第4章: 帝都への旅立ち
「これで準備万端だ。帝都へ行くぞ」
帝都の門をくぐると、混沌が広がっていた。
街路には魔物の死骸と瓦礫。逃げ惑う市民。必死に戦う兵士たち。
「こっちだ!」兵士が叫ぶ。「東地区に百体以上の群れが!」
カインたちが駆けつけると、オークとゴブリンの大群が民家を破壊していた。
「散開!」
リーザが矢を放つ。サイズで巨大化させた矢が、オーク三体を貫通した。
フィンが小石をサイズで巨大化―岩の弾丸となって敵陣に叩きつける。
ルナが火炎魔法を放ち、エリスが兵士たちを回復する。
カインがグラビティで敵を押さえつけ、セレナが避難誘導を指揮する。
だが、倒しても倒しても、新しい魔物が湧いてくる。
「地下から出てきてる...!」
カインの視界に赤い光点が表示された。地下深く、何かがある。
「全員、離れろ!」カインが叫ぶ。
兵士たちが後退する。カインとルナが同時にグラビティを発動した。
半径300mの魔物が地面に押しつぶされる。動けない。
「今だ」
カインが両手を広げる。テレキネシス―一体、二体、三体...次々と首が捻られる音が響く。
リーザとフィンも加わった。四人同時に念動力を使い、片っ端から無力化していく。
十体、二十体、五十体―
「回収!」
セレナとエリスがアイテムボックスに死体を収納していく。街路が瞬く間に片付いていく。
兵士たちが呆然と見ている。
「百体以上が...数分で...」
カインは立ち止まらない。「次の群れはどこだ」
「西地区に二百体...」
「行くぞ」
六人が駆け出した。
西地区に到着すると、予想以上の惨状だった。
オーク、ゴブリンに加えて、トロールまで混ざっている。巨体が建物を破壊していく。
「数が多い...」リーザが弓を構える。
「まとめて片付ける」カインとルナが同時に詠唱した。
「アースクエイク!」
地面が激しく揺れた。魔物たちが次々と転倒する。建物が崩れ―
「待て!中に人が!」エリスが叫ぶ。
カインが咄嗟にサイズで瓦礫を縮小。フィンとセレナがレビテーションで市民を救出する。
混乱の中、カインの視界に警告が表示された。
『地下魔力源:真下100m』
「ここだ...発生源はこの真下にある」
地面に亀裂が走り、さらに魔物が這い上がってくる。
キリがない。
「地下に潜るぞ」
「エリス、セレナは地上で避難誘導を続けろ。俺たち四人で地下に潜る」
カインがサイコキネシスで地面に穴を開け始める。土と岩が次々と持ち上がり、縦穴が形成されていく。
「深さ100m...これ、大丈夫なのか?」フィンが不安そうに覗き込む。
「飛行魔法がある。降りるぞ」
四人は穴に飛び込んだ。暗闇の中、飛行魔法で制御しながら降下する。
深度50m、70m、90m―
ついに底に着いた。
広大な地下空間。壁には古代の文字が刻まれ、中央に巨大な魔法陣が光っている。
その魔法陣から、絶え間なく魔物が湧き出していた。
「召喚陣...!」ルナが叫ぶ。
魔法陣の前に、黒いローブの人影が五人立っていた。
「また、教団か」
転移者...」中央の人影が声を発した。「ザルガンの同胞を殺したのは貴様か」
「同胞?」カインが剣を構える。「お前たちの教団長、セドリックは死んだ」
「知っている。だからこそ、報復だ」
五人が一斉にローブを脱いだ。全員、異形の姿―人間の体に悪魔の角、黒い翼。
『半魔人』
『レベル:28、30、31、29、32』
「悪魔と融合したのか...」リーザが吐き捨てる。
「力のためなら、何でもする」最も高レベルの男が笑った。「影喰らいの王の復活まで、この帝都を地獄に変える」
召喚陣から、またオーガが這い出てくる。
「フィン、陣を壊せ!俺たちが時間を稼ぐ!」
「了解!」
戦闘開始。
カインが手を伸ばす。テレキネシス―
召喚陣から出てきたオーガの首を捻る。ゴキリ。即死。
リーザとルナも加わった。次々と湧き出る魔物を、片っ端から無力化していく。
だが―
半魔人の一人にテレキネシスをかけた瞬間、弾かれた。
「甘い!」
黒いオーラが体を包んでいる。念動無効化の結界。
