Sランクの圧力
神託学園、中央演習場。
その中央に立つ少女の金髪が、風に揺れていた。
彼女の名は——ユナ。
Sランク、光属性の術士。
現役最強の生徒のひとりであり、レンの数少ない味方でもある。
「模擬戦を行います。参加者は、天城レンとユナ。戦闘形式は一点突破型の実戦訓練」
告げるのは教官アーク。
その目には、レンを試す鋭さと、どこか期待めいた色が混ざっていた。
「……お前、まだ体慣らしも終わってないだろ」
カグラが演習場の片隅で腕を組んで呟く。
しかし、レンは短く答えた。
「だからちょうどいい。俺の限界を見てみたい」
対するユナも、剣を抜くように光の槍を手にした。
「手加減はしませんよ?」
「それでいい。来い、ユナ」
——開始の合図。
光が爆ぜる。
ユナが地を蹴り、光速の踏み込みで懐へ迫る。
その動きは、Fランクのレンでは視認すら困難なはず——
だが、
「《空白・発動:風走》」
風のスキルを使い、レンもまた高速移動で迎撃。
刹那、両者がすれ違う。
「っ……!!」
ユナの頬に一筋の血。
(まさか……視えている!? 私の光速の動きを!?)
レンの空白は、一度見たスキルだけではなく、それに対処する術すら吸収・再構築する。
「すげぇ……マジで、アイツ、Sランクと渡り合ってる……!」
「まだFランクってウソだろ……」
観客席の生徒たちがざわめく中、アークは独りごちた。
「この短期間で、ここまで完成度を高めてくるとはな。やはり、才能の塊だ」
演習場では、光と風、熱と圧力が交錯していた。
ユナの光槍が乱舞し、レンがそれを全て回避・あるいは打ち落とす。
——数分後。
両者の動きがわずかに鈍ったそのとき、レンが言った。
「《空白・再構成:光槍・斬》」
彼の手の中に、ユナの光槍と、ほぼ同一の形状の武器が生まれる。
「なっ——!」
レンは、そのまま槍を振るい、ユナの槍を打ち落とす。
「終わりだ、ユナ」
が、そのとき。
ユナの目が、鋭く輝いた。
「——甘いですよ、レンくん」
背後から、もう一振りの光槍が現れる。
(しまった、誘導された!?)
レンの足が止まる。
だがそのとき——
「おっと、そこまでだ」
アークの声とともに、戦場が静止した。
演習場全体に重力結界が張られ、両者の動きを封じる。
「引き分けとする。……それ以上は、訓練の域を超える」
アークは淡々と言ったが、教官席からはどよめきが漏れる。
(……このレベルで、引き分け?)
(いや、むしろ……レンはSランクと互角!?)
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演習後、ユナとレンは並んで歩いていた。
「……強いですね、レンくん」
「お前もな。光速って……チートかよ」
ユナはふっと笑う。
そして、少し真面目な顔になった。
「ねえ、レンくん。あなた、自分の力……怖くないの?」
レンは、一瞬だけ迷い——そして、答えた。
「正直、怖い。でもそれ以上に知りたいんだ」
「俺の力が、誰かを傷つけるのか。それとも——誰かを救えるのか」
その言葉に、ユナの表情が変わる。
そして、そっと手を差し出した。
「なら、私もその答えを一緒に探す……いい?」
レンは、一瞬ためらい——その手を握った。
「……ああ、頼りにしてる」
空白の力は、まだ未完成。
だが確かに今、レンの中に「何か」が芽生え始めていた。
それは、戦う意味か、仲間を信じる心か——