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23/26

023



目を覚ましたとき、

クロは**広い岩穴の中**にいた。


天井は低く、空気は冷たい。

湿った土の匂いと、乾いた血の臭いが混じっている。


全身は**包帯だらけ**だった。


少し動かすだけで、

鈍い痛みが背骨を這い上がる。


「……また、こういう状況か」


不思議と、恐怖はなかった。


*――師匠が助けてくれた。*


それだけで、十分だった。


クロは動かず、そのまま横になる。

何もせず、ただ待った。


一時間。

二時間。

三時間。


誰も来ない。


四時間。

六時間。

十二時間。


喉は焼けつくように渇き、

唇は裂け、

意識が少しずつ遠のいていく。


*大丈夫だ……*

*きっと、何か用事があるだけだ……*


二日目が過ぎた。

三日目に入った。


その時になってようやく、

クロの胸に**本物の恐怖**が湧き上がった。


心臓が早鐘を打つ。

呼吸が乱れる。


*――もし、師匠が戻らなかったら?*


それでもクロは、

洞穴から出ようとしなかった。


食べ物を探さない。

水を探さない。

逃げ道を探さない。


ただ横になり、

**救われるのを待ち続けた。**


---


三日後。


洞穴の入り口に、

一人の男が立っていた。


アカリだった。


衰弱しきり、

干からびたように横たわるクロを見て、

彼の表情はわずかに曇った。


「……失望した」


「し、師匠……!」


クロは目を見開き、

喜びに満ちた顔で立ち上がろうとした。


次の瞬間――


**ドンッ!**


鋭い蹴りが腹に突き刺さり、

クロの身体は壁に叩きつけられた。


「俺は、お前を甘やかしすぎた」


アカリの声は、氷のように冷たい。


「今日、俺が戻らなかったら――

お前はここで死んでいた」


クロは言葉を失う。


「闘技場でも同じだ」

「お前は、あの場で死ぬつもりだった」


「勘違いするな」


アカリは見下ろすように言った。


「お前がどう死のうが、

誰も気にしない」


「評価されるのは、

**生き残った者だけだ**」


彼は指を立てる。


「生きるためには、常に**複数の計画**を持て」


「計画A。俺が戻るのを待つ」

「計画B。自分で食料を探す」

「計画C。この場所から這い出る」


「お前には、一つしかなかった」


「それが失敗した時点で、

お前は終わりだ」


アカリは背を向ける。


「次からは、正面から戦うな」

「頭を使え」


「強者は、正々堂々なんて気にしない」


「強者は――

**生き残ることだけを考える**」


クロは、その場に立ち尽くした。


その言葉は、

胸の奥、

誇りの芯を**粉々に砕いた**。


その瞬間、クロは理解した。


*自分が弱かった理由は――*

*力が足りなかったからじゃない。*


*“生き方”を知らなかっただけだ。*




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