「やはり、対策してきたか」
残り四人の半魔人も同じ結界を展開している。
「ならば!」カインがグラビティに切り替える。
重力が五倍になる。半魔人たちが膝をつく―が、完全には押さえつけられない。
「この程度...!」一人が魔法を放ってきた。
黒い炎。カインがバリアで防ぐ。
「厄介だな」
フィンは魔法陣に向かって走り続けている。あと少し―
テレキネシスが効かないなら、物理で潰す!」
カインが周囲の岩を浮かべた。サイズで一気に巨大化―直径5メートルの岩塊に変わる。
「サイコキネシス!」
巨岩が弾丸のように飛んだ。半魔人の一人に直撃。
「ぐあっ!」吹き飛ばされる。
ルナとリーザも同じ戦法を取った。巨大化させた岩が次々と敵を襲う。
地下空間が崩れそうになる。
「やりすぎるな!」フィンが叫ぶ。
倒れた魔物をカインがアイテムボックスに回収していく。オーガ、トロール、ゴブリン―数十体が消えていく。
半魔人たちは岩の連続攻撃に押されている。
その隙にフィンが魔法陣に到達した。
「短剣で...陣を壊せるか?」
「待て、フィン!」カインが叫ぶ。「物理攻撃じゃ無理だ!」
魔法陣は魔力で構成されている。破壊するには―
「システム介入!」
カインが地面に手をついた。魔法陣のコードが視界に展開される。複雑な術式、無数の魔力回路―
「解除コードを...見つけた!」
指で空中に文字を描く。魔法陣が激しく明滅した。
「貴様...何をした!」半魔人が叫ぶ。
「召喚陣を逆転させた。今から魔物を吸い込む」
魔法陣が逆回転を始めた。地上にいた魔物たちが引きずり込まれていく。
「馬鹿な...そんなことが...!」
半魔人たちも魔法陣に吸い寄せられていく。必死に抵抗するが、止まらない。
「終わりだ」
全員が光の中に消えた。
魔法陣が消滅した瞬間、四人の体が光に包まれた。
『レベルアップ!』
カイン:レベル26→30
リーザ:レベル28→32
フィン:レベル22→26
ルナ:レベル25→29
「一気に4レベルも...!」フィンが驚く。
カインが自分のステータスを確認する。
HP:920→1320
MP:1150→1580
「半魔人を倒した経験値は凄まじいな」
リーザも力の高まりを実感している。「レベル32...もう一般の冒険者とは桁が違う」
地上から歓声が聞こえてきた。魔物が全て消えたことに、市民が気づいたのだ。
「帰るぞ」
四人は飛行魔法で地上へと舞い戻った。
地上に戻ると、エリスとセレナも光に包まれていた。
『レベルアップ!』
エリス:レベル20→24
セレナ:レベル14→18
「私たちも...!」エリスが驚いて自分の手を見る。
セレナが嬉しそうに言った。「避難誘導と魔物の足止めで、経験値が入ったみたい」
エリスのMPが大幅に上昇している。より強力な回復魔法が使えるようになった。
周囲には感謝する市民と兵士たち。帝国軍の将軍が近づいてきた。
「貴殿らが魔物を止めたのか」重厚な鎧を着た男。「帝国は、この恩を忘れない」
カインが頷く。「報酬は後でいい。それより、教団の情報が欲しい」
「分かった。宮殿へ来てくれ。皇帝陛下が会いたいと仰っている」
「いや、結構だ」カインが手を振る。「俺たちは冒険者だ。宮廷の礼儀作法は苦手でな」
将軍が驚く。「皇帝陛下の謁見を断るのか?」
「感謝はありがたいが、報酬は金で頼む」リーザが冷静に言う。「それと、教団の情報だけ教えてくれればいい」
フィンが付け加える。「あと、魔物の討伐報酬な。何体倒したか数えてないけど、相当だぞ」
将軍は困惑した表情だが、頷いた。「...分かった。報酬は後日ギルドを通じて支払う。教団の情報は今ここで伝えよう」
彼は地図を広げた。「最近の報告では、北の山岳地帯に教団の拠点があるという。だが、詳細は不明だ」
カインが地図を記憶する。「分かった。それで十分だ」
「では、失礼する」
六人は人混みから離れていった。
宿に着くと、カインはすぐにシステムを開いた。
「毎回飛んで帰るのは時間の無駄だ。瞬間移動の魔法を作る」
