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手の届く範囲で世直し  作者: 慈架太子


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第3章: パーティー結成


「リーザ、正式にパーティーを組まないか」

「パーティー?」

「ああ。今までは成り行きで一緒に戦ってきたが、これからはもっと組織的に動きたい。お前と俺、二人だけじゃ限界がある」

リーザが火を見つめる。「仲間を増やす、ということか」

「そうだ。回復魔法が使える僧侶、前衛の戦士、情報収集が得意な盗賊...役割分担ができれば、もっと効率的に戦える」

「確かに。私たちは二人とも後衛寄りだ。正面から殴り合う役がいない」

カインが手を差し出した。「どうだ?正式に組むか」

リーザは少し考えてから、その手を握った。「いいだろう。お前となら、悪くない」

『パーティー結成:カイン&リーザ』

視界に表示が出た。

「さて、どこで仲間を探すか」


「近くの町に行って、冒険者ギルドに登録しよう」

カインがシステムで地図を確認する。「ここから西に30km、商業都市アルトハイムがある。そこなら大きなギルドがあるはずだ」

「冒険者ギルド...」リーザが苦笑する。「私は騎士団所属だったから、縁がなかった」

「俺もだ。でも、仲間を探すには最適だろう」

翌朝、二人は空を飛んでアルトハイムへ向かった。30分ほどで、城壁に囲まれた大きな街が見えてくる。

「あそこか」

着陸は街の外で。飛行魔法を人前で使えば、騒ぎになる。

正門から入ると、賑やかな市場が広がっていた。商人の声、子供たちの笑い声。

「ギルドは...あそこだ」

大通りの奥に、剣と盾のマークが掲げられた大きな建物があった。


ギルドの扉を開けると、酒場のような雰囲気だった。

冒険者たちが酒を飲み、依頼書を眺め、武勇伝を語り合っている。壁には巨大な掲示板があり、様々な依頼が貼られていた。

「新人か?」受付の女性が声をかけてきた。「登録は初めて?」

「ああ」カインが頷く。「二人で登録したい」

「名前とレベルを教えて」

「カイン、レベル22。リーザ、レベル24」

受付嬢の手が止まった。「...レベル24?新人で?」

周囲の冒険者たちがこちらを見る。ざわめきが広がった。

「普通、新人は5から10だぞ...」

「何者だ、こいつら」

カインとリーザは視線を無視した。受付嬢が戸惑いながらも書類を取り出す。

「と、とりあえず、ランク判定試験を受けてもらいます」


「ランク判定試験?」

「はい。戦闘能力を測定して、適切なランクを決めます」受付嬢が奥の扉を指差す。「訓練場へどうぞ」

二人が扉をくぐると、広い屋内訓練場があった。既に数人の冒険者が見物に来ている。

中央に立っていたのは、筋骨隆々の大男。斧を肩に担いでいる。

「俺がランク判定官、ガルドだ」低い声。「お前らが新人か。レベル20超えとは珍しいが...実力が伴わなければ意味がない」

ガルドが戦闘用の木製武器を差し出す。「武器を選べ。俺と一対一で戦ってもらう」

カインとリーザは顔を見合わせた。

「武器はいらない」カインが手を上げる。「素手で十分だ」

周囲から嘲笑が漏れた。ガルドの目が険しくなる。

「舐めるなよ、小僧」


「では、始めるぞ」ガルドが構える。

瞬間、彼が突進してきた。速い。レベル30はあるだろう。

だが、カインの視界には全ての動きが予測線で表示されている。

「遅い」

カインが手を伸ばす。グラビティ。

ガルドの体が突然、地面に叩きつけられた。

「なっ...!」

重力が5倍になる。ガルドが立ち上がろうと必死にもがくが、動けない。

「ば、馬鹿な...俺が...動けない...!」

周囲が静まり返った。

カインが重力を解除する。ガルドが荒い息をつきながら立ち上がった。

「お前...何者だ」

「ただの冒険者だ」

