セシリアの!!〇〇!! (1016字
そしてしばらくして殿下の、穏やかな寝息が聞こえてきました。
「……ラスティエル殿下?」
小さく呼びかけてみましたが、返事はありません。
ああ、眠ってしまわれたのですわね。
やっぱりよほどお疲れだったのでしょう。
わたくしは、そっと指を止めました。
眠っている殿下の顔を、じっと見つめました。
普段は自信に満ちた表情をしていらっしゃる方なのに、今はまるで幼子のよう。
金色の髪が額にかかっているのを、横に流すように撫でました。
「殿下」
小さく呟きます。
「わたくしのために、色々と考えてくださって……ありがとうございます」
殿下は答えません。
ただ、穏やかに眠っています。
「わたくし、断罪のことばかり気にしていて……殿下のお気持ちを、
ちゃんと考えていませんでしたわね」
自分が断罪されることばかり恐れて。
破滅を回避することばかり考えて。
殿下と深く関わることから逃げてばかりでした。
殿下は、ずっとわたくしのことを考え、守ろうとしてくださっている。
決して敬称を外さず、愛称で呼ぶこともしないのを
何も言わないでいてくださっている。
「駄目な婚約者でごめんなさい、ラスティエル殿下」
わたくしは、そっと殿下の手を取りました。
大きくて、温かい手。
この手が、いつもわたくしを守ってくれていた。
「これからは、わたくしも……殿下を支えられるようになりたいです」
殿下の手をそっと握りしめました。
「セシリア様」
マリーが声を潜めて部屋に入ってきました。
頼んでいたハーブティーを持ってきてくれたことにお礼を言うと
膝枕をしているわたくしを見て、小さく微笑みました。
「大切になさっていらっしゃってるんですね。
殿下への想いが伝わってまいります」
「当然ですわ。殿下は……わたくしの大切な方ですもの」
そう言ってから、わたくしは頬が熱くなるのを感じました。
もう!マリーったら何を言わせるのかしら。
マリーは、くすくすと笑いながらも気を使ってかすぐに部屋を出て行きました。
わたくしは、もう一度殿下の顔を見つめ、髪を優しく撫でました。
いつもまっすぐにわたくしを見つめてくれる大好きな薄紫の瞳が
今は隠れていることに少しだけ淋しさを覚えます。
穏やかな寝顔。
この人を、これからはわたくしが守りたい。
前世では誰もわたくしを守ってくれませんでした。
でも、今は違う。
この人が、いつもわたくしの側にいてくれる。
殿下が目を覚ますまで、ずっとその側にいました。
殿下の手を握りしめて。
もう二度と、離さないと決めて。
エピソードタイトルは殿下の心の声
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