空間転移のコードを構築していく。複雑だが、飛行魔法の応用で―
『新規スキル生成:テレポート』
『効果:記憶した場所へ瞬間移動/同行者6名まで』
『消費MP:距離による(アルトハイム⇔帝都=300MP)』
「できた」
リーザが興味を示す。「便利だな。これで拠点との往復が楽になる」
「魔物はここで売らない。アルトハイムに持ち帰って、ゴードンに解体してもらう。マルコに売却を任せる」
フィンが頷く。「そっちの方が信頼できるしな」
「装備もグリムが作ったものを受け取りに行く。明日、一度戻ろう」
全員が同意した。
翌朝、カインが全員を集めた。
「テレポートでアルトハイムに戻る。準備はいいか」
六人が円陣を組む。カインが魔法を発動―
光が包み込み、次の瞬間、アルトハイムのギルド前に立っていた。
「すげえ...一瞬だった」フィンが驚く。
ゴードンの店に向かうと、三人とも光に包まれていた。
『レベルアップ!』
ゴードン:レベル19→23
マルコ:レベル15→19
グリム:レベル23→26
「おお?」ゴードンが驚く。「何だ、この力の高まりは...」
カインが説明する。「パーティーシステムだ。俺たちが稼いだ経験値の一部が、全員に分配される」
グリムが満足げに頷いた。「なるほどな。鍛冶をしながら強くなれる。悪くない」
マルコが笑う。「商売してるだけでレベルアップとは、最高じゃないか」
「さて、仕事だ」カインがアイテムボックスを開く。
半魔人、オーガ、トロール、ワイバーン―大量の魔物の死体が工房に現れた。
「うおっ...これは...」ゴードンが目を見開く。「半魔人まであるのか。こいつらの素材は超高級品だぞ」
グリムが死体を検分する。「オーガの骨は武器に、ワイバーンの鱗は鎧に使える。いい素材だ」
マルコが計算機を取り出した。「総額...金貨二千枚は下らないな」
「お前らの取り分も増える」カインが言う。「解体と売却、頼んだぞ」
グリムが奥から木箱を運んできた。「そういえば、新しい装備ができてる。試してみろ」
箱を開けると、黒光りする剣と、軽量化された鎧が入っていた。
オーガとワイバーンの素材で作られた、特注品だ。
「仕事量が増えすぎだ」カインが三人を見る。「弟子を取れ。人手が必要だろう」
グリムが腕を組む。「確かにな。一人じゃ限界がある」
「ただし、普通の弟子じゃない」カインが街を見渡す。「生活に困っている者たちを雇え。娼婦、元奴隷、獣人、エルフ、ダークエルフ...この街で差別されている者たちだ」
マルコが驚く。「そんな連中を...?」
「技術があれば自立できる。それに、忠誠心も高い」リーザが付け加える。「恩を売っておけば、裏切られることもない」
ゴードンが頷いた。「分かった。俺は獣人の子供を何人か知ってる。力仕事もできるし、教えればすぐ覚える」
グリムが笑う。「エルフの娘が一人、仕事を探してたな。器用だから鍛冶に向いてるかもしれん」
一週間後、各店に五、六人の弟子が加わった。
カインは全ての弟子たちを訓練場に集めた。合計十五人。獣人、エルフ、ダークエルフ、元娼婦、元奴隷?様々な背景を持つ者たち。
「今日から魔法を教える。テレキネシス、サイコキネシス、飛行、レビテーション、グラビティ、バリア、魔力装甲だ」
「私たちにも...?」獣人の少女が不安そうに言う。
「ああ。魔法が使えれば、自衛できる。仕事の効率も上がる」
最初は皆、半信半疑だった。だが、カインの指導で次々と習得していく。
エルフの娘は素質があり、一日でテレキネシスをマスターした。元奴隷の男性は、グラビティで重い素材を楽々運べるようになった。
一週間後、全員が基礎魔法を使いこなしていた。
「これで...私たちも戦える」ダークエルフの女性が涙を流した。
「魔法を覚えただけでは意味がない。実戦で使え」
カインは全弟子を森に連れて行った。カイン、リーザ、ルナが監督役だ。
「魔狼の群れがいる。倒してこい」
十五人の弟子たちが怯える。だが、逃げ場はない。