ガルドは呆然としたまま、受付嬢に向かって叫んだ。

「こいつら...Aランクだ。いや、それ以上かもしれん」


受付嬢が慌てて書類を書き直す。「A、Aランク...新人でAランクなんて前例が...」

「前例を作ればいい」ガルドが肩を叩いてきた。「すまんな、舐めてた。お前ら、本物だ」

ギルドカードが二枚発行された。銀色に輝く、Aランクの証。

『カイン:Aランク冒険者』

『リーザ:Aランク冒険者』

周囲の冒険者たちがざわついている。中には敵意を向けてくる者もいる。

「ねえねえ」若い男が近づいてきた。金髪、軽装、短剣を二本。「俺、盗賊のフィン。パーティー募集してるって本当?」

カインとリーザが顔を見合わせる。

「誰から聞いた」

「噂は早いんだよ、この業界」フィンがニヤリと笑う。「Aランクのパーティーなんて滅多にない。入れてくれよ」


「待て」カインが手を上げる。「その前に確認させてくれ」

システムに新しいコードを書き込む。対象のステータスを詳細に読み取る魔法―

『新規スキル生成:鑑定』

カインがフィンに手をかざす。光が走り、情報が展開された。

【フィン】

レベル:16

HP:480/480

MP:320/320

職業:盗賊

スキル:隠密、罠解除、鍵開け、短剣術、盗聴

特性:素早い、口が軽い、金に目がない

「レベル16か。悪くない」

フィンが目を丸くする。「おい、今何した?俺のステータス、見たのか?」

「ああ。鑑定魔法だ」

「そんな魔法があるのか...初めて見た」フィンが興奮気味に言う。「すげえな、お前ら。やっぱりパーティー入れてくれよ!」

リーザが冷ややかに言った。「口が軽いのと、金に目がないのが気になるな」


「え、えっと...」フィンが冷や汗を流す。「口が軽いのは、情報収集が得意ってことで...」

「言い訳するな」

「金に目がないのは...まあ、否定しない」フィンが頭を掻く。「でも、仲間は絶対に裏切らない。それだけは誓える」

カインが鑑定結果を再確認する。嘘は言っていない。

「リーザ、どう思う」

「...スキル構成は優秀だ。罠解除と鍵開けは、遺跡探索に必須」リーザが腕を組む。「ただし、一度でも裏切ったら―」

「殺されるってわけだな」フィンが苦笑する。「分かってるよ。俺も死にたくないし」

カインが手を差し出した。「いいだろう。試用期間だと思え」

「マジか!」フィンが握手する。「よろしく、リーダー!」

『パーティーメンバー追加:フィン』

これで三人。まだ前衛と回復役が必要だ。


「他に誰かいないか」カインがギルド内を見回す。

フィンが指を鳴らした。「ああ、いるぜ。あそこの女神官、エリス。回復魔法の使い手だ」

隅のテーブルに、白いローブを着た若い女性が座っていた。聖典を読んでいる。

「でも、あいつ、誰ともパーティー組まないんだよな」

「なぜだ」

「理由は知らん。誘っても全部断る」

カインとリーザが近づくと、女性が顔を上げた。穏やかな表情。だが、どこか悲しげな目をしている。

「何か御用ですか」

「パーティーを組まないか」カインが率直に聞いた。

エリスは首を横に振る。「お断りします。私は...」

その時、ギルドの扉が勢いよく開いた。

「助けてくれ!村が...モンスターに襲われてる!」


血まみれの村人が倒れ込んだ。受付嬢が駆け寄る。

「どうしたんですか!」

「西の...ミラの村が...オーガの群れに...!」村人が苦しそうに言う。「子供たちが...逃げ遅れて...」

ギルド内がざわつく。だが、誰も動かない。

「オーガだと?あんな化け物、Bランクでも厳しいぞ」

「報酬次第だな...」

カインは立ち上がった。「俺たちが行く」

「カイン...」リーザも頷く。「当然だな」

フィンが慌てる。「おいおい、いきなり命懸けかよ!」

その時、エリスが立ち上がった。

「私も行きます」

カインが驚いて振り返る。「さっき断ったんじゃ...」

