まだ潜伏している可能性はあります。影喰らいの王を崇拝する狂信者は、簡単には諦めません」
ルナが付け加える。「ただ、組織的な活動はできていない。影喰らいの王は完全に封印され、四天王も全滅。教団は頭を失った状態です」
「監視は続けろ」カインが指示する。「各国の希望の家メンバーに、怪しい動きがあればすぐ報告させろ」
「了解です」
教団は崩壊したが、完全には消えていない。だが、もはや脅威ではなかった。
魔王復活の兆しは?」
エリスが首を振る。「ありません。新大陸の魔王ゼノスを倒してから半年、何の異変もありません」
ルナが魔力を探知する。「世界中の魔力分布を定期的に調査していますが、魔王級の存在は検出されていません」
「影喰らいの王の封印は?」
「完全に安定しています」セレナが報告する。「あの遺跡は崩壊しましたが、王自体は消滅しました。復活の可能性はゼロです」
カインが頷く。「つまり、今のところ平和だと」
「はい。魔物は定期的に間引いていますし、大規模な脅威は存在しません」
リーザが腕を組む。「油断はできないが...今は平和を楽しむ時期かもしれないな」
「残る問題は...」カインが全員を見渡す。
リーザが考える。「司法制度だ。犯罪は減ったが、裁判や法律の整備が追いついていない」
マルコが付け加える。「国際貿易の体系化も必要です。各国で通貨も法律も違う。統一規格を作るべきでは」
グリムが言う。「魔法に頼りすぎている。もし何らかの理由で魔法が使えなくなったら、社会が崩壊する」
エリスが心配そうに言う。「カイン様たちが高齢化したら...後継者は育っていますか?」
セレナが報告書を見る。「環境問題も。森林伐採で農地を増やしすぎて、一部の地域で生態系が崩れています」
フィンが笑う。「あとは...娯楽だな。働くだけじゃつまらない。スポーツとか芸術とか」
「なるほど」カインが頷いた。「まだやることは山ほどあるな」
「優先順位をつける」カインがホワイトボードに書き出す。
「第一に司法制度。リーザ、各国の法律家を集めて統一法典を作れ」
「第二に国際規格。マルコ、共通通貨と貿易規則を設計しろ」
「第三に技術の多様化。グリム、魔法に依存しない技術開発を始めろ」
「第四に後継者育成。エリス、次世代リーダーの選抜と訓練を」
「第五に環境保護。セレナ、植林計画と生態系保全を」
「第六に文化振興。フィン、芸術・スポーツ振興財団を立ち上げろ」
全員が頷く。
「期間は三年。この間に世界を完成させる」
新たなプロジェクトが、始動した。
三年後?
世界は劇的に変わっていた。
統一法典が施行され、各国で公正な裁判が行われている。共通通貨「ホープコイン」が流通し、国際貿易が活発化した。
グリムが開発した蒸気機関が実用化され、魔法なしでも機械が動くようになった。
次世代リーダーとして、シルヴィアら百人が選抜され、高度な訓練を受けている。
環境保護法が制定され、伐採した分は必ず植林。生態系が回復してきた。
そして街には劇場、競技場、美術館が建ち、人々が芸術とスポーツを楽しんでいる。
「ほぼ完璧だな」カインが街を見下ろす。
「ああ」リーザが微笑む。「理想の世界に、近づいた」
希望の光地区の最上階、カインの執務室。
「カイン、少し話がある」リーザが入ってくる。
「何だ」
「俺たち、もうレベル70超えだ。不老不死ではないが、寿命は延びている。このまま何百年も世界を管理し続けるのか?」
カインは窓の外を見る。笑顔で歩く人々、遊ぶ子供たち。
「いや」カインが振り返る。「そろそろ、現場から退くべきだ。次世代に任せる」
「引退するのか?」
「完全にではない。顧問として残る。だが、日常の運営はシルヴィアたちに任せる」
その時、セレナが慌てて駆け込んできた。
「大変です!海の向こう、さらに遠い大陸から使者が...新しい文明が発見されたそうです」
カインとリーザが顔を見合わせた。
「...引退は、もう少し先だな」
「詳しく聞かせろ」
セレナが使者を連れてくる。浅黒い肌、奇妙な装飾品を身につけた男だ。