最初の戦闘は混乱した。だが、テレキネシスで敵を押さえ、グラビティで動きを止め、サイコキネシスで岩をぶつける?習った技を使い始める。
エルフの娘が精密な念動力で魔狼の関節を極めた。獣人の少年がバリアで仲間を守る。
「いいぞ、その調子だ!」
戦闘後、何人かが光に包まれた。
レベルアップ。
「俺...強くなった...」元奴隷の男が拳を握る。
一週間、毎日実戦を繰り返した。全員がレベル10を超えた。
立派な戦力になっていた。
一ヶ月間、カインは弟子たちを徹底的に鍛えた。
最初は魔狼、次にレッドボア、そしてオーガへと敵のランクを上げていく。
「怖がるな!グラビティで動きを止めろ!」
エルフの娘が三体のオークを同時にテレキネシスで無力化する。獣人の少年がサイコキネシスで巨岩を投げ、トロールを倒す。
ダークエルフの女性は魔法の才能が開花し、ルナから攻撃魔法を学んだ。
毎日が実戦。毎日がレベルアップ。
一ヶ月後?
弟子たち全員:レベル20到達
「やった...私たち、ここまで強くなれたんだ...」元娼婦の女性が涙を流す。
「これで一人前だ」カインが全員を見渡す。「お前たちは、もう弱者じゃない」
十五人の目に、強い意志が宿っていた。
お前たちに住む場所を用意する」
カインはゴードン、マルコ、グリムを呼んだ。「寮を建てろ。百人まで住める規模だ」
「百人...?」マルコが目を丸くする。「そんな大きな建物...」
「金なら十分ある」カインが金貨の袋を渡す。「それに、魔法を使えば建設は早い」
グリムが設計図を描き始めた。「三階建て、個室五十部屋、共用食堂、訓練場付きだ」
ゴードンと弟子たちがサイコキネシスで石材を運ぶ。マルコが資材を調達する。
魔法を使った建設は驚異的な速さだった。
二週間で完成。
立派な石造りの寮。看板には『希望の家』と書かれている。
「ここが...私たちの家...」弟子たちが感動して見上げる。
「まだ部屋は空いてる。困っている者がいたら、受け入れろ」
「準備は整った。そろそろ帝国の北の山岳地帯に行くぞ」
カインは戦闘メンバーを集めた。カイン、リーザ、フィン、エリス、ルナ、セレナの六人。
グリムが新しく作った装備を渡す。「オーガとワイバーンの素材で作った最高級品だ。魔力伝導率も高い」
全員が装備を身につける。軽いが、頑丈だ。
「弟子たちは任せたぞ」カインがゴードンに言う。
「了解だ。訓練は続ける」
テレポートで帝都へ。そこから北の山岳地帯まで飛行魔法で向かう。
雪に覆われた険しい山々が見えてきた。
カインの視界に警告が表示される。
『強力な魔力反応:距離30km』
「あそこだ」
教団の本拠地が、近い。
山を越えると、断崖に彫られた巨大な要塞が現れた。
黒い石造り、無数の塔、そして中央に巨大な聖堂。周囲には魔法の結界が張られ、不気味な赤い光を放っている。
「あれが本拠地か...」リーザが呟く。
カインが鑑定する。
『教団本部:守備兵力200名以上』
『最高レベル:40推定』
「レベル40...」ルナが緊張した声を出す。「私たちより10以上高い」
フィンが不安そうに言う。「正面から行くのは無謀じゃないか?」
「いや、行く」カインが決意を固める。「ここを潰さない限り、魔物の襲撃は止まらない」
エリスが祈りを捧げた。「神よ、私たちに力を」
セレナが結界を観察している。「侵入経路を探しましょう」
六人は慎重に要塞へと近づいていった。
要塞の外壁に接近すると、見張りの魔術師が巡回していた。
「隠密で行く」フィンが先導する。
六人は飛行魔法で音もなく壁を越えた。庭園に降り立つ。
カインのシステムが内部構造を解析する。
『地下に大規模な儀式場』
『中央聖堂に魔力反応・最大』
「地下だ。そこで何かをしている」
リーザが周囲を警戒する。「敵が多すぎる。見つかれば包囲される」
その時、鐘が鳴り響いた。
「侵入者だ!結界が反応した!」
遠くから叫び声。松明を持った魔術師たちが集まってくる。
「隠密は諦めろ。強行突破だ!」
カインがグラビティを発動。近づいてきた敵十数人が地面に押しつぶされた。
