2.私、長生きしたいです
なにを隠そうこの作品、ばんばん人が死ぬのである。
もちろんヒロインや攻略対象のヒーローたちも例外ではない。
転んだら死ぬとかそういうレベルですぐに死んでしまうゲームなのだ。
この作品を作った会社のゲームはファンタジー系乙女ゲームの皮をかぶったサバイバルゲームだ。
いや、サバイバルゲームは言い過ぎかもしれないが、とにかくBADENDだらけなのだ。
正確にはBADENDではなく、NORMALENDなのだが。
キャラが病んでるとかそういうわけでなく、すぐに事件事故に巻き込まれて登場人物たちが死んでしまうこの会社のゲームは、一部のファンからは熱狂的に支持されているが、一方であまりにもの報われなさに批判も生まれる、まさに賛否両論な作品。
その声を受け、HAPPYENDはきちんと作られるようになり、誰も死なないTRUEENDができたらしい。
らしい、というのも私自身はプレイしたことがなかった。
ネット上で激しく議論されているのを見て、私もプレイしたくなり誕生日前日にその最新作を買ってプレイしていたのだった。
とりあえずNORMALENDから回収しようと思い、徹夜で攻略対象4人のNORMALENDを終えたところで私の記憶は終わっている。
結果から言えばどのルートでも私は死んでいた。
力を悪用しようする組織に攫われて逆らったために殺されたり、見てはいけない取引を見てしまったことにより口封じで殺されたりなどなど…。
前世で殺されてしまったのに、ここでも殺されて若いうちに死ぬのなんていやだ…!
私は今度こそ長生きがしたい。
多くの幸せは望まない、普通に老後を迎えたい、ただそれだけだ。
私は決心をした。
絶対にTRUEENDを目指す!
TRUEENDは誰も死ぬことがないENDであるというのは他の作品の情報だ。
方針が変わっていなければ、この作品も同じであろう。
最後までプレイできていないため、正確な情報がないのが悔しいところだ。
自分が生き残るだけならHAPPYENDの方が楽かもしれない。
しかし、HAPPYENDでも攻略対象のキャラがだれか死んでしまうというシビアさ。
日本でのほほんと平和に生きてきた私には知り合いが死んでしまうという現実はつらすぎる。
ましてや死ぬことが分かっていて、回避できるかもしないというのならなおさら。
こうして私はみんなを救う方針で生きていくことにした。
幸いにもヒロインにはこの国最強と言われる治癒の能力がある。
私がそばにいれさえすれば助けられる可能性は高い。
そんなに力が強い治癒能力を持っているのになぜヒロインは死ぬんだって?
それはこの能力の欠点が、自分に効かないという点だから。
他人を助けることができても、自分は救えないのだ。
どうしてそんな設定にした。
自分を治療できれば私はほぼほぼ無敵だし、こんなにあっさり死んでしまうこともないのに…。
まぁ、ぶちぶち文句を言っても仕方がない。
「私は頑張ってここで長生きしてやるぞー」
高熱に魘されながらも決意を固めた私は、誰もいない部屋のベッドの上でその小さな手で拳を作り、天井に向かって押し上げた。
えいえいおー。