「子供たちを見捨てられません」エリスの目に、強い意志が宿っていた。「一時的でも、協力させてください」


分かった。行こう」

四人はギルドを飛び出した。村人から方角を聞き、カインが全員に飛行魔法を付与する。

「飛べるのか!?」フィンが驚く。

「質問は後だ」

空を飛び、15分でミラの村に到着した。すでに炎が上がっている。

巨大な人型の怪物―オーガが三体、家々を破壊していた。村人たちは必死に逃げている。

カインが鑑定する。

『オーガ×3』

『レベル:25、26、28』

『HP:3800、4200、5000』

「レベル28...厄介だな」

「子供たちは!」エリスが叫ぶ。

村の中央、倒壊した教会の前。五人の子供が瓦礫に閉じ込められていた。オーガの一体が、ゆっくりと近づいている。

「間に合わない...!」


リーザ、一番遠いやつを!フィン、子供たちを救出!エリス、回復の準備!」

カインが瞬時に指示を出す。

リーザが矢を放つ。遠くのオーガの目に命中した。「ガアアア!」咆哮が響く。

カインは教会に向かうオーガにグラビティを発動。突然の重力で、オーガが膝をついた。

「今だ、フィン!」

フィンが素早く瓦礫の隙間に潜り込む。「大丈夫、すぐ出すからな!」

オーガが重力に抗って立ち上がろうとする。カインがサイコキネシスで周囲の石を操り、顔面に叩きつけた。

「エリス!」

エリスが神聖魔法を唱える。瓦礫が光に包まれ、軽くなった。フィンが子供たちを一人ずつ引っ張り出す。

「全員救出!」

だが、残り二体のオーガが、こちらに向かってくる。


「リーザ、右!俺は左を引き受ける!」

二体のオーガが同時に襲いかかる。巨大な棍棒が振り下ろされた。

カインがバリアを展開―衝撃で地面にひびが入る。

「重い...!」

リーザが魔力を込めた矢を連射する。オーガの関節を狙った精密射撃。膝、肘、肩―動きが鈍る。

カインがテレキネシスで棍棒を掴み、軌道を逸らす。そのままサイコキネシスで地面の岩を浮かべ、オーガの頭部に叩きつけた。

「ぐおおお!」

もう一体が、倒れた子供に向かう。エリスが立ちはだかった。

「聖なる盾よ!」

光の壁が出現。オーガの拳が弾かれる。

「エリス、下がれ!」

カインがグラビティを最大出力で発動。二体のオーガが地面に押しつぶされた。

「今だ、畳み掛けろ!」


リーザが弓を引き絞る。「貫け!」

魔力を最大まで込めた矢が、押さえつけられたオーガの頭部を貫通した。一体目が絶命する。

フィンが短剣を投げる。もう一体の目に命中。「よっしゃ!」

カインがサイコキネシスで巨大な石柱を持ち上げる。「終わりだ」

石柱が叩きつけられ、二体目も沈黙した。


残るは一体。リーザの矢で視力を失ったオーガが、暴れ回っている。

「エリス、俺たちを強化できるか!」

「はい!」エリスが聖歌を唱える。光が四人を包んだ。

『祝福:攻撃力+30%、魔力+20%』

力が漲る。カイン、リーザ、フィンが同時に攻撃を仕掛けた。

グラビティ、精密射撃、急所への短剣―

最後のオーガが崩れ落ちた。

戦闘終了。


「待て、まだ終わりじゃない」

カインが倒れたオーガに近づく。巨大な死体―普通なら放置するだろうが。

「アイテムボックス」

三体のオーガが光に包まれ、消えた。異次元空間に収納される。

村人たちが驚いて声を上げる。「死体が...消えた...?」

「オーガの素材は高く売れる」フィンが目を輝かせる。「皮、骨、牙...全部金になるぜ!」

「それだけじゃない」カインが説明する。「死体を残すと、他のモンスターが寄ってくる。村の安全のためにも回収が必要だ」

エリスが不思議そうに見ている。「あなたたち...本当に何者なんですか」

リーザが答える。「ただの冒険者だ。それ以上でも、それ以下でもない」

村長が涙を流しながら近づいてきた。「ありがとうございます...命の恩人です...」


「報酬は...申し訳ありませんが、村には金がほとんど...」村長が頭を下げる。