「地下へ急ぐぞ!」
中央聖堂へ突入する。内部は広大な礼拝堂。だが、祭壇の奥に下へ続く階段があった。
「そこだ!」
黒ローブの魔術師たちが立ちはだかる。二十人以上。
ルナが火炎魔法を放つ。リーザが矢で次々と射抜く。
カインとフィンがテレキネシスで片っ端から無力化していく。
エリスが防御魔法で味方を守り、セレナが敵の動きを妨害する。
「道を開けろ!」
カインがアースクエイクを発動。聖堂全体が揺れ、敵が転倒する。
その隙に階段へ駆け込んだ。
螺旋階段を降りていく。深い、深い―
やがて、巨大な地下空間に出た。
そこには数百人の信者が集まり、中央の祭壇で儀式を行っていた。
祭壇の上には、黒い棺が浮いている。
棺から黒い霧が溢れ出している。信者たちが唱える呪文が、洞窟に響き渡る。
「影喰らいの王よ、目覚めたまえ...」
カインの視界に警告が表示された。
『警告:封印解除進行度78%』
『残り時間:5分』
「間に合わない...!」
祭壇の前に、見覚えのある人物が立っていた。
セドリック―いや、違う。顔は似ているが、より若く、より禍々しいオーラを放っている。
「セドリックの...弟?」リーザが驚く。
男が振り返った。冷たい笑み。
「姉上を殺した者たちか。ちょうどいい」
『ヴァレリウス』
『レベル:42』
『HP:12000/12000』
「貴様らの血で、王の復活を完成させる」
数百人の信者が一斉にこちらを向いた。
「数百人...」フィンが後退る。
「怯むな!」カインが叫ぶ。「ルナ、俺と同時にアースクエイク!」
二人が地面に魔力を流し込む。地下空間全体が激しく揺れた。
信者たちが次々と転倒する。だが、ヴァレリウスは動じない。
「無駄だ」彼が手を上げる。黒い炎が六人に向かって飛んでくる。
カインとエリスがバリアを展開。炎が弾かれる。
リーザが矢を放つ。ヴァレリウスの肩を狙う―だが、黒いオーラが矢を弾いた。
「お前たちでは、私に傷一つつけられん」
フィンが叫ぶ。「棺を壊せば儀式は止まるんじゃないか!」
「その通りだ」カインが祭壇を見る。
だが、棺の周りには強力な結界が張られている。
『残り時間:3分』
「システム介入で結界を壊す!」
カインが祭壇に向かって走る。ヴァレリウスが黒い剣を構えた。
「させるか!」
剣が振り下ろされる―リーザの矢が軌道を逸らした。フィンが短剣を投げ、ヴァレリウスの視界を遮る。
その隙にカインが結界に手を触れる。
コードが展開される。複雑な術式―だが、解読できる。
「解除コード...これだ!」
結界にひびが入った。
「ルナ!棺を破壊しろ!」
ルナが最大出力の火炎魔法を放つ。棺が炎に包まれた。
「やめろおおお!」ヴァレリウスが叫ぶ。
だが、遅い。棺が砕け散った。
中から黒い霧が爆発的に広がる―そして、消えていく。
『封印解除:中断』
儀式が、止まった。
「貴様ら...!」ヴァレリウスの体から黒いオーラが爆発した。
周囲の信者たちが吹き飛ばされる。殺気が空間を満たす。
「何百年も準備してきた儀式を...台無しにしたああ!」
ヴァレリウスが両手を広げる。地下空間全体に黒い炎が走った。
「全員、バリア!」
六人が防御障壁を展開。だが、炎の威力が凄まじい。ひびが入っていく。
「レベル差がありすぎる...!」エリスが必死に回復魔法を唱える。
カインが冷静に分析する。『弱点検索中...』
ヴァレリウスが地面を蹴った。超高速でカインに接近―剣が振り下ろされる。
リーザがグラビティで動きを遅らせる。フィンがレビテーションでカインを浮かせて回避させた。
「連携だ!一人では勝てない!」
「ルナ、氷結魔法で足を止めろ!リーザ、関節を狙え!」
ルナが地面を凍らせる。ヴァレリウスの足が滑る―その瞬間、リーザがテレキネシスで膝の関節を極めた。
「ぐっ...!」
フィンが背後に回り込み、頸動脈に短剣を突き立てる―だが、黒いオーラに弾かれた。
「効かない...!」
カインがサイコキネシスで周囲の岩を全て浮かべる。サイズで巨大化―
「全弾発射!」
