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07.推しと過去の歴史と 1


 そもそも、原作はルシアちゃんが我が国ヒュドールに来るところから始まる。輿入れってやつだ。


 とはいえ、婚姻は三年後、ルシアちゃんが十九才になってから。

 たしかルシアちゃんは十六才でヒュドールに来た。

 三年で王妃教育を受け、その間にヒュドールに馴染むためだ。

 何度も読み返した小説だから、ちゃんと覚えている。


 最初に王太子レオナルドと顔を合わせるんだけど、「美人と聞いていたが、嘘だな」ってレオナルドがポロッと言っちゃうんだよね。

 それを聞いたルシアちゃんは不美人って言われたと思って激怒する。そこで二人とも言い合っちゃうの。


 ヒートアップして、結局顔合わせは険悪な雰囲気で終わってしまう。


 レオナルドの発言の意味は一巻での最後でわかるんだけど、巻末で「お前は美人っていうより可愛いだろ」ってレオナルドが言うの。


 つまり、「美人って聞いていたが嘘だな」のあとに続く言葉を省略してたってこと。


 レオナルドの口数の少なさ、それ将来国王になったとき大丈夫なの? とかマジで国際問題になるぞお前! とか思わなくもないけど、ルシアちゃんにだけ不器用っていうか、女の子にどう接したらいいかわからない、ましてや将来のお嫁さんになんと声をかけていいかわからない、十五才の王太子の甘酸っぱい困惑だったってことがわかる。


 そう、レオナルドはルシアちゃんよりひとつ下の年下。


 レオナルドにとってルシアちゃんは姉さん女房になるんだよね。

 レオナルド様、結構それがコンプレックスらしくて、年下ネタで揶揄われると本気で怒る。

 そういうところー! ってみんな突っ込みたくなるやつだよねえ。


 そんな甘酸っぱい二人のいちゃいちゃが、現実社会で荒んだ心への潤いだった。

 前世の<わたし>の記憶は、今はぼんやりとしか思い出せなくなっている。小説のあらすじは覚えているのに、家族とか、わたし自身がどういう人間だったかは霧がかかったように朧げだ。


 でも、そこそこ良い大人だったんじゃないだろうか。良い大人がライトノベルを買っていたのか、という問いはともかく。ともかく。


 たぶん、前世もそこそこ幸せに暮らしていたんだと思う。


 前世を思い出した六才の頃、おばあさまの蔵書や、村の役場に置いてある本など、知識や記録がつまったものはすべてひっくり返して読み漁った。

 読み書きはまだ教わり始めた頃だったから、大人たちは文字がわかるのが楽しくて本を読むことが楽しいのだろうとにこやかに見守ってくれていた。


 だけど、わたしは必死だった。必死でわたしと同じような人間がいないかを探し回った。


 世界を越えてしまった人間はいないか。

 ある時期に急激に発展した技術や文化がないか。

 その片鱗を、糸を手繰るように辿っていった。


 そして、わかったことがある。わたしのような人間が、わかっているだけで過去に二人はいたことを。


エタらないように(フラグ)

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