「いらない」カインが手を振る。「子供たちが無事なら、それでいい」

フィンが小声で「えー...」と呟くが、リーザに睨まれて黙った。

その時、四人の体が光に包まれた。

『レベルアップ!』

『カイン:レベル22→24』

『リーザ:レベル24→26』

『フィン:レベル16→18』

『エリス:レベル14→16』

エリスが自分の手を見つめる。「レベルが...上がった...」

「三体のオーガを倒した経験値だな」

村人たちが食事と宿を提供してくれた。夜、焚き火を囲みながら、カインがエリスに尋ねた。

「正式にパーティーに入らないか」

エリスは少し考えてから、頷いた。

「はい。あなたたちとなら...戦えます」


『パーティーメンバー追加:エリス』

これで四人。前衛が不足しているが、バランスは悪くない。

「そういえば」フィンが口を開いた。「パーティーの名前、決めないのか?」

「名前...」カインが考え込む。

「影を払う者とか?」リーザが提案する。「影喰らいの王と戦ってるし」

「ダサい」フィンが即答。

「お前が考えろ」

「えー...『黄金の翼』とか」

「もっとダサい」

エリスがクスクスと笑った。珍しく笑顔を見せる。

「では『希望の光』は?私たちは絶望の中で人々を救う...そんな存在でありたいです」

四人が顔を見合わせた。

「...悪くない」カインが頷く。

「じゃあ決まりだな」フィンが拳を上げる。「パーティー『希望の光』、ここに結成!」

焚き火が、明るく燃えていた。


翌朝、村を出ようとした時、背後から声がかけられた。

「待って」

振り返ると、紫のローブを着た若い女性が立っていた。長い黒髪、鋭い目つき。杖を持っている。

「あなたたち、昨日オーガを倒したパーティーね」

「ああ」カインが頷く。「何か用か」

「私も入れて」即答。「魔法使いのルナよ。レベル19。攻撃魔法が専門」

フィンが目を輝かせる。「美人の魔法使い!大歓迎!」

リーザが冷たく言う。「理由は?」

「この村の出身なの。昨日、遠くから戦いを見てた」ルナが杖を構える。「あなたたちは強い。私も強くなりたい。それだけ」

カインが鑑定魔法を発動した。

【ルナ】

レベル:19

MP:850

スキル:火炎魔法、氷結魔法、雷撃魔法、魔力増幅

特性:プライドが高い、負けず嫌い

「いいだろう」


『パーティーメンバー追加:ルナ』

五人でアルトハイムに戻った。ギルドで報告を済ませると、カインが提案した。

「戦闘員だけじゃ不十分だ。情報屋、物資調達、素材加工―非戦闘の専門家も必要だ」

フィンが頷く。「確かに。俺の知り合いに使える奴らがいるぜ」

歓楽街で紹介されたのは、酒場の女給セレナ。「情報なら任せて。この街の噂は全部知ってるわ」レベルは低いが、交渉と情報収集のスキルが高い。

次は市場の商人マルコ。「物資の調達と売却は俺の専門だ。オーガの素材、高値で捌いてやるぜ」

最後は肉屋のゴードン。「モンスターの解体なら任せろ。無駄なく素材を取り出せる」筋骨隆々の大男。

「これで八人か」カインが全員を見渡す。「本格的なパーティーになってきたな」


「これから訓練を始める」

カインは全員をギルドの訓練場に集めた。戦闘員だけでなく、セレナやマルコ、ゴードンも。

「これから教える魔法は、生存に直結する」カインが手を上げる。石が浮いた。「テレキネシス、サイコキネシス、レビテーション、飛行、グラビティ。全員習得しろ」

「全員...?」セレナが不安そうに言う。「私、戦闘経験ないんだけど...」

「だからこそ必要だ。襲われた時、飛んで逃げられる。敵を浮かせて時間を稼げる」

一週間かけて、全員に魔法を叩き込んだ。

ルナは魔法使いだけあって、すぐに習得した。エリスも神聖魔法の素養があり、早い。

意外だったのはゴードン。「肉を捌く感覚と似てるな」巨大な岩を軽々と操る。

グリムは飛行魔法を気に入った。「空飛ぶドワーフ、珍しいだろ」

全員が基礎を習得した。これで戦力が格段に上がった。