数十個の巨岩が一斉にヴァレリウスに襲いかかった。
連続する衝撃音。
だが、煙が晴れると、ヴァレリウスは立っていた。傷だらけだが、まだ戦える。
『HP:12000→8500』
「まだ三割しか削れていない...」
セレナが叫ぶ。「信者たちが回復魔法を唱えてる!」
「信者を止めろ!回復されたら終わりがない!」
カインが両手を広げた。「全員、テレキネシス!」
六人が同時に念動力を発動。数百人の信者たちの首が一斉に捻られる。
ゴキリ、ゴキリ、ゴキリ―
無数の音が響き渡る。信者たちが次々と倒れていく。
「貴様ら...私の信者を...!」ヴァレリウスが激昂する。
「邪魔だ」カインが冷徹に言い放つ。
数秒で、信者は全滅した。地下空間に静寂が戻る。
もう回復の心配はない。
「さあ、続きだ」リーザが弓を構える。
ヴァレリウスの目が血走っている。理性を失いかけている。
「殺す...貴様ら全員...殺してやる...!」
「全員、総攻撃だ!」
カインが指示を出す。六人が同時に魔法を発動した。
まずグラビティ―ヴァレリウスの体が地面に押しつぶされる。重力が十倍になる。
「ぐああ...!」
次にサイコキネシス。周囲の岩、石柱、瓦礫―全てを浮かべる。
サイズで巨大化。直径5メートルの岩塊が数十個、空中に浮かぶ。
「発射!」
六人の念動力で制御された巨岩が、一斉にヴァレリウスに叩きつけられた。
ドガァン!ドガァン!ドガァン!
連続する衝撃。地下空間が崩れそうになる。
エリスが祝福を維持し、セレナが魔力を全員に供給する。
攻撃が止まない。三十秒間、絶え間ない砲撃。
やがて、静寂。
煙が晴れると―
ヴァレリウスが膝をついていた。
全身が砕け、血まみれ。黒いオーラも消えている。
『HP:8500→1200』
「まだ...生きているのか...」フィンが驚く。
ヴァレリウスが震える手を上げた。「こんな...はずでは...私は...教団の...」
カインが近づく。「終わりだ」
テレキネシス―首を掴む。
「待て...」ヴァレリウスが掠れた声で言う。「影喰らいの王は...まだ完全には封印されていない...第三の拠点が...」
「どこだ」
「南の...古代遺跡...そこに...真の復活の鍵が...」
言葉が途切れる。カインが首を捻った。
ゴキリ。
ヴァレリウスの体が、地面に崩れ落ちた。
戦闘終了。
六人の体が眩い光に包まれた。
『レベルアップ!』
カイン:レベル30→35
リーザ:レベル32→37
フィン:レベル26→30
エリス:レベル24→28
ルナ:レベル29→33
セレナ:レベル18→22
「一気に5レベル...!」ルナが驚く。
そして、遠く離れたアルトハイムでも―
ゴードン:レベル23→27
マルコ:レベル19→23
グリム:レベル26→30
「おお!」ゴードンが工房で光に包まれる。「また強くなった!」
さらに、寮にいる新弟子たちも―
新弟子たち全員:レベル20→24
「私たち、何もしてないのに...」エルフの娘が驚く。
パーティーシステムの恩恵。全員が、確実に強くなっていた。
カインは崩れかけた地下空間を見回した。
「死体を回収する。ヴァレリウスと信者たち、全部だ」
アイテムボックスに数百体の死体が収納されていく。素材として売れる。
「脱出するぞ。ここは崩れる」
六人が飛行魔法で地上へと舞い上がった。聖堂を抜け、要塞の外へ。
背後で轟音。要塞全体が崩壊していく。
安全な距離まで離れると、リーザが言った。「南の古代遺跡...それが最後の拠点か」
「おそらくな」カインが頷く。「だが、その前に準備が必要だ。レベル40超えの敵がいるかもしれない」
エリスが疲れた顔で言う。「一度、戻りましょう。休息と装備の強化が必要です」
「そうだな」
カインがテレポートを発動。光に包まれ、アルトハイムへと戻った。
アルトハイムに戻ると、すぐに工房へ向かった。
「アイテムボックスを空にする」
カインが次々と死体を取り出していく。ヴァレリウス、数百人の信者、半魔人、オーガ、トロール、ワイバーン?
