織華と少納言(1)
「はあ……成世様……可愛すぎてたまりませんわ……」
私は阿久間織華。
単刀直入に言おう。私は同じクラスの芋煮成世様に惚れている。
……勿論、恋愛的な意味でだ。
「どうにかしてお近づきになれないかしら……」
成世様は孤高の美少女であり、本物のお嬢様。
何とか彼女に近づきたいとお嬢様口調にしてみたりなんかしたが、私は所詮似非。偽物。
話しかけるなんて出来やしない。
せめて共通の趣味でもあれば話しかけやすいのだが……。
結局今日も私は彼女を見守るだけの日々を過ごした。
「……やった。これで明日はきっと話しかけられるわ」
最近ずっと成世様を見守っていたところ、彼女にはある趣味があることが分かった。
彼女はどうやら、ファンタジークロニクルというアプリゲームにハマっているらしい。
家が貧乏な為重課金は出来ないが……少しでも彼女と話すきっかけが欲しかった私はアプリをダウンロードした。
アプリゲームどころかゲームすら、生まれてこの方一度もやったことがないけれど……。
というかこのスマホ、割と古いけど対応機種に入っていただろうか……?
「良かった。起動できるみたいね。……あら?」
よく見るとタイトルがリアルファンタジークロニクル、となっている。
アップデートで名前が変更されたのだろうか?
そういうのはよくある話だと聞いた。
「まあ大丈夫よね」
最初のガチャは無料で引けるらしく、説明のままに私はガチャを回す。
……その時だった。
「きゃっ、やだ……!なんなのこれ!」
突然スマホが激しく輝き出し、どんどん熱くなっていく。
「ゲームの演出……!?や、やだ!熱い!」
もしかしたら機種が古過ぎたのかもしれない。
スマホの熱さに耐え切れず、私はスマホを落としてしまった。
ああ……!こんなことなら新しいのを買っておけば良かった……!!
……暫くすると光はどんどん収束していった。
そして、目の前にはいつの間にか一人の男が立っていたのだ。
「……!?」
「そうか。お前がボクを呼び出したんだな……」
「あ、あなた、誰……!?」
「ああ。挨拶が遅れたね。ボクは少納言。長いから『なぎ』って呼んでくれても……」
「へ、」
「……へ?」
「変態っ!!!!」