「さて、オーガの死体を処理するぞ」

カインがアイテムボックスから三体のオーガを取り出した。訓練場に巨大な死体が並ぶ。

「任せろ」ゴードンが包丁を構える。「まずは食用部位を切り分ける」

解体が始まった。ゴードンの手際は見事で、無駄なく肉を取り出していく。

「オーガ肉は高級品だ。店で売れば相当な金になる」

次にグリムが素材を選別する。「皮は鎧に、骨は武器の芯材に使える。牙も装飾品になるな」

残りの部位をマルコが査定する。「内臓、腱、爪...全部売れる。総額で金貨200枚ってとこだ」

一週間後、全て売却が完了した。

「総売上、金貨247枚」マルコが報告する。「九人で割ると、一人27枚だ」

「いい稼ぎだな!」フィンが喜ぶ。

これが、パーティー最初の収益だった。


「訓練だけじゃ意味がない。実戦で試すぞ」

九人全員で近くの魔獣の森へ向かった。飛行魔法で移動―全員が空を飛べるのは圧巻だ。

森に入ると、すぐに魔狼の群れと遭遇した。十匹以上いる。

「配置につけ!」カインが指示を出す。

ルナとリーザが後方から魔法と矢で攻撃。エリスが全員に祝福をかける。

フィンが隠密で側面に回り込み、急所を突く。

ゴードンとグリムは非戦闘員のはずだが、サイコキネシスで岩を投げまくっている。

「これ、楽しいな!」グリムが笑う。

セレナとマルコは後方で安全を確保しつつ、レビテーションで素材回収の準備。

カインがグラビティで敵を押さえ、全員で一斉攻撃。

完璧な連携。魔狼は全滅した。

「いい動きだ」カインが満足げに頷く。


戦闘が終わると、何人かの体が光に包まれた。

『レベルアップ!』

フィン:レベル18→20

エリス:レベル16→18

ルナ:レベル19→21


セレナ:レベル8→12

マルコ:レベル10→13

ゴードン:レベル11→15

グリム:レベル22→23

「おお!俺もレベル20だ!」フィンが喜ぶ。

セレナが驚いて自分の手を見る。「魔法を使っただけで...こんなに上がるの?」

「実戦経験がなかったからな」カインが説明する。「最初の成長は早い」

ゴードンが拳を握る。「力が漲る...これがレベルアップか」

グリムは冷静だ。「俺はもう頭打ちだな。まあ、鍛冶に専念するさ」

カインとリーザは据え置き。高レベルになると、成長が遅くなる。

「全員、よくやった」カインが全員を見渡す。「次はもっと強い敵に挑むぞ」


森の奥に進むと、地響きが聞こえてきた。

「来るぞ!」

巨大な赤い猪―レッドボアの群れが突進してくる。体長3メートル、牙が鋭い。十五匹。

カインが鑑定する。『レベル20-23、HP2800-3200』

「グラビティ!」

先頭の三匹が地面に押しつけられた。ルナが氷結魔法で足を凍らせる。「動きを止めろ!」

リーザが急所―心臓と脳を狙った精密射撃。フィンが頸動脈に短剣を突き立てる。素材を傷つけない殺し方。

ゴードンとグリムがサイコキネシスで巨木を引き倒し、進路を塞ぐ。

マルコとセレナが後方で支援。エリスが全員の体力を回復し続ける。

カインがグラビティで動きを封じ、ルナとリーザが確実に仕留めていく。

全滅。死体はほぼ無傷だ。

戦闘後、光が何人かを包んだ。

ルナ:レベル21→23

セレナ:レベル12→14

マルコ:レベル13→15

ゴードン:レベル15→17


森を抜けると、空から影が落ちてきた。翼竜―ワイバーンの群れ。二十匹が旋回している。

「空中戦だ!全員、飛行魔法!」

九人全員が空に舞い上がった。

カインが鑑定する。『レベル24-28、HP4500-6000、飛行速度が速い』

「グラビティで落とす!」

カインとルナが同時に重力魔法を発動。五匹のワイバーンが墜落した。

リーザが心臓を狙って矢を放つ。フィンがレビテーションで敵に接近し、翼の付け根―急所を短剣で刺す。

エリスの祝福が全員を強化。ゴードンとグリムがサイコキネシスで岩を投げ、翼を傷つけずに頭部を狙う。