工房の広場が、死体で埋め尽くされた。
「うわ...これは...」ゴードンが圧倒される。「数百体あるぞ」
マルコが計算機を叩く。「総額...金貨五千枚は超える」
グリムが目を輝かせた。「ヴァレリウスの装備...レベル42の魔術師が使っていた物だ。最高級の素材が取れる」
「全部任せる」カインが言う。「売上は全員で分配だ」
新弟子たちも駆けつけ、解体作業を手伝い始めた。
アイテムボックスには、武器と回復薬だけが残った。
一週間後、全ての解体と売却が完了した。
マルコが集計結果を発表する。「総売上、金貨五千百枚。手数料を引いて、五千枚を分配する」
カインが提案した。「正規メンバー九人は通常配分。新弟子十五人は半額ずつだ」
計算すると?
正規メンバー(9人):一人303枚
- カイン、リーザ、フィン、エリス、ルナ、セレナ
- ゴードン、マルコ、グリム
新弟子(15人):一人151枚
- エルフ、ダークエルフ、獣人、元奴隷、元娼婦など
「半額でも金貨151枚...!」新弟子たちが驚く。「一生働いても稼げない額だ...」
エルフの娘が涙を流す。「これで...家族を養える...」
カインが全員を見渡す。「お前たちが働いた対価だ。遠慮するな」
希望の家に、笑顔が溢れた。
「まだ困っている者はたくさんいる。仲間を増やすぞ」
カインは街の暗い路地を歩いた。娼館、奴隷市場、スラム?そこで苦しむ人々を探す。
リーザとセレナが交渉し、三十人を集めた。獣人、エルフ、ダークエルフ、人間?全員が過酷な環境で生きてきた者たちだ。
「お前たちに住む場所、仕事、そして力を与える」
希望の家に案内する。寮にはまだ空き部屋がある。
「ここが...私たちの?」若い娼婦が信じられない顔をする。
「ああ。明日から訓練を始める。魔法を覚え、仕事を覚えろ」
グリム、ゴードン、マルコが指導役として待っていた。
「よし、新入りども!まずは基礎からだ!」
三十人が、新しい人生を始めた。
「肉を全て店で売るだけじゃ処理しきれない。アルトハイムの他の肉屋にも卸すぞ」
ゴードンが街中の肉屋と交渉した。高品質な魔物の肉は引く手あまただ。
オーガ肉、ワイバーン肉、レッドボア肉?毎日大量に卸売りする。
一ヶ月の利益は金貨二千枚に達した。
マルコが分配案を提示する。
正規メンバー(9人):一人122枚
1世代弟子(15人):一人61枚
2世代弟子(30人):一人24枚
「2割でも金貨24枚...」新入りたちが驚く。「普通の仕事の半年分だ」
ゴードンが笑う。「働いた分はちゃんと返ってくる。それがこの組織だ」
毎月、安定した収入が全員に入るようになった。
希望の家は、完全に自立した組織になっていた。
ある日、ギルドの職員が訪ねてきた。
「あなた方の活動について、調査が必要です。規則違反の疑いがあると」
翌日は貴族の使者。「元奴隷を雇うとは何事か。秩序を乱している」
そして神殿の司祭。「娼婦に魔法を教えるなど、神への冒涜だ」
カインは冷静に対応した。「何の法律に違反している?」
「それは...」職員が言葉に詰まる。
「奴隷を解放するのは合法だ。魔法を教えるのも自由だ」リーザが畳み掛ける。
だが、圧力は続いた。税の取り立て、営業妨害、嫌がらせ?
