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014

その夜、

俺の心臓は

ドクドクと鳴り止まなかった。


壁を越える――

命懸けの大脱走。


そんな危険な光景ばかりを

頭の中で想像していた。


でも実際には――


アカリは俺の手を引き、

まるで散歩でもするかのように

平然と壁へ向かって歩いていった。


門の前には、

二人の兵士が立っていた。


俺とアカリは、

盗んだ服を着ていた。


相変わらず粗末で、

いかにも貧乏そうな格好だ。


……はずだった。


歩くにつれて、

服の色が

少しずつ変わっていく。


布は艶を帯び、

質感が増し、

いつの間にか――

上品な服へと変わっていた。


アカリも同じだ。


彼の服は

淡い金色へと変化し、

まるで貴族のように見えた。


兵士が槍を交差させ、

門を塞ぐ。


「おい。」


「身分証はあるか?」


アカリは頭を掻き、

へらっと笑った。


「いやぁ、

金は持ってないんだが……」


そう言って、

手のひらを開く。


そこには――

四粒のダイヤモンド。


「これがある。」


「どう使えばいいか分からなくてな。」


「通してくれないか?」


兵士二人の目が

一気に輝いた。


何度も頷き、

慌てて道を開く。


こうして俺たちは――

あっさりと門を通り抜けた。


……あまりにも、簡単に。


俺は呆然とした。


驚きが、

次の驚きを連れてくる。


この時、

俺は初めて知った。


金の力というものを。


門を越えた瞬間――

世界が変わった。


夜なのに、

通りは明るい。


街灯が並び、

まるで魔法みたいに

街全体が輝いている。


俺は歩きながら、

何もかもが気になった。


「これ、何?」


「これは?」


「すげぇ……これは?」


アカリは一つずつ答えてくれた。


「街灯だ。」


「広告板。」


「箒で飛ぶ乗り物。」


「娯楽区画だ。」


どれも、

俺の知らない世界。


すべてが――

眩しくて、

夢みたいだった。


その夜、

アカリは宿を一部屋借りた。


俺は思わず聞いた。


「なあ……」


「さっきの金、

どこから出したんだ?」


アカリはニヤリと笑った。


「魔法さ。」


それだけ言って、

肩をすくめる。


俺は吹き出し、

アカリも笑った。


二人で、

声を上げて笑った。


そして――

そのまま、

深い眠りに落ちた。


明日がどんな日になるかも知らずに。

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