桃色の髪のクニャラ
「ケンタぁぁぁぁぁ!」
地上に降りたサラにクニャラとレオナ、それと二人の少女が合流する。
「サラ、大丈夫?」
「サラお姉様!」
太陽の華のメンバーがサラに駆け寄り体の状態を確認する。
サラはシーファとシャーロンの魔法の協力で上空の伊400型まで打ち上げられたのだ。
当然、かなり無茶をしたので身体に負担がかかり実力を発揮しきれなかったのだ。
もちろん死ぬ気だったと言うこと前提だが。
「ケンタが、ケンタが」
「ケンタがどうしたです?」
「ゴメス、ケンタさんになにしたの?」
合流したクニャラとレオナがケンタに何かをしたと思ってサラを問い詰める。
「違うんだ、ケンタが、ケンタがサラって、私の頭を昔のように撫でてくれて、サラって呼んでくれて。ケンタぁぁぁぁ!」
サラは今まで押さえていた気持ちが溢れるようにケンタの名前を呼ぶ。
サラは二人よりも年上だったと言うこともあり感情を押さえていたのだ。
「だからケンロウはケンタだと言ったです」
「気づくの遅いのよ、ゴメスは」
感情を露にして泣くゴメスにヤレヤレと自分達のことを棚にあげて呆れる。
「ケンロウはやっぱりケンタさんと言うことでいいの?」
シーファが地面に突っ伏して泣いているサラ尻を叩いてしっかりしろと激を飛ばす。
「ごめん、もう大丈夫だ。そうだケンロウはケンタだ私はゴメスだと言ったのにサラと言って頭を撫でてくれた」
「「頭を撫でた!?」」
サラのその発言にふたりは頬を膨らませるが、今はそれどころではないと思い直した。
「なら、やることは一つなのです」
「そうだね、さっさと行きましょう」
クニャラとレオナの二人は黒い飛行体を追うために数歩歩き出すと後ろを振り返り手を差し出す。
「早く立つのです、バカ巨人族」
「行きましょうゴメスさん」
サラは二人の手を取るとクニャラを肩に乗せレオナを小脇に抱えると全力ダッシュでケンタの後を追いかけた。
「ちょ! ゴメス! 私たちそんなに早く走れないわよ!」
「おねぇさま~ぁ!」
◆◇◆◇◆
サラが地上に降りたのを確認して俺はほっと胸を撫で下ろす。
青髪の少女、赤髪の少女、サラを含めた、あの三人が俺が守りたい人たちだったのか。
サラの名前を思い出せたのは名前が強烈だったからだろうか。
まあいい、今、俺がやることはひとつだ。
「犬さぁ、さすがに突き落とすのはないだろ」
「シンミアが常識を俺に問うとか成長したな」
俺がそう言うとシンミアはヘルムをゴツンと叩く。
『ケンロウ様、王城衝突まで30秒前です。衝撃に備えて手すりにお捕まりください』
俺は伊400型のデッキに付いている手すりを強く握り込む。
『20』
『10』
『9.8.7.』
『ケンタ様エネルギー波が来ます!』
突如スヴィニヤーから警告が来る。その警告の意味を考える暇もなく王城から光の玉が飛び出し俺たちを穿つ。
「シンミア頭を引っ込めろ!」
魔法なら俺の鎧は無効化できる。俺が盾になればシンミアは傷つかない。
「犬、これ神の光だ! 魔法じゃないぞ!」
光が当たりバキバキと潜水艦が破損していく。
落とされると思った瞬間、スヴィニヤーの風が巻き上がり水蒸気を集め光を拡散させる。
だが最初の衝撃のせいで衝突地点が大幅に変わり、伊400型は城壁に突き刺さった。
突き刺さると同時に城から魔法や剣技が大量に降り注ぎ飛んで来る。
「温いな」
「ヒュ~犬カッコいい!」
魔法や剣技が効かないのをいいことに、ちょっと格好つけてみた。
当然それを知っているシンミアは俺を茶化す。
いや、もっと俺を誉めてもいいんだぞ? と言おうとしたらスヴィニヤーが不穏なことを言い出す。
『ケンタ様、先程の光は神属性の光です』
神属性の光? スヴィニヤーの風みたいなものか。つまり王国側には光の神がいる?
『どう言うことだ?』
『あちらは光の神リュミエール様が協力しているのかもしれません』
俺の女神様である光の神リュミュールなぜ俺と敵対する。
なにか事情があるのか、それともいやいや力を貸してるとか?
女神様には世話になっている、敵対するのは正直嫌なんだが。だが、やると決めた以上女神様が敵対者だとしてもやるしかない。
「いくぞシンミア、俺から手を離すなよ」
「おうよ、ぶちのめしてやろうぜ」
「いや、スルーだぞ」
「おう、分かってる。分かってる」
シンミアは上機嫌で鼻歌交じりの俺の背中にへばりつく。こんなに機嫌がいいのは久しぶりだな。
シンミアの機嫌が良いからか俺の動きも良くなり、魔法や斬撃を楽々躱し、俺は城の中へと入った。
フルメイルの騎士団員が俺に向かって攻撃を仕掛けてくる。その勢いはまるでダムが決壊した河川のようだ。
幾人かの持つ武具はエルダートレインの天叢雲剣や神杖ケーリュケイオン等だが、弱すぎる。
モンスターテイマーには効かないとは言えこんなに弱くもない。
偽物か?
だが偽物とはいえ、一応特殊な力はあるようだ。その武器たちに興味を持った俺は偽物の天叢雲剣とティルフィング、偽物の神杖ケーリュケイオンを次々と奪い取りアイテムボックスにしまった。
攻撃を避けつつ素材確認すると、とんでもない情報が出てきた。
◎偽天叢雲剣
・罪人の脳神経
・罪人を打ち付けた鉄釘
・罪人を焼いた灰
・鉄9kg
・緑魔石300g
うあ、なんだこれ。
罪人とはいえ人間を材料に使うとかドン引きれじゃないか。
人を材料に剣を打つと強い剣ができるって漫画で見たことがある。これもその類か?
こんなものが有用だとなれば、力ない人間は材料にされ武器を作るようになるだろう。そんなことはさせられない。
すべての武器を破壊する。
俺は攻撃を高速移動で避けつつすべての騎士団の武器を奪い取り破壊してた。武器を奪われた壊された騎士達は、なにもできずにオロオロしだす。
武器に頼った戦いしか知らないやつらの反応だな。
すべての騎士団を潜り抜け王宮の間の扉をこじ開ける。扉を開けると玉座にはバカ王が余裕の表情で俺を笑う。
その前にはブーケを被った少女が頭を下げ膝を着き腕を胸の前で合わせて座っている。
「ふん、ここまで来るとはなあ~なんと言ったかな?」
「ケンロウでございます陛下」
「ふん、下賎な輩の名前など呼ぶ必要はないな。おい貴様さっさと降伏すれば許してやるぞ。ただしお前は我が配下になるがな」
そう言うとガハハと馬鹿笑いをした。
俺が前に出ると玉座に座る王の前にいる、小さな桃色髪の少女が顔を上げ目を見開く。
顔を上げた少女の顔を見て俺は動きは止まる。
その顔は、俺の魂の残響に出てくる、いや青髪の少女クニャラと同じ顔だったからだ。
そして目を見開いた少女からは俺たちに向け神光の玉が放たれた。




