ひきこもり、魔法を使う。
「ステータス、オープン。」
消費MPを確認するために、まずウィンドウを表示する。
そして、マッチの先の小さな火をイメージして、先ほど感じた魔力の流れの感覚にしたがって、魔力をこめる。
初めてで、緊張したからだろうか。俺は魔力を込める時に力んでしまった。
次の瞬間、目の前に半径十メートルほどの、真っ白な火の玉が現れた。
突然、周囲の温度が上がる。これをこのまま放つのはヤバい。火の海になる。俺が魔王になってしまう。
とっさの判断でこの火の玉を上空に打ち上げようと判断する。花火みたいにすれば大丈夫なのではないか。
焦っていたので、また魔力をコントロール出来なかった。
火の玉は弾道ミサイルのような、とんでもないスピードで上空へと打ち上がる。
そしてそのままこの星から出て行ってしまう。
はじめて使った魔法が家出した件について。
異世界の宇宙空間とか想像つかないんだけど。空気なくても燃えるのかな。魔力だしどうなんだろ。
しばらくすると夜空が突然明るくなる。魔力に酸素はいらないようだ。地球からオリオン座が見えるようなスケールで、花火が見える。
無意識にイメージしたのか、とてもカラフルで美しかった。
しかしこの花火の問題はこの星の半球にいる人々全員に見えるであろうことだ。
「異常者、現れましたよー!!!」とこの世界に教えているようなものである。
いやまずいね。これは。魔王じゃん俺が。
すぎたことはしょうがない。消費MPを確認する。
MP 9998/9999
あれで1かよ。ちょっと待てよ。もしかして俺の1番の敵は俺なのではないか。
例えば不意に襲われて、驚いてしまい本気で火の玉を打ったらこの星が確実に壊れる。
そうなると俺はまたこの星を作る必要があるわけだが、それは難しい。
なぜならこの星のことを全く知らないため、「イメージ」のしようがないからだ。
そうなると大変だ。俺は俺の想像の範囲を超えない世界を無限に生きることになる。これはどんな死よりも恐ろしいだろう。
魔力をコントロールすることを、次の目標にした。