017
今日は、俺が物質操作の修行をしていると、アカリが近づいてきて言った。
「今日中に重力を習得できたら、
もっと面白い場所に連れて行ってやる。」
“新しい土地”という言葉を聞いただけで、
全身がぞくりと震えた。
この一週間、俺は平民区を歩き回った。
通りも、家並みも、
どこも似たような景色ばかりだった。
アステリオンには、
まだ俺が足を踏み入れていない半分の国土がある。
だがアカリは言った。
「どこも大して変わらん。」
その一言で、俺の興味は薄れた。
――だからこそ。
俺は必死に修行することを決めた。
新しい土地が見たい。
もっと広い世界を知りたい。
俺は三週間も物質操作を練習していたが、
成果はほとんどなかった。
それでも――
今週こそは、必ず。
週の最後の日、
アカリはまた俺に自分を背負わせた。
一日中歩かされ、
背中は悲鳴を上げ、
脚は震えていた。
しかも、
重力を習得できない俺に、
アカリは食事すら与えなかった。
限界に近づいたその時――
不意に気づいた。
アカリの体が……
軽い。
異様なほど軽い。
俺がゆっくりと身を引くと――
信じられない光景が目に入った。
アカリの体が、
宙に浮いていた。
「アカリ!! 起きて!!」
俺は叫んだ。
次の瞬間、
アカリは地面にドサッと落ちた。
俺は叫びながら言った。
「できた!
俺、できた!!」
アカリは起き上がり、服の埃を払って笑った。
「ああ、分かった分かった。」
「実はな、最初から起きてた。」
「お前ができたことも、全部分かってたさ。」
その夜、
俺たちは星空を見上げながら並んで座った。
アカリは静かに言った。
「急がせたのは理由がある。」
「明日、俺たちは富裕区へ行く。」
「弱い奴は、
あそこじゃ生き残れん。」
満天の星が、
夜空いっぱいに広がっていた。
しばらく沈黙した後、
アカリがふと尋ねた。
「なあ……
昔、お前はなぜあの家で耐えていた?」
俺は少し考えてから答えた。
「……父さんと母さんだったから。」
「どんなに酷くされても、
我慢するべきだと思ってた。」
アカリは小さく笑った。
「馬鹿だな。」
「どう見ても、お前は実の子じゃない。」
「青い目に金髪。
あいつらは黒髪に茶色の目だろ。」
「違和感、なかったのか?」
――その瞬間。
頭の中が真っ白になった。
俺には……
本当の親がいないのか?
胸が締め付けられるほど苦しくなった。
それと同時に、
強い疑問が湧き上がる。
アカリは一体何者なんだ?
なぜこんなにも多くを知っている?
なぜ俺を弟子にした?
だが――
その答えを聞く前に。
まぶたが重くなり、
俺はそのまま――
深い眠りに落ちた。