「既得権益を脅かしているからな」マルコが苦笑する。「強くなりすぎた」
フィンが提案した。「やり返すか?」
カインは腕を組んだ。「いや、もっと賢いやり方がある」
「自分たちのギルドを作る」
全員が驚いた顔をする。
「既存のギルドに所属する必要はない。独立組織として登録すればいい」カインが説明する。「冒険者ギルド、商会、職人組合?全てを兼ねた新しい組織だ」
マルコが頷く。「資金は十分ある。建物も、人材も揃っている」
「名前は『希望の光ギルド』だ」
グリムが笑った。「既存勢力が慌てるぞ。独占が崩れるからな」
「それがいい」リーザが言う。「競争があれば、街全体が良くなる」
セレナが不安そうに言う。「でも、妨害が激しくなるんじゃ...」
「その時は」カインの目が冷たく光った。「力で黙らせる。俺たちは、もう誰にも負けない」
翌日、正式に登録申請を出した。
登録申請は予想通り、難航した。
役所の担当者が渋い顔をする。「新規ギルドの設立には、既存ギルドからの推薦状が必要です」
「つまり、敵から承認を得ろと?」フィンが呆れる。
だが、その夜?
カインの元に一通の手紙が届いた。差出人は帝国の将軍。
『貴殿らの活躍、帝国は忘れていない。推薦状を送る。新しい風を期待する』
翌日、また手紙。今度は隣国の王都から。
『オークの討伐、感謝する。我が国も支援したい』
一週間で、五カ国から推薦状が集まった。
役所の担当者が青ざめる。「これは...」
「承認するしかないだろう」カインが笑った。
『希望の光ギルド』正式認可。
革命が、始まった。
カインは街中を歩き、不当な扱いを受けている者たちを探した。
商人ギルドから締め出された行商人。「税が高すぎて、もう続けられない...」
冒険者ギルドで差別される獣人の戦士。「人間以外は、良い依頼を回してもらえない」
貴族に搾取される職人。「作品を安く買い叩かれる。断れば仕事がなくなる」
「俺たちのギルドに来い」カインが手を差し出す。「公平な報酬、自由な活動、実力主義だ」
最初は疑っていたが、希望の家を見せると目の色が変わった。
「ここなら...」
一週間で三十人が加入した。熟練の商人、Bランク冒険者、名工と呼ばれる職人?
既存勢力が独占していた人材が、流れ始めた。
「新メンバーも同じように育てる。まず魔法だ」
ゴードン、マルコ、グリムが三十人を森へ連れ出す。基礎から叩き込む。
一ヶ月の特訓で?
3世代弟子30人:レベル0→20到達
「次は専門技術だ。希望を聞く」
文字が読めない者は基礎学校へ。昼は勉強、夕方から専門訓練。
希望調査の結果?
商人志望:8人→マルコの弟子
食肉職人志望:7人→ゴードンの弟子
武器職人志望:6人→グリムの弟子
冒険者志望:9人→カインとリーザが指導
それぞれの師匠のもとで、本格的な徒弟制度が始まった。
「三年で一人前にする」グリムが宣言する。
組織に、明確な育成システムが確立された。
「組織が大きくなった。パーティーも増やすぞ」
カインが全員を集めた。
「俺たちのパーティーは『希望の光1』として、クランの中核を担う。レベル20に達した者たちで、新しいパーティーを編成する」
1世代弟子の中から、優秀な五人を選抜。
「お前たちが『希望の光2』だ。リーダーはエルフのアリア」
冒険者志望の者たちから六人を選び、「希望の光3」を結成。リーダーは元Bランク冒険者のダリウス。




