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破滅より王子の溺愛が脅威なんですが!?  作者: ささい


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13/22

オープニングCG:全員集合

レヴィーナ王女殿下がルーンフェルド王国へ到着されてから、三日が経ちました。

今宵は王女殿下を歓迎する晩餐会。


「緊張してる?」


ラスティエル殿下の低い声が、すぐ隣から聞こえました。

殿下の腕に手を添えながら、わたくしは小さく首を横に振ります。


「いいえ。殿下がご一緒ですもの、大丈夫ですわ」


そう答えたものの、心の片隅に微かな違和感が引っかかっているのも事実でした。

けれど殿下を不安にさせるわけにはいきません。

わたくしは笑みを浮かべて、殿下のエスコートに身を委ねました。


晩餐会場の扉が、侍従によって静かに開かれました。

王宮の大広間は、いつにも増して華やかに飾り立てられていて

光の変化に少しだけ目を細めてしまいました。


その瞬間、突然"物語のシステム"に介入されたような、

現実感が失われたような感覚に襲われました。

音楽も、人々の談笑も確かに耳に入っているはずなのに、どこか遠くに聞こえます。


ほんの一歩踏み出しただけなのに、景色が切り替わったように感じたのです。

まるで舞台の幕が上がった瞬間のように、会場の一角が

くっきりと視界に飛び込んできました。


会場の中央には、鮮やかなマゼンタ色の瞳が目を引く少女、レヴィーナ王女殿下。

年齢相応の可憐さと、無邪気な明るさを

そのまま形にしたような笑みを浮かべていらっしゃいます。


その両側には、ルーンフェルド王国の高位貴族の青年たち。

学園時代に社交の場で何度か顔を合わせた方々。

レグナント侯爵家次男、アルフレイド様。

アレシュフォード侯爵家三男、エドウィン様。

エルロイ伯爵家の嫡男、リシャール様。


そして初めて見る、二人の青年。

マリーの情報では

一人は宰相補佐室から殿下を補佐するために出向されるという、

オルディアス侯爵家のご嫡男、お名前はセルヴァン様。


もう一人は、今年近衛騎士に昇格されたばかりだという

レンベルド伯爵家のご嫡男、フェルミオ様。


マリーが事前に伝えてくれた情報を頼りに頭に叩き込んできた人物たちです。


王女を取り囲む彼らの立ち位置に既視感を覚えました。

初めて見る顔ぶれもいるのに、この配置は知っているような光景。

乙女ゲームのヒロインと攻略対象者たちが一堂に会する、

まさにあのオープニングの勢揃いシーンそのもののようです。


(まさか……)


気づけばわたくしは足を止めていました。

レヴィーナ王女殿下が、わたくしたちに気づいてぱっと笑顔を向けられる。


「まあ、セシリア様。今日もとてもお綺麗ですわ!」


王女殿下とは到着初日の謁見の場でお会いしたきりですが、王女殿下は人懐っこく、

わたくしにも親しげに話しかけてくださいます。


その笑顔に悪意はひと欠片もないのに、背筋が冷えていく。

まるで正規ヒロインが、目の前で形を成していくようでした。


そして次の瞬間。


攻略対象者たちが一斉にレヴィーナ王女殿下へ視線を向け、

その誰もが、まるで"新たな物語の主役"を見るように、

王女殿下を中心に緩やかな円を描いていたのです。


会場の空気が、僅かに揺れた気がしました。


(これは……まさか、追加コンテンツが……?)


前世でプレイした乙女ゲームには、追加コンテンツがあると聞いていました。

けれどわたくしは卒業試験の準備で忙しく、プレイする時間がなかったのです。


それなのに、今、目の前で起きているこの光景は。


ほんの数秒のことなのに、心臓が早鐘のように脈打ちます。

殿下が潰してくださったはずの破滅フラグとは別の流れが、ここで巻き起こっている。


「セシリア」


殿下の声が、低く、鋭く響きました。

視線を上げると、ラスティエル殿下がわたくしを見つめていらっしゃいます。

その薄紫の瞳には、普段の穏やかさとは違う、何か研ぎ澄まされたものが宿っていました。

殿下もお気づきなのでしょうか。

この異様な空気の変化に。


ラスティエル殿下はわたくしの手をそっと、けれど確かに握りしめられました。

その手の温もりが、まるでこう語りかけているようでした。


――何があっても、離れないで。


わたくしは小さく頷き、殿下の手を強く握り返しました。

世界の強制力に負けるつもりなんてない。

けれど、頭の片隅であの『破滅』の足音が再び聞こえ始めた気がしました。


 

 

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