024
その日を境に――
クロの心は、確かに変わり始めた。
彼は初めて理解した。
自分の最大の弱点は、力ではない。
――依存だ。
クロは深く頭を下げ、かすれた声で言った。
「……師匠。
どうか、俺を“強者”にする方法を教えてください」
アカリは腹を抱えて笑った。
「馬鹿か?」
「そんなもん、
強者の理論なんて存在しねぇんだよ」
クロは言葉を失った。
アカリは腕を組み、冷たい視線を向ける。
「強くなるには、まず二つだ」
「力と――
精神だ」
「力は時間をかけりゃ身につく。
俺について来れば、いずれ強くはなる」
「だが、頂点に立てるかどうかは別だ。
それは誰にでもできることじゃねぇ」
アカリは一歩近づき、クロの目を見据えた。
「問題は精神だ」
「一つだけ、助言をやる」
「常に、自分は相手より強いと思え」
「自分の立てた策を、最後まで信じろ」
「たとえ負けると分かっていても――
勝つと自分を騙せ」
「震えるな。
迷うな」
声は、容赦なく冷たかった。
「誰も、お前がどう死んだかなんて気にしねぇ」
「生き残った奴だけが、強者だ」
「強さは、綺麗事じゃねぇ」
「強者ってのは、
頭で戦う存在だ」
「分かったか、この馬鹿弟子」
クロは立ち尽くした。
反論も、言い訳もない。
ただ――
刻み込んだ。
そしてその日から、
クロとアカリは再び旅に出た。
次の目的地は――
世界第三位の大国。
そこは、
発展速度は世界トップ
軍事、技術、魔法、すべてが最上位
完全な“戦争国家”
クロは尋ねた。
「……師匠。
どうしてアステリオンの闘技場を、あそこまで壊したんですか?」
アカリは即答した。
「毎年、数百人が死んでる場所だからだ」
「全員が戦いたくて来てるわけじゃねぇ」
「少し力のある貧乏人を、
金持ちが無理やり出場させる」
「はした金を投げて、
命を娯楽にする」
アカリは目を細めた。
「それに――
あの国は、もうすぐクーデターが起きる」
「クーデターを成功させる方法は簡単だ」
「王族、貴族、政治家を一気に消す」
「で、そういう連中は決まって――
闘技場に集まる」
淡々とした声が、
逆に恐ろしかった。
クロは何も言わなかった。
だが、理解していた。
――もう、この道に
引き返す場所はない。




