021
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その日が、**締め切り最終日**だった。
「登録、完了だ。」
アカリは何事もないように言った。
……この人、本当にタイミングが狂ってる。
狙ったかのように、**最終日ピッタリ**。
そして――
なぜか分からないが、
**翌日には試合。**
早すぎるだろ。
俺はもう五か月、アカリについてきた。
死ぬほど修行したわけじゃない。
でも――
**身を守るくらいの力**は、確実についた。
(今日は……
俺がどこまでやれるか、
師匠に見せてやる。)
そう思った瞬間――
係員が、無慈悲に言った。
「初戦の相手は……
**前大会・優勝者**。」
……は?
俺は心の中で叫んだ。
(なんでだよ!!
どうしてそうなるんだよ!!)
絶対、
**この師匠と一緒にいると運が悪くなる。**
俺が闘技場に出た瞬間、
歓声が――
いや、**罵声が降り注いだ。**
「誰だあのガキ!」
「負け確定だろ!」
「さっさと消えろ!」
無言の圧力が、胸を押し潰す。
相手が姿を現した瞬間、
空気が変わった。
――デカい。
身長は、**二・五メートルはある**。
筋肉の塊。
まるで人型の怪物だ。
俺は必死に頭を回す。
(落ち着け……
俺の武器は――)
火。
それと――
**速度。**
――笛が鳴った。
次の瞬間。
「――ッ!!」
奴は、**飛んできた。**
まるで地面を蹴っていない。
拳が、そのまま俺の顔へ――
俺は咄嗟に腕で防いだ。
**ドンッ!!**
衝撃と共に、
体ごと壁へ叩きつけられる。
壁が――
砕け散った。
口の中に、鉄の味。
血が、垂れる。
(……なんだよ。
強すぎるだろ……。)
次の瞬間、
奴はもう目の前にいた。
俺は転がるように回避し、
走る。
走る。
走る。
闘技場をぐるぐる回る俺に、
奴は苛立ちを見せた。
その時――
奴の腕から、
**木が生えた。**
――いや、違う。
**木そのものが腕だ。**
次の瞬間、
無数の木の杭が飛び出し――
俺の体を、
**壁に縫い付けた。**
「――ぐっ!!」
動けない。
(なんだよ……
こんなの、反則だろ……!!)
奴が、ゆっくりと歩いてくる。
――殺される。
その瞬間。
**ボンッ!!**
俺の体から、
炎が噴き上がった。
木は一瞬で焼き尽くされ、
俺は壁から転げ落ちる。
だが――
炎の向こうから、
**拳が飛んできた。**
――直撃。
再び、壁。
今度は、逃げなかった。
(……決めた。)
もう、防御はしない。
視界が――
**白く染まる。**
理性が、遠のく。
全身を、炎が包む。
特に――
**拳が、熱い。**
俺は、踏み込んだ。
「――うおおおおッ!!」
**ドンッ!!**
拳が、奴の顔面に直撃。
奴の頭が、横に吹き飛ぶ。
だが――
奴も、笑った。
拳が、俺に返ってくる。
**殴る。
殴られる。**
互いに、後退しない。
その時――
奴の背後から、
再び木が伸びる。
俺は叫びながら、
拳を振るった。
**空気が、爆ぜた。**
――突風。
観客が、息を呑む。
だが。
次の瞬間――
俺の足が、崩れた。
限界。
視界が、暗くなる。
(……くそ……。)
そして――
**木の槍が、俺を再び壁へ縫い付けた。**
完全に、動けない。
奴は、跳んだ。
――とどめ。
その瞬間――
闘技場の空気が、
**凍りついた。**
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