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彼は、僕にいくつかの小さな魔法のコツを教えてくれた。


最初は、

正直よく分からなかった。


話を聞くと簡単そうなのに、

いざやってみると、

頭の中がぐちゃぐちゃになる。


火は出ない。

出ても、一瞬で消えてしまう。


それなのに――


僕は、魔法が大好きだった。


試すたびに心臓が速く打つ。

空腹も、疲れも、全部忘れてしまう。


一回目は失敗。

二回目も失敗。


それでも、諦めなかった。


どうしても魔法が欲しかった。

自分の力として、手に入れたかった。


彼は首を振って言った。


「おいおい、坊主。

魔法はな、

やりたいって気持ちだけじゃ身につかねぇ。」


「何度も何度も、練習が必要なんだ。」


そう言って、

彼は材料を探しにその場を離れた。


しばらくして、

彼が戻ってきた時――


僕は、汗だくになっていた。


全身が震え、

息が荒い。


そして、僕の手の上には――


小さな、火の玉があった。


不安定で、

今にも消えそうだったけれど、


確かに、

そこに存在していた。


彼はその場で立ち止まった。


目を見開き、

心の中で小さく笑う。


――本当に、早いな。


僕は跳ねるように喜んだ。


まるで、

生まれて初めて

おもちゃをもらった子どもみたいに。


その姿を見て、

彼はふと、

昔の誰かを思い出した。


だが、すぐにその記憶を振り払った。


彼は僕の前に立ち、

低い声で言った。


「明日、

俺は行く。」


「俺には、俺の旅がある。」


「もし俺がいなくなっても、

探すな。」


その言葉を聞いた瞬間、

胸がぎゅっと締めつけられた。


今まで、

誰も僕に優しくしてくれなかった。


殴らずに、

何かを教えてくれた人なんて、

いなかった。


僕は耐えきれず、

彼の服を掴んだ。


涙を流しながら、叫んだ。


「一緒に行きたい……!」


「お腹が空いてもいい!」

「満足に食べられなくてもいい!」


「お願いだから……

あの家にだけは、

戻さないで……!」


嗚咽が止まらなかった。


彼――アカリは、

しばらく黙っていた。


心の中で思う。


――こんな子どもが、

俺の過酷な旅について来られるはずがない。


それでも――


「……仕方ねぇな。」


その夜、

アカリは静かに立ち去ろうとした。


だが――

目の前にいたのは、僕だった。


離れない。

しつこく、しがみつく。


彼は深くため息をついた。


「寝ろ。」


僕は首を振った。


「嫌だ。」


「置いていかれるのが、怖い……。」


アカリは言った。


「約束する。

置いていかない。」


それでも、

僕は信じきれなかった。


でも、

体は限界だった。


僕は彼の手を強く握ったまま、

眠りに落ちた。


翌朝――


アカリは、そこにいた。


約束通り、

どこにも行かなかった。


その日から、

僕は彼と一緒に旅を始めた。


そして――

あの家の前を通った時。


庭には、

母と弟がいた。


胸が震えた。


けれど、今回は――

下を向かなかった。


僕は勇気を振り絞り、

叫んだ。


「クソ野郎ども!!」


声は、

空に響いた。


――初めてだった。


僕が、

過去から逃げなかったのは。

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