マルコとセレナは墜落したワイバーンをアイテムボックスに回収。

空中戦は混沌としたが、全員の連携で次々と撃墜。無傷の死体が集まっていく。

全滅後、光が溢れた。

カイン:24→26

リーザ:26→28

フィン:20→22

エリス:18→20

ルナ:23→25

ゴードン:17→19


アルトハイムに戻ると、カインが全員を集めた。

「そろそろ帝国に行く。だが、全員で行く必要はない」

マルコ、ゴードン、グリムを見る。「お前たちは店の経営に専念してくれ。特にゴードン、預けた魔物を全部解体して商品化しろ。売上は後で分配する」

「了解だ」ゴードンが頷く。「ワイバーンの肉は高級品だからな。いい金になる」

グリムが腕を組む。「俺は装備を作っておく。帝国から戻ったら、新しい武器を渡せるようにな」

マルコが計算を始めた。「素材の売却ルートも確保しておく。任せろ」

カイン、リーザ、フィン、エリス、ルナ、セレナの六人が帝国行きのメンバーだ。

「出発は明日。準備しておけ」

帝国―そこで何が待っているのか。


翌朝、六人はギルドの前に集まった。

セレナが不安そうに言う。「帝国って...どのくらい遠いの?」

「飛行魔法で二日」カインが地図を広げる。「途中で休憩を挟みながら行く」

リーザが装備を確認している。「帝国は王国とは違う。文化も法律も異なる。慎重に動け」

「情報収集は任せて」セレナが頷く。「帝国の言葉も少しなら話せるわ」

ルナが杖を構える。「異変って、具体的には何なの?」

「分からない」カインの視界にシステムメッセージが浮かぶ。『詳細不明。現地調査が必要』

「まあ、行けば分かるだろ」フィンが軽く笑う。

エリスが祈りを捧げた。「神のご加護を」

六人は空へと飛び立った。東へ。未知の帝国へ。

地上では、グリムたちが手を振っていた。


飛行中、全員がテレキネシスの訓練を続けた。

セレナが小石を五つ同時に浮かべる。「できた!制御が安定してきた」

フィンは飛びながら、周囲の木の枝を操る。「これ、戦闘で使えるな。投げナイフより速い」

ルナが岩を圧縮し、槍のように尖らせた。「サイコキネシスとの併用で、威力が倍増する」

エリスは治療に応用していた。「傷口を念動力で押さえれば、出血を止められます」

リーザが矢を念動力で加速させる。「射程距離が1.5倍になった」

カインが全員の動きを見て頷く。「いい。全員が戦闘レベルで使いこなせている」

一ヶ月前まで魔法すら使えなかった者たちが、今では高度な念動魔法を操る。

成長速度が異常だが、それがこのパーティーの強みだった。


「テレキネシスには、もう一つ応用がある」

カインが空中で止まり、実演した。見えない力で自分の腕を掴み、関節を極める動作。

「敵の関節を念動力で捻る。骨を折らずに無力化できる」

フィンが目を輝かせた。「暗殺向きだな。音も出ない」

全員が練習を始める。最初は自分の関節で感覚を掴み、次に互いに練習相手になった。

リーザが空中で木の枝を掴み、関節部分を捻って折る。「精密な制御が必要だが、慣れれば一瞬だ」

ルナが複数の石に同時に関節技を仕掛ける。「三体まで同時に極められる」

エリスも習得した。「これなら、殺さずに制圧できます」

セレナは護身用として真剣に練習している。「襲われた時、これで逃げられる」

全員が新しい技術を身につけた。殺傷力ではなく、制圧力が格段に上がった。


一日目の夕暮れ、山間部の洞窟で休憩を取った。

エリスが簡易な食事を準備する。フィンが火を起こし、セレナが周囲の警戒に立った。

「明日の昼には帝国の国境に着く」カインが地図を確認する。

リーザが剣を研ぎながら言った。「帝国は軍事国家だ。冒険者も軍の管理下にある。自由に動けるかどうか...」

「なら、身分を偽る?」フィンが提案する。

「いや、正直に行く」カインが首を振る。「嘘はすぐにバレる。冒険者として正式に登録して、情報を集めよう」

ルナが空を見上げた。「あの方向...妙な魔力を感じる」

全員が視線を向ける。東の空が、微かに赤く染まっていた。

「帝国で、何かが起きている」


朝早く出発した。東の空の赤みは消えていたが、不穏な空気は残っている。

国境が見えてきた。巨大な城壁と、厳重な検問所。兵士たちが武装して立っている。

「あそこで降りるぞ」

六人は城壁の手前に着陸した。検問所に近づくと、兵士が槍を構える。

「止まれ。身分を証明しろ」

カインがギルドカードを見せる。「アルトハイムの冒険者だ。帝国での活動許可を申請したい」

兵士がカードを確認し、目を見開いた。「Aランク...六人全員がBランク以上だと?」

別の兵士が駆け寄ってくる。「隊長!これは上に報告を!」

「何かあったのか」リーザが尋ねる。

兵士が重々しく答えた。「帝都で...魔物の大量発生が起きている。冒険者は全員、召集命令が出ているんだ」


「魔物の大量発生?」カインが眉をひそめる。

「三日前から突然だ。地下から湧き出るように現れた」兵士が説明する。「軍も出動しているが、数が多すぎる。民間人の避難も間に合っていない」

セレナが震える声で言った。「どのくらいの規模なの...」

「最新の報告では、三千体を超える。ゴブリン、オーク、オーガ...上位種も混ざっている」

リーザとカインが顔を見合わせた。これは偶然ではない。

「影喰らいの王...」カインが呟く。「教団の仕業か」

兵士が続ける。「冒険者には特別報酬が出る。一体討伐につき銀貨五枚。Aランクなら指揮官待遇だ」

フィンが笑った。「稼ぎ時じゃねえか」

「行くぞ」カインが歩き出す。「これが異変の正体だ」


帝都への道中、カインはシステムコードを展開していた。

「三千体を相手にするなら、広範囲攻撃が必要だ」

グラビティの応用―地面全体に重力変動を起こせば...

『新規スキル生成:アースクエイク』

『効果:半径500m内の地面を激しく揺らす』

『消費MP:800』

「できた」

試しに空き地で発動してみる。地面が激しく揺れ、亀裂が走った。木々が倒れ、岩が崩れる。

「すげえ...」フィンが驚愕する。

「これなら一度に数百体を無力化できる」カインが満足げに頷く。「ただし、味方も巻き込むから使いどころが難しい」

ルナが興味津々で聞く。「私にも教えて」

「MPが850あるお前なら使える」

二人で訓練を開始した。大魔法―戦況を変える切り札が完成した。


ルナが集中し、魔力を地面に流し込む。

地面が小さく揺れた。だが、すぐに止まる。

「くっ...制御が難しい」

「魔力の流し方が違う」カインが手を重ねる。「一点集中じゃなく、広く薄く広げるんだ」

もう一度。今度は地面が広範囲で揺れた。

『新規スキル習得:アースクエイク』

「できた!」ルナが喜ぶ。

リーザが冷静に言う。「これで二人が大魔法を使える。戦術の幅が広がった」

エリスが心配そうに見ている。「でも、街中では使えませんよね...」

「使う場所を選ぶ」カインが頷く。「敵が密集している場所、味方がいない場所でのみだ」

遠くに巨大な城壁が見えてきた。帝都だ。

だが、城壁の向こうから、悲鳴と爆発音が聞こえる。

戦闘は、既に始まっていた。


待て、もう一つ魔法を作る」

カインが新しいコードを書き始める。サイコキネシスで物を動かせるなら、サイズも変えられるはずだ。

『新規スキル生成:サイズ』

『効果:生物以外の物体の大きさを自由に変更』

『持続時間:解除するまで/消費MP:対象の質量による』

石を手に取り、集中する。石が手のひらサイズから、巨大な岩へと膨張した。

「これは...」

逆に縮小もできる。巨岩が砂粒ほどに小さくなる。

「武器を巨大化すれば威力が上がる。逆に敵の武器を縮小すれば無力化できる」

リーザが興味を示した。「矢を巨大化すれば...」

「攻城兵器並みの破壊力になる」

ルナ、リーザ、フィンにも教えた。全員が習得する。



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