025
アカリは、クロを連れて長い道のりを進んだ。
それはもはや旅ではなかった。
**鍛錬という名の地獄**だった。
毎日、休みなく続く訓練。
肉体だけでなく、精神までも削られる日々。
アカリは何度も言い聞かせる。
「楽な人生を望むなら、
まず自分自身を徹底的に痛めつけろ。」
「肉体も、頭もだ。
どちらも例外はない。」
――そして、二か月が過ぎた。
クロは一人で国境を越えられるほどになり、
さらに一か月の旅を続けた。
だが、その時だった。
アカリが、当然のように言った。
「海路で行く。」
クロは知っている。
その国の海軍は、世界屈指の戦力を誇ることを。
なぜ、わざわざそんな危険な道を選ぶのか。
理解はできなかった。
だが――
師であるアカリは、**圧倒的に強い**。
彼らが辿り着いたのは、一つの浜辺だった。
他の美しい海岸とは違い、
そこはスラム街に属する海だった。
ゴミが散乱し、
海水は濁り、
鼻を突く悪臭が漂っている。
アカリは岸辺に立ち、
静かに手を海へと伸ばした。
次の瞬間――
**凄まじい音波が放たれ、海岸一帯を駆け抜ける。**
約十五分後。
海面が、大きく揺れた。
姿を現したのは――
**異常なほど巨大なイルカ**。
その身体は規格外で、
全身には無数の深い傷跡が刻まれていた。
アカリは振り返り、言う。
「乗れ。」
クロが理解する間もなく、
その背に乗せられ――
二人は、一気に大海原へと飛び出した。
「す、すげぇ!!
どうやってこんなことを!?」
クロが叫ぶ。
アカリは淡々と答えた。
「前に調伏した。」
「アステリオンに到着した直後だ。」
「力でねじ伏せ、
無理やり従わせる魔法――
いわゆる“調伏術”だ。」
「なかなか便利だぞ。」
だが、すぐに付け加える。
「ただし、限界はある。」
「無差別に使えばいいというものじゃない。」
「使い魔を成長させたいなら、
最終的には**自らの意思で従わせる必要がある。**」
アカリは、わずかに笑った。
「道中で運が良ければ――
東洋竜や西洋竜に出会えるかもしれん。」
「それを従えられたなら……
何代にもわたって自慢できるだろうな。」
そう言い終えると――
アカリは、**そのまま海へ飛び込んだ。**
クロは言葉を失う。
水中を歩くだけでなく、
アカリは**信じられない速度で海中を駆けていた。**
その声が、水の中から届く。
「これが次だ。」
「――お前に教えるものだ。」




