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007

目を覚ましたとき、

俺は ボロボロのテント の中にいた。


色あせた布、

継ぎはぎだらけ。

風が隙間から入り込み、

体が冷える。


汚れた毛布の上で、

全身が引き裂かれるように痛んだ。


隣には、

一人の男がいた。


無精ひげを生やし、

古びた服を着て、

柱にもたれながら

パンをかじっている。


俺が目を開けたのに気づくと、

男はちらりとこちらを見て言った。


「……起きたか。」


そう言うと、

男は何気なく

パンの欠片を投げてよこした。


俺は考えなかった。


疑わなかった。


ただ、

それに飛びついた。


夢中で噛みつき、

喉に詰まりそうになりながら

飲み込む。


固くて、

乾いている。


でも――

生きるためには十分だった。


毒かもしれない、

なんて考えは

頭になかった。


男は、

腹を抱えて笑った。


「ははは!

なんだよ、その顔。

どれだけ惨めなんだ。」


しばらく俺を眺めた後、

男は聞いてきた。


「なあ。

誰が、ここまでお前を

追い詰めたんだ?」


俺は、

手の中のパンを握りしめた。


最初は、

話したくなかった。


喉が詰まり、

声が出ない。


でも、

なぜか――

この男の前では

嘘がつけなかった。


俺は話した。


父のこと。

殴られ続けた日々。

閉じ込められた地下。

豚小屋と鶏小屋。

人じゃなく、

獣のように扱われたこと。


そして、

命がけで逃げ出した夜。


男は、

黙って聞いていた。


遮らず、

笑いもせず。


話し終えると、

男は舌打ちした。


「……最低な親父だな。」


低い声だった。


「自分の子供を

そこまで殴るなんて……」


男は俺を見つめ、

静かに言った。


「だが、

お前がここまで来られたのは――

神の加護かもしれん。」


少し間を置いてから、

男は唐突に尋ねた。


「……復讐したいか?」


俺は、

言葉を失った。


復讐?


そんなこと、

考えたこともなかった。


首を、

小さく振る。


「……いいえ。」


男は、

小さく息を吐いた。


「はあ……

本当に、いい子だな。」


苦笑しながら、

こう続けた。


「俺だったら、

とっくに殺してる。」


俺は俯き、

震える声で言った。


「でも……

父は、大人です。」


男は、

少し驚いた顔をして、

すぐに笑った。


「それがどうした?」


そして、

ゆっくり言う。


「君子、

十年かけて復讐する。

それでも遅くはない。」


男は立ち上がり、

俺の頭に手を置いた。


「聞け、坊主。」


「お前は生き残った。

それで十分だ。」


「これからは――

自分のために生きろ。」


その瞬間、

俺の胸の奥に

何かが灯った。


恐怖でも、

飢えでもない。


それは――


生きる理由。

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