20. 推しとわたしと王太子とじゃじゃ馬
ヒュドール王には五人の子どもたちがいる。レオナルドは第二子であり、正妃の子供である。
そして第一王子、第一王女、第二王女もまた同腹の兄弟だという。そして珍しく正妃と側妃の仲が良いことで有名だ。なにしろヒュドール王は正妃にぞっこんであり、王太子時代から彼女以外の妃はいらないと豪語していた。しかし側近たちの重圧に負けて娶ったのが、かつて女騎士だった現側妃だ。
かつてヒュドール王が戦場で友諠を結んだという女騎士であり、彼女はなんというか──豪胆な人だったらしい。出世欲がなく、王室に忠義が厚い。初夜は乙女のようなヒュドール王の悲鳴が城内に響いたと村の郵便局員が言っていた──……おっと。そして第三王子を産んだ側妃は「任務が完了しました」と王子の継承権を放棄し、第三王子とともに田舎の領地に引きこもっているらしい。女傑の匂いがする……。
「妹、とはどちらの王女様でしょうか……?」
「聞いたことはないか? イカれた第二王女の話は」
「……ありません」
聞いたことあっても王太子の手前、イエスとは言えない。レオナルドは頭が痛い、と言わんばかりにこめかみを押さえた。
「イカれた、とは言いすぎだ。王族に対しては不敬ではあるが、しかしそう言いたくなる気持ちもわかる。いままで婚約破棄を九回もされている」
「婚約破棄、ですか?」
「ああ」
「それは……ええと」
「いずれも相手の令息が泣きながら無理です! と陛下に頭を下げて破談になった」
ええ……? それってやばくない? 王族相手に婚約を破談ってできるものなの?
「文字通り首を切られ家門を潰される覚悟での懇願だ。それほど、手のつけられない妹だとも言える」
「僭越ながら、お相手がそこまで至った理由についてお聞きしてもよろしいでしょうか……?」
「妹は…………」
レオナルドは傍らにいた推しを見上げた。しかしレオナルドは小さく舌打ちをして、リリさんを見る。リリさんは「ちょうちょ飛んでる」みたいな顔でなにもない虚空を見つめていた。レオナルドは再度舌打ちをした。
「アシュ、言ってやれ」
「私の口からはとても」
推しはきっぱりと言った。
「ではリリ、副団長の代わりに責務を果たせ」
「私の給料は護衛分しか出てないのでぇ……」
リリさん、心臓が強い。推せる。
「……会ってみればわかるだろう」
コホン、とレオナルドは咳ばらいをしてからそう言った。レオナルドは年下腹黒属性だと思っていたけど、なかなかの苦労属性も持ち合わせているようだ。推せないけど。
ストック開放~!とりあえず続けられるように頑